20
季節は過ぎ肌寒くなり始めた頃……。
「父さん」
「俺たち」
「「学園島に行く」」
我が家ではただいま家族会議中です。
お父さんがお兄ちゃん達の部屋から学校案内の書類を見つけたのが事の始まり。
学園島、正式名王立ネドルネスト学園。王都ルーンファクトリスにある大きな学園で湖の中の島にある学園なため見た目から“学園島”と言われているらしい。
「お前ら……」
「俺達、決めたんだ」
「行くなら絶対にここだって」
「行くのはいいが高等部からからでいいだろ?」
「いや」
「それだと遅いんだ」
「何故だ?」
「行きたい学科がそっちの方が入りやすから」
「……まさか」
何かに気づいたお父さんにお兄ちゃん達がニヤリと笑い、案内書類のあるページを開いてお父さんの前へ。
「「総合科に入りたいから」」
と、答えた。
あのあと私が大きなアクビをしたことによって家族会議は終わり数日たった。お父さん達は話がまとまらないのかちょっと空気が重いです。そのせいかお店はどんよりしています。
「フミナちゃんフミナちゃん」
「はーい」
「どうしたの、あれ?」
「……色々とありまして」
「色々かぁ」
お客さんから聞かれてそう答えることが多くなりました。
「ガッハッハ。ここも空気が悪いな」
「ガーゼントさん!」
わーい!! ガーゼントさんだぁ。ってあれ?
「ここも?」
「あぁ、実はな……」
ガーゼントさんが話をしおうとしたら扉が力任せに開けられ壁に激突。そこから言い争いながら誰かが入ってきた。
「良いじゃない!! そんなこと!!」
「そんなこと!? そんなことあるか!!」
最初に来店したのはハガリちゃん。後から来店したのはスキンヘッドで紫色の瞳、鼻の下に髭を生やしVネックの白い服に黒の服を羽織り、すらりとした黒のズボンをはいたゴリマッチョな男の人。ゴリマッチョ男性、この人がハガリちゃんのお父さんのガスおじさんである。
わぁわぁ言い争いをやって来た二人はカウンター席へ。ハガリちゃん、今日は黒髪だ。ハガリちゃんの髪色は気分によって変わる。本来の色が嫌いらしく魔法によって変えているらしい。
「あーあ、やってるやってる」
「いつもあんなの?」
「あぁ、ここ最近やってるよ。お嬢が学園島に行くってことになってな。行くのは良いがどうやら姿が気に入らんみたいでな」
姿? そんなに変かな。マスターさんザ、漢!! という考えなのかな?
ハガリちゃんは髪を伸ばし、女性物を好んで着ている。それがハガリちゃんの普通なので思ったことは無かったなぁ。……あっ、このまま喧嘩してると不味いのでは。そう思っていたら、ドンッ!! と力強くコップが置かれ、「……悪いが」とお父さんが話しかける。
「喧嘩するなら出ていってくれないか?」
「「すみませんでした」」
……笑顔が怖い。お父さんの一言で周りが一瞬静かになったがいつもの風景に戻った。ハガリちゃんとマスターさんは大人しくなったけどまだいがみ合っている感じがする。
「おーおー、ブラド機嫌悪いなぁ」
「……うん。兄さんとのお話が中々進まないです」
「あー、もしかして学校についてか?」
「えっ!! な、なんで?」
「実はその話を持ってきたのがお嬢なんだよ」
「そうなの!?」
「うむ。あの双子に一緒に行かないかと誘ったらしくてな。まぁ、外に出て学ぶのは良いことなんだがなぁ……」
「ふむ」
「あんな感じで許可が降りなくてな。まぁあんな風に理由を付けているが、本音はまだガキだから外に出したくないっていう親心じゃろうな」
「へぇー」
ふむふむ、ハガリちゃんの方もいろいろありますなぁ。……ん? ちょっと待て、これイケるのでは
マスターさんの方へ近付き「こんにちは!!」と声を掛けるとこっちに顔を向けた。うわ、すごいデレ顔。
「こんにちはー」
「……キモッ」
「アァン!?」
ハガリちゃんの一言に反応した時の顔、コワッ。……でも鼻の下が伸びたおじさんの顔は、まぁうん。
