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プリムローズには棘がある  作者: 五十鈴 りく


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54✤Other

 てこてこ、てこてこ、ハーバルは短い鹿の脚で森を歩いていた。本当は駆け出したいけれど、弾む気持ちを落ち着けるためにゆっくりと歩いたのだ。

 その先、柔らかな光が差し込む泉のほとりで、輝かしい美貌の妖精王が立っていた。


「王様、お呼びですか!」


 そう、王様がハーバルを呼んでいると言うのだ。そんなこと、今までにあっただろうか。ウキウキと弾む心を隠しながら妖精王の言葉を待った。

 妖精王はフ、と微笑むとハーバルに背を向けて泉に視線を落とした。


「今日はプリムローズの結婚式だ。お前も花嫁姿を見たいかと思って呼んだのだ」

「へっ」


 プリムローズ。

 あの夏至の夜に押しかけて来た、小さいくせに図々しくて逞しい娘だ。けれど、一緒にいて嫌な気持ちにはならなかった。また来てほしいと思ったくらいだ。


 そのプリムローズが結婚すると言う。相手はきっと、アレ(・・)だろう。

 妖精王は泉を水面鏡のようにしてその情景を映し出す。煌く光の粒が舞う中、水面に映し出された幸せそうな白尽くめの新郎新婦。身長差があるにも関わらず、ささやく新婦に耳を寄せてうなずく新郎の顔は穏やかであった。いつかのような血腥さはない。

 二人の歩くバージンロードを縁者たちが振り撒くフラワーシャワーが彩る。


「どれ。私からも祝福してやるか」


 妖精王が指先まで優雅に伸ばして腕を振るうと、小さく可愛らしい黄色のプリムローズの花が舞った。プリムローズは泉に沈み込み、新郎新婦の上へと降り注ぐ。ベールに降った花を、新婦はつぶらな目を瞬かせて見上げた。彼女はこの花が誰からの贈りものであるのかを悟ったのだろう。空に向けてにこりと微笑んだ。


「プリムローズは運命を開く花。その名の通り、望む未来を手に入れ、蕾だった彼女はこれから咲き誇るのだろうな」


 フフ、と妖精王は楽しげに笑った。

 ハーバルもまた、あの逞しさなら心配要らないと大きくうなずいたのだった。



      【The end】


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