エピローグ
エピローグ
走馬灯、というものになるのかもしれない。
上田匠は、今輪の際で、見知らぬ走馬灯を見ていた。
親から聞いたことはある、匠の先祖は皇帝だったんだぞ、と。
その、皇帝が、若き日の妻にそっくりな神女とともに、中華世界を栄養改革する、そんな、記憶。
生き生きと、その知識を披露するのは、まぎれもなく愛したその人。
自分はもう、これで終わる。
ひとり残されたばあさんは、自分を思い泣き続けるのだろうか。
そんなのごめんだ。
生涯ひとり、愛しぬいたひとを、死んだあとですら守りたい、なんて。
ばあさん、わしは死ぬが、わしらには、深い深いえにしがあったんじゃ。
出会った時に感じたのは、まぎれもなく運命だったんじゃ。
最愛の人が病室に来る。なんともない顔をして、剥いてもらったりんごを食べる。最後の晩餐には、ちょうどいい。
りんごの皮むきひとつとて、立派な料理に違いない。最後にばあさんのりんごを食べられて、わしの人生は大往生じゃ。
すうと、息を吸い込んだ。
「ばあさん。わしは実は、遠いご先祖が中華の皇族なんじゃ。じゃから、ばあさん。ばあさんはわしにとって、いつだって姫君じゃったよ」
まだ終わらぬよ、ばあさん、ばあさんとわしの縁は、ここから過去にさかのぼるんじゃよ。
そこでばあさんは、わしのことを忘れるくらい、自由に、楽しく、生きるんじゃよ。
そうして、ばあさんが作ってくれた未来でわしらは、出会う。
そう、だから。
死した魂は、弔われ、そのたびに最愛の人のそばに寄りそう。
ただ、住む世界が違うから、お互いに言葉を交わすことはできないけれど。
確かに魂は、妻とともに、在ったのだ。
だからこそ。
匠が死んだ七年後、最愛の妻が自分と同じ年齢になった時、七回忌でこの世に帰った魂が、妻を異世界へと送り飛ばした。
すべては、未来で妻と結ばれるため。過去のえにしを結ぶために。
了




