私の話を聞いてよ
ぶわっと舞っていた花を全て外に出し終わった頃、ふらりとフィルが顔を覗かせた。
「なんか花が降ってきたかと思ったら、ルギィ、あんたの仕業だったのか」
「いえいえ、これはニカに頼まれたからですよフィルレイン。それよりもう動いても平気なんですか? 私の代わりに魔力をあれに注いだのに」
「まだ怠いけど、動けないほどじゃないからな。それよりもこっちの状況が気になってさー」
「物好きですね。それならついでに畑に行ってキャベツでも採ってきてください。昼の仕込みをしますよ」
「え、俺?」
「当たり前です。可愛いニカに畑仕事なんかさせれますか」
ぎゅむぅっとルギィに抱きすくめられるけど、え、なに、ちょっと待って。何か聞き逃しちゃいけないことがあった気がしたんだけど。
ルギィの代わりがなんだって?
「ルギィ、どういうこと?」
「はい? ですから私の気に入ってるニカに畑仕事なんか似合わないと」
「違う、そっちじゃなくて」
嬉しいこといってくれてるけど、気になってるのはそっちじゃないから。
「魔力を注いだって、何に?」
あ、二人ともぴたりと動きが止まった。これは私に内緒でことを済まそうとした感じですね? そうは問屋が卸しませんよ。
「ルギィ、あなたは一体何をしていたの」
「……ふふ、ニカ、下に行って昼食の準備をしましょう。たまには私のお手伝いで」
「フィル」
「さーて、俺も畑に行こっかなー!」
二人とも、あからさまに私に話したがらない。どうして? 私じゃ足手まといだからなの?
せっかく心配してあげたっていうのに、この仕打ちはひどいんじゃない?
私がジト目で二人を見ていると、二人ともさらに誤魔化そうとあれこれ言ってくる。
「今日はニカの好きなものを作りましょうか」
「ちょっと」
「おー、必要な野菜は俺が採ってくるよ」
「ねぇ」
「では、先程言った通りキャベツをお願いします。まぁ、あの畑で収穫できそうなのはキャベツくらいでしょうが」
「まって」
「いや、そろそろじゃがいもがいけるんじゃねーか?」
「……」
「ああ、ならじゃがいもを使ってシチューにしましょうか。ニカの好物ですよ。キャベツはサラダで」
「そりゃいいな」
「……人の話聞けって言ってるでしょばかフィルー!」
ドーンッ! とフィルの背中に飛び蹴りをかます。
ふんだっ! フィルのばかばかばかばか! せっかく私が心配してあげてるのに無視するからっ!
「なんで俺だけ……」
私に押し潰されてぼやいてる。だってルギィを蹴っ飛ばすのはちょっと気が引けるけれど、フィルはもう既に何度か私のおてんばに付き合ってくれてたから。
「これは強烈ですねぇ」
「見てないで助けろよ。まじで死ぬ……ぐぇ」
フィルの蹴ってよろめいた隙を見逃さず、私が全体重をフィルにかけた結果、フィルはぺしゃっと潰れて私の下敷きになったことをよいことに、そのまま全体重をもってフィルを押し潰す。ふふん、当然の報いよ。
「さぁ、フィル。ルギィに何があったのか教えなさい」
「なんで俺が……」
「口答えすると庭のハーブで一番匂いのきついやつでポプリを作ってあなたの枕に匂いを残すわよ」
「なんだその地味に嫌な嫌がらせ!?」
「私に逆らうのがいけないのよ」
ふんっと鼻をならすと、傍観していたルギィがくすくすと笑いだした。何やら面白いことでもあったのかしら。私、大真面目だったのだけれど。
ルギィは笑うのをやめると、風を操る動きをする。空気が少しだけ動いて、少しも待たないうちに一枚の葉が部屋にまで漂ってきて、ルギィの手に渡る。
「これですね。今、この庭で一番匂いのきついハーブ」
「ちょっ、えっ、ルギィ」
まさか、え、ちょっと。
「フィルレイン、ニカに気に入られましたね。このハーブは確かに匂いがきついですが、量をきちんと考えてポプリにすればリラックス効果がありますよ」
「ちょっとやめてよルギィっ!」
あわててルギィの方に行ってハーブを取り上げようとするけれど、背の高いルギィが腕を上に上げてしまえば、届くはずもなかった。あーもー、恥ずかしすぎて穴に埋まりたくなるっ!
むぅ、と唸っていると、ルギィは微笑んだ。
「ニカにはいらない心痛ですよ。大丈夫、後顧の憂いは全てそこの畑男が断ってくれますから」
「いきなり辛辣だなおい!?」
フィルが吠えると、ルギィはつーんとそっぽを向く。あー、これはたぶん拗ねてるのかしら……どうなんだろう。
……どうでもいいんだけれど、いい加減真相を教えてくれないかしら?




