9話 ようやく見付けました。
ーこれはいったいどういう状況でしょうか。
「始めまして、お会い出来て光栄です。クリエラ様。僕の名前はー」
「真逆このアレク家のお茶会でお会いになれるとは!嬉しいです!」
「は、始めまして。私も会えて嬉しいです。」
"性格のひん曲がったブス令嬢"という認識をされている筈なのに、何故将来の伯爵候補達に囲まれて自己紹介されているのだ。どう反応すればいいのか正直困る。
ディランの方に助けてくれと目線を送るも、彼も彼で令嬢達に囲まれて困っているので気づいてもらえなかった。
仕方なく彼等の話が終わるのを待つ。しばらくしてから、一人の青年がフッと微笑んだ。
「いやぁ、驚きましたよ。」
「え?」
「貴女の事は性格の悪い令嬢だと聞いていました。しかし、アレク家の伯爵夫婦に対する礼儀、兄に向ける表情を見て、それは違うと思ったのです。」
「なので、こうして皆で話しかけてみることにしたのですよ!」
「そうしたらおしとやかで可愛らしい令嬢なのだと分かりました。」
「あ、ありがとうございます?」
ー本当はおしとやかじゃないんだけどね。
「もっとお話したいのですが、どうでしょう?」
すぐ近くのチェアに座るよう促されるが、丁重にお断りする。
「申し訳ございません。私、まだ挨拶をしなければならない方がいますの。なのでそろそろ失礼しますね。」
「そうですか...仕方がありませんね。」
私の周りにいた人達が一斉に散っていく。お兄様は...まだまだかかりそう。
「(仕方がない。私一人で行くか。)」
むしろその方が都合がいいかもしれない。
「(えっと、リアンはどこに...)」
リアンは山吹色の髪に青翠色の瞳と聞いているのだが、それらしき人は見つからない。
キョロキョロ辺りを見渡していると、ディランに肩を軽く叩かれた。
「リアン君は迷宮庭園の方に行ったらしいよ。僕もすぐ行くから、先に行っておいてくれないかな?」
令嬢達に聞いたらしい。私は彼に礼を告げ、歩き始めた。
「(ん?というか"迷宮"庭園って...私、無事に彼を見つける事が出来るかな。)」
ーでも、探すしかない。
「(全ては死亡フラグ回避のためよ!頑張ろう、クリエラ!!)」
私は迷宮庭園の場所をすぐ近くにいたアレク家の執事に聞き、すぐさま向かう。
「(ああそうだ。いつ会うか分からないのだから、身なりを確認しておかないと。)」
軽く身なりを整え、再び歩き出す。迷宮庭園がいったいどういうものなのか好奇心を隠しきれず、思わず早足になる。
ーこの後、長い時間その庭園に閉じ込められる事になるとも知らずに...
★★★
「ここ何処〜!」
いや、何処と言ってもアレク家の迷宮庭園である事に変わりはない。だが、あまりにも規模がデカすぎる。あまりに広い巨大迷路にクリエラは体力を奪われていた。赤く咲く薔薇達も何度見たことだろうか。行き止まりには何度泣かされそうになっただろうか。いったい何時間歩いたのだろうか。
明るかった空には何時の間にか闇夜が訪れようとしている。太陽など既に遥か遠くの地平線に沈んでいった。微かにその光が指してはいるものの、もう数秒後には無くなるだろう。
人の家の二輪とはいえ、怖いものは怖いし、春が始まったばかりまだ夜は寒い。春の服だけで一夜を過ごしても風邪をひく事は無いだろうか、寒い事に変わりはない。
「何故こんな事に...お腹空いた。」
嗚呼、グラス家のご飯が頭に浮かぶ。お腹と背中がくっつきそうだ。
ディランは心配しているだろうなぁ。お祖父様なんてもっと心配してるだろう。
ーちなみに、その頃のディランは
「クリエラ遅いな...薔薇にでも見惚れているのかな?」
ーあまり心配はしていなかった。
「まぁでも、いざとなったら熊でも狩って生きれば良いよね!!」
クリエラは空腹と寂しさのあまり変な事を言い出していた。彼女自身それは分かっていたのだが、変なテンションに入ってくれた方が楽な気がした。
「あれー、へんな光が見える...。」
目の前の庭の壁に僅かな隙間があった。そこから光が漏れている。人一人余裕で入れそうな隙間だ。
「入れるかな....まぁ、行ってみるしかないか。」
「おい。」
「きゃっ?!」
クリエラが隙間の前でブツブツ言っていると、そこから腕が伸びてきて、ちょっと生意気な青年の声と共に引っ張られる。
「お前、こんな所で何してるんだよ。」
クリエラを不審そうに見る青年は、間違いなく探していたリアンだった。
「い...」
「い?」
「いたぁぁぁぁ!!!」
「はぁ?!」