「ねぇねぇ、どうしてマスターさんはハガリちゃんに怒っているの?」
「んー、それはな、こいつにはこんなんじゃなくてもっとちゃんとした姿でいてほしいだよ」
「ふんっ。これぐらいでガミガミ言うなんて小さい男」
「アァン!? ちぃさいだど!?」
「あー、小さい小さい」
「このっ!」
「じゃあじゃあ! 私もマスターさんに怒られちゃうね!!」
「「えっ」」
「ほら!」
その場でクルリと一週する私。ふっふっふっ、どーよ。今の格好は兄さんが着てた服だから男物、つまり怒られる対象。そして、マスターさんみたいなタイプは自分の子供は怒れるが他所の子供は怒れないとみた! さぁ、どうだ!! するとマスターさんが渋い顔をした。
「うぐっ」
「私はこの服好きだよ。お兄ちゃんの服だったけどこれ動きやすいしカッコいいから!」
「ぐっ」
「好きで着ているのにダメなことなの?」
「そ、それは……。むむむっ」
渋い顔をして腕を組んで考えだした。さぁどう答える? 答えによっては我泣くぞ。泣いちゃうぞ。
少しの間考えた後、ハァとため息をはいてハガリちゃんを見た。その表情は真剣。
「オメェにとって大事なことか?」
そう聞いたマスターにハガリちゃんは「……えぇ」と返してカダっと音を上げて立ち上がり腰に手を当て胸を張る。
「とーっても大事な事よ! 学園に行けば専門的な事が学べるし技術も学べる!! そしてこの街を良くすることが出来る!! その為に行くの!!」
そう言ったハガリちゃんは自信に満ちていた。おぉ、ハガリちゃんがキラキラしていらっしゃる。そんなハガリちゃんの言葉を聞いたマスターさんは「……なるほど」と返した。
「卒業したらここに帰ってくる気か?」
「あら、当たり前じゃない。ここがワタシの居場所なんだから。そ・れ・に、アンタの子供よ!! ココを良くしたいと思うじゃない!!」
ふん!!、と胸を張って言うハガリちゃん。おぉ、ハガリちゃんがイケメンに見える……いやイケオネェだ。マスターさんも「お、おぅ」と押されぎみだが、その後ため息をはいた。
「……受験、ちゃんとできるんだな?」
「!! えぇもちろん!!」
「長期休暇には帰ってくんだろうな?」
「えぇ! なんなら短期の休みでも帰ってくるわ!!」
その言葉を聞いたマスターさんは大きなため息を吐き、「……わかった」と一言。ハガリちゃんの顔がパアッと輝いた。
「じゃあ!?」
「ただぁし!!」
マスターさんはハガリちゃんにビシッと指を指す。
「やるからにはちゃんとやれ!! 舐められるようなことはするな!! 弱いもん虐めみたいなカッコ悪いことすんな!! 泣きべそかいて帰ってくんな!! ……他にも言いたいことはあるがまぁいい! ちゃんと守れるんだろうな!?」
「……ふん!! 誰に言ってるの? 当たり前じゃない!! チャーンとやってあげじょうじゃない!」
「ヨシ!!」
マスターさんは立ち上がりハガリちゃんの背中を思いっきり叩いて「行ってこい!!」と言った。その瞬間至る所から歓声が上がる上がる、店内はドンチャン騒ぎ。……うん、うるさい。でも嬉しい!! 許可が降りた!! そしてこれなら……。
お父さんを見ると呆れ顔になってため息を吐いていた。そして何かスッキリしたのかいつもの感じに戻っていた。
「お前達もマスターの言ったこと守れるか?」
そうお兄ちゃん達に聞いていた。お兄ちゃん達はバッとお父さんの方を見て「「出来る!!」」と答えた。
「俺達も向こうにずっと居るつもりない!!」
「そうそう!! 家はここだしね!!」
笑顔で言ったお兄ちゃん達の表情もいつもの感じで返した。
「……そうか。頑張ってこい」
「「うん!!」
こっちも話が着き、お兄ちゃん達がハガリちゃんの所に混ざりに行った。ハガリちゃんと一緒に喜んでいる。良かった。私にも何か出来ることがないかなぁ。




