19
栞とハンカチ。贈り物には良いかなと思って作ったけど、あっちも同じ物だったので考えることは一緒なんだと感じています。はい。
栞は妖精さんから貰った四つ葉のクローバーとお花、ハンカチはチューリップの刺繍。チューリップは自分で刺繍しました。……初めての刺繍だったけどまぁ出来たからヨシ。
「――て」
「ん?」
「どうして、チューリップですの?」
「え、えーと本当はカーネーションにしようと思ったけどチューリップの方が良いなって思いまして」
「……薔薇ではないのですね」
「え、う、うん。薔薇はいっぱい貰ってる感じがしたから違う物がいいなって思って赤いチューリップに……」
「……」
え、そこで黙る。も、もしや花のチョイス間違えた!? どうしようやってしまった!! 私がアワアワしているとハンカチを顔の前でバッと開き刺繍を見て、
「下手ですわ」
「うぐっ!!」
「よくこの出来上がりでわたくしに渡せましたね」
し、しょうがないじゃん!! 初めてなんだぞこっちは!!
後ろでダンデルトさんが呆れた声であの子の名前を呼んだ。あの子は「……ですが」と言葉を続けた。
「誠意は伝わりました。だから特別に使ってあげますわ」
「……えっ?」
「な、何よ!?」
「い、いや。使ってくれるの?」
「や、屋敷の中でですわ!! 有り難く思いなさい!!」
や、屋敷の中ですか。でも使ってくれる、そう言った。……何か嬉しい。顔がニヤける。
「ありがと!! ルジーナ様!!」
そう呼ぶと驚いた顔をした。いや、流石に名前呼びはなぁ。下を向いたあの子がゴニョゴニョなんか言ってる。
「――よ」
「えっ?」
聞こえなかったから聞き返したら、バッと顔を上げビシッと指を指した。
「マリアよ!! 貴方には特別に、ト!・ク!・ベ!・ツ! に呼ぶことを許可しますわ! 有難く思いなさい!!」
頬を赤らめながら言うあの子。――マリアは叫んだ。……え、いいの? マジで? やったぁ!! 嬉っしい!! 超嬉しいですけど!? 顔笑う!!
「ありがと! マリア!!」
ニッコニッコしながら答えたら顔を真っ赤にさせて、「よ、用は済みましたので失礼しますわ!!」と叫んで店から出ていった。
バタンッ!! と音を立てて閉まった扉を眺めながら思った。あ、あれはもしかして「あ、あんたなんか好きじゃなあんだからね!!」でお馴染みのツ、ツンデレでは!? え、ウッソマジで!? 初めてだ。あれはまさしく、
「……尊い」
目元を手で覆ってボソッと小声で呟く。
「全く、あの子は……」
ハァ、と呆れな言うダンデルトさん。でも何か嬉しそうですね? 「……さて」と一言言うと私の前に来て目線を合わせてかかんだ。
「フミナちゃん」
「……は、はい!!」
ハッ!! いかん尊さに当てられてしまっていた。目の前のことに集中!!
「君をぶったことを謝りたい。申し訳なかった。これはお詫びの品、どうか受け取って貰いたい」
頭を深い下げ謝り、お詫び品を渡そうとするダンデルトさん。……それは今貰えない、そう思い一歩後ろに下がった。私には確認することがある。
「あの子に……、マリアにちゃんと謝りましたか?」
そう聞くとダンデルトさんはハッ、とした顔をしたがすぐに優しい顔になり「あぁ」と返した。
「娘にはちゃんと謝ったよ。……有難う。あの時君が居てくれて、あのまま打っていたらきっと娘とは二度と話が出来なくなっていた。だから君が居てくれて良かった、……本当によかったよ。有難う」
「……そっか。仲直りできて良かった」
よし、それが聞きたかったんだ。良かった良かった。
ダンデルトさんに話を聞いた私は一歩前に行き、お詫び品を受け取った。「開けてごらん」と言うので開けさせてもらう。そこには……、
「お菓子!!」
袋の中身は様々なお菓子の詰め合わせ。ちょっとお高めなクッキーやらチョコレートやら種類豊富。後で家族皆でたーべよ。
「後、これも」
もう一つ袋を出し、中身を取り出した。中身は、
「……エプロン?」
黒色の右端に猫が刺繍されたエプロン、……なのだが。子供用にしては少々大きくないかい? ダンデルトさんを見ると微笑んでいらっしゃる。……なぜ?
「えーと?」
「あぁ、これはフミナちゃんが大きくなってから使って欲しくてね。汚れにくく破れにくい素材で作ったからきっと役に立つよ」
……わーい!! 嬉しい!! 大きくなったらこれ使お。「あれは……。お前まさか!?」「ん? 何のこと?」なんて話が横からするがスルー。
「有難うございます!! ダンデルトさん!!」
ペコリと頭を下げお礼を言うと「喜んでくれて嬉しいよ」と微笑んで言うダンデルトさん。「後、ね」とダンデルトさんがちょっと照れながらお願いされた。
「良かったら、ダンおじさんって呼んで欲しいなぁ」
……おぉ、良いのか? 相手貴族やで? まぁ、本人がオッケーを出してるから呼んでみよう。……何か照れる。
顔をうつむき小声で「ダ、ダンおじさん」と呼んでみた。うん、友達のお父さんだし行ける! なんて思っていたら名前を呼ばれ両肩に手をおかれたので顔をあげると、真剣な顔したダンおじさんがいた。
「もしお父さんと喧嘩したり家出したいと思ったら、おじさんに連絡して。フミナちゃんに部屋を用意してあげるし、親戚に養子に「待て待て待て!!」
お父さんが私からダンおじさんを引き離した。……何か養子って聞こえたような。
「お前なに言ってる!? 娘はどこにもやらんが!?」
「アハハ!! ごめんごめん、こんないい子におじさんって呼ばれらつい」
「つい、じゃねぇわ!! バカ野郎!!」
……冗談だよね? 冗談だよね!? 目が本気だったんだが!? 大丈夫だよね!?
「さて、そろそろ行かないと」と言うダンおじさんに「とっとと帰れ!!」と言うお父さん。うわ、温度さ。またねと手を振るダンおじさんに手を振って「バイバイ!!」と返しお見送りをした。
慌ただしい一日だったが私にとって嬉しい一日になり、初めて“人間”の友達ができました。
誤字脱字報告有難うございます。本当に助かります。