第十五話:スガーモ市
スガーモ市に到着。
とりあえず、ケンたちは市の衛士隊支部にゴーレム関係の事件の報告書を届けるとともに、タナカの件を報告しておいた。
「すぐにメスト市本部へ連絡します。ご協力ありがとうございました」と衛士に礼を言われた。
そのあと、近くの衣料品屋でナオミがハナにパジャマを買ってやった。
デザインは鳥のイラストが付いているのにした。
「ライチョウじゃないけど、これでいい?」
ハナはうなずいた後、
「自分で、お金出す」と言う。
それに対して、
「いいのよ、遠慮しないで」とナオミが代金を払うと、
「アリガト」とハナは丁寧に頭を下げた。
「やだ、ハナちゃん、他人行儀みたいなことしないでよ」とナオミが笑うと、
そう言われたハナは黙って、うなずいた。
今日は凄い雨だ。
ますます、ひどくなっている。
「今日は宿屋に泊って、休息!」と言うケンの意見をナオミも反対しなかった。
宿屋を探すが、なかなか空いてない。
結局、少し高めの宿屋の一人部屋と二人部屋を借りた。
「高級な宿屋ねえ」とナオミがちょっとはしゃいでいる。
「おい、遊びにきたんじゃないぞ」
「いいじゃない」
まあ、ナオミも明るくなったからいいかとケンは思った。
宿屋の案内図に大浴場と書いてある。
「ハナちゃん、お風呂に行こう」とナオミが誘うと、
「うん」とハナも行きたそうな顔をした。
広々とした大浴場。
二人は大雨で冷えた体を温める。
「疲れが取れるわねえ、そう思わない、ハナちゃん」
「うん」とハナも気持ちよさそうだ。
ナオミは、気持ちよさげに目をつぶる
ナオミは、さきほどの盗賊たちとの件を思い出す。
ハナちゃんのおかげで助かったけど、危ないところだった。
ハナちゃんがいなかったら、私もケンも殺されていたかも。
単なる幼馴染のままで死ぬなんて嫌だ。
ええい、こうなったら告白だ。
けど、振られたらどうしよう。
ケンは私のことをどう思っているのだろうか。
ギャーギャーうるさい女としか見てないかもしれない。
けど、告白がうまくいったら。
また妄想する、ナオミ。
そのまま付き合って、そして、いずれは結婚。
自分は真っ白なウェディングドレス姿。
目の前には、ケン。
周りには祝福してくれる人たち。
私とケンは、皆の前で……。
はっと気がつくと、ハナがナオミの顔をじっと見ている。
何となく自分の妄想を見透かされた気分になって、
「な、なに、ハナちゃん」とドキドキするナオミ。
「ナオミ、嬉しそう」
「あ、そうね、このお風呂気持ちいいもんね、ハナちゃんも気持ちいいでしょ」
「……うん」とハナは目をつぶった。
風呂からあがり、ナオミたちは部屋に戻った。
衝立に雨で濡れた服を掛けて乾かす。
部屋のベッドは分厚いマットで中にバネがついている。
「わ~い、この宿屋のベッド、フカフカ」とナオミがベッドの上で跳ねて喜んでいる。
パジャマ姿で、雨で濡れた斧を布で拭いているハナに向かって、
「ねえ、ハナちゃんも飛んでみなよ」と呼びかける。
斧の手入れをしたいんだけどなあといった表情のハナ。
「ハナちゃん、面白いよ」とナオミがベッドの上で跳ねている。
ハナはナオミがしつこくさそうのでベッドで飛び跳ねて見せた。
ピョンと天井近くまで飛んだり、空中で一回転して見せる。
「ハナちゃん、凄い! もっと見せて」と拍手して、ナオミが喜んでいる。
ナオミが喜んでいるせいか、ハナは何度も回転して見せる。
あんまりベッドで何回も跳ねていたら、服を乾かしていた衝立が倒れてしまった。
すると、乾かしていたハナのエプロンのポケットからチョコが飛び出す。
ベッドに着地して、
「あ、忘れてた」とハナが言った。
ケンは部屋で脚に湿布薬を塗った後、ベッドで横になる。
ふう、疲れた。
甘い物が食べたいなあ。
さっきの盗賊たちと遭遇したときの事を思い出す。
ハナのおかげで助かったけど、もしかしたら死んでいたかもしれない。
いや、あの人数だと確実に殺されていた。
ナオミともお別れだった。
そんなの嫌だ。
自分のナオミへの気持ちを知られないまま、死ぬなんて。
うーん、いっそ告白しようか。
ナオミは俺のことをどう思っているんだろう。
単なる頭の悪い男と思っているかもしれない。
昨日、ナオミがふらついた時に抱きしめたことを思い出す。
女の子ってやわらかいなあ。
本当はもっと強く抱きしめたかった。
ケンは目をつぶったまま、
「ナオミ……」とつぶやく。
「ナオミ? どうした?」と声が聞こえた。
「うわっ!」とベッドから起き上がる。
パジャマ姿のハナがいた。
「ナオミ?」
「あ、いや、『悩み』って言ったんだ」とケンは無理矢理ごまかした。
ハナは少し黙った後、
「チョコ、あげる」とケンに手渡した。
「おお、ちょうど食べたいなあと思っていたとこなんだ。ありがとう」
「ドウイタシマシテ」とハナは答えた。




