閑話 しいとメール
お久しぶりです。この何ヶ月もの間、しいちゃん頑張ってました。今日はぜうす先生にメール書きます。
とある夏の日のお昼。しいは4月から長期出張(?)中のぜうす先生にメールを打っていた。というのも、4月から全く連絡を取っていなかったしいは「連絡したいけど電話するのは気がひけるし、手紙を送るにも住所を知らない」という状況だったのでどうにか知らないフリをしていたのだが、つい先日天音に「メール、書けば?」と言われ、その存在を失念していた事実に発狂し、決死の覚悟で画面と向き合っているのだ。ちなみに電話番号とメールアドレスが変わってないか青島に調べてもらったのは雛子ちゃんには内緒である。今日はそんなしいのメールをちょっとだけ覗き見てみよう。
『ぜうす先生へ。
最近雨も減ってきて、関東甲信じゃ梅雨明けなんて言ってるし、いよいよ夏って感じだね。でもまだちょっとジメジメするし、ぜうす先生もいないし、私はちょっと寂しい毎日を過ごしてます。
それでなんでメールしたかって、ただ単に今どうしてるのかなって思ったからだけど、たまには私のこと思い出してもらえるように連絡しないとなっていうのもあって。という訳で、私のこと想像できるように、この半年間でやったことを洗いざらい話します!
もう、すごい頑張ったよ。去年は学校に行くのさえできなかったのに、リーダーシップありそーうな人に声をかけまくって、使えそーうな先生に必死にアプローチして、大元の大学に掛け合って(いや、大学にはうちの会社が投資と寄付と合同研究チームの設立とで押しまくって言うこと聞かせただけだけど)、学校のことを色々と変えていったの。
いつまでも去年みたいな日常が続けば良いのになと思ってたのに、感染症流行のせいで安易に人に会うのもできなくなるし、ぜうす先生は知らないうちに居なくなってるし。そんなんなら私の好きにさせてもらおうと思ってさ。
民衆の心を掴んだり、たまに裏から手を回したりして、学校を我がものに……と画策したのだ!なんてね。
まだ開校して一年ちょっとしか経ってないから色々足りていないのかもしれないけど、今のままじゃ人生一回しかないのに子どもたちがあまりにも可愛そうじゃんって思って。まず思いついたのは学校祭の設立。準備頑張ってるから、もし暇があったら見に来て欲しいな。
4日間の学校祭で、その内2日間は文化祭!演劇と個人発表の演目が開会式の後にあって、その後はクラスで色々。出来るだけ生徒がやりたいことはやれるようにしようと思って、暇してる今年のイズモの新入社員を総動員する予定なんだけど、ちょっと聞いたところによると、「カップルにVRで仮想空間デートに行ってもらう」とか「ニャインボットで新しい競技を作る」とか、色々面白そうな企画あったよ。あとは、文化部には部活動の発表&プレゼンテーションの機会も作ったし、今まで禁止だった部外者の立ち入りは緩和してどんどん人に来てもらうことにしたりして。この狭い町の中で閉鎖して学校作りに勤しむ意味とか全然わからないじゃん。せっかく色々なところから生徒が通ってるんだから、町全体で盛り上げなくてどうするんだーって思って。ていうか、なんで町外の人はこの学校に子ども通わせようと思ったの?勉強だけしててほしかったの?それとも良い人材育てますみたいな文句に乗せられたのか……とにかく、沢山の大人を取り込んで生徒に実践の場を作って、使える大人にしようと思った。主に私の会社で有能と言われる大人に(笑)
それから、3日目は体育祭。もうこれは運動大好きな人に頑張ってもらえればいいやと思って、やる気がある人に任せた。(ごめんね説明適当で)
あとは、3日目の夜から4日目にかけてはパワーアップキャンプ!私の学年は臨海学校!今年は生徒主催で各班に分かれて花火大会にBBQ、それから肝試しに海水浴の予定。他の学年は、新しくできた学校専用の研修用宿泊施設を使って山に行ったり沢に行ったりするらしいよ。ただ、遊んだ分はしっかり勉強してもらうつもりで、数学なり理科なり、授業の一単元分を今までお遊びに使っていた冬季合宿で詰め込んで習得、6時間分の授業のコマを確保してこの1日に当ててもらった。もちろんこの学校祭最終日も遊ぶだけじゃなくて、それぞれ事前に研究目標を立てて、課題の解決に取り組んでもらうみたいな感じで。まあ、それなりの理由を付けないと学校行事の大幅変更なんて出来ないから仕方がないよね。
そういえば、学校祭設立を発表したときに成ちゃん達や天音ちゃんがすっごい喜んでくれたから、アイスを奢ってあげたんだ。可愛かったなー。取り戻したい、あの笑顔。
それから、次にやったのはもちろん授業改革……って言いたかったけど、残念ながら今すぐそれをやるのは無理だった。授業をするのは先生だし。「学習指導要領がずんとかどんとか」って言って逃げる人はどうしようもないし、私がやりたいことを実行してくれる人を雇い入れてすぐ始めるのは簡単だけど、出来ないからって理由でやる気も興味もある人までクビにして人の食い扶持を潰すなんてことはしたくなかったから。私が学校卒業するまでにどうにかなるかな?
この間「解き方を教わって、問題を解いて、雑談に耳を貸すだけの無駄な時間など私には無ーい!」って新しい担任の先生に言ったら、苦笑されたんだよ。
「それだけ授業改革に積極的なら文句無い」だって。何それ。
新しい担任の先生、康本先生って言うんだけど、最初「こうもと」だと思ってて、思いっきり先生の前で名前呼び間違えたんだよ。すっごい恥ずかしかった。私もたまに宅配の人に下の名前読み間違えられたりするからちょっと申し訳なかったな。
ところでさ、ぜうす先生って今何してるの?私の前からいなくなったりしないよね?
本当は今まで通りがいい。いつも通りがいい。でもそれが出来なくって、すごい今苦しい。なんだかんだ言って、仕事して、学校行ったり行かなかったり、たまにぜうす先生とお話したりして、それがすごく楽しかった。なのに、今どれも中途半端で、元に戻れない。だから、ちょっとでもぜうす先生に近いところに私の生きやすい居場所を作ろうと思ったの。私、ぜうす先生の帰りを待ってるからね。私のこと、忘れないでね。 高梨依鶴より』




