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第二十一話 閑話 秋月 琴音と東神野 明日香



「で、私の所に夜の生活を聞きに来たと?」

「当たり前でしょ、こんな事親に相談なんか出来ないわよ」

「そんな事を言われてもねえ」

「お願い、錬に飽きられたく無いの!」

「何言ってんだか・・・そもそもあんた、まだ処女でしょうが」

「あううう」

「相変わらず、暴走するのだけは変わらないわねえ・・・・」


錬の店は古い両隣の店舗を買い取って敷地を拡げ、新たに一階が店舗、二階が住居

に建て直した。

封印施設も隣接する倉庫の地下二階に作られていて、万が一の場合は倉庫ごと封じ

られる様になっている、物理的に。

当初と比べて格段に広く美しくなったのは勿論琴音が全てを監修したからだ。

問題なのは、錬の借りていた築五十年のオンボロ木造アパートを勝手に引き払って

私物を全て新居に移動させたのだが、調子にのって自分の私物までも紛れ込ませて

しまったのだ。


「まず一言言わせて、付き合っても無いのに同棲をしようとするな!」

「だってぇ、もう錬の背中を拭いてあげてるし・・・・・」

「あんた、私が良一の看病するのを見て同棲OKと思ったんじゃないでしょうね」

「それは、その」

「あのねえ、私と良一は体の関係が有るの、そう見えないだけで」


明日香と同棲をしている佐藤良一は、ハッキリ言って不細工の部類に入る容姿をし

て居るだけで無く、筋金入りのヲタクである。

他人の目を気にしないだけで無く、清潔なら何でも構わないと言う途轍もなく壊滅

的なファッションセンスの持ち主で、明日香と出会わなければ恐らく大魔法使い

(30歳童貞)に成れたであろう逸材だ。


「おかげで、他の女の眼に止まらなかったのは幸運だったわ」


女には全くと言って良い程関心を持たれない良一だが工学の、それも兵器開発に於

いては名のしれた天才である。

勤め先の堀川重工業では、彼のおかげで遅れた二十年を取り戻し、十年の歳月を飛

び越えたとさえ言われている。


「ヲタクで天才なんて私の為に存在するような男なの、誰が何と言おうとも」


良一と関係を持ち始めてからこっち、周囲の男達の悲鳴と女達の混乱が止まらない

確かに外見だけ見ればモデルも裸足で逃げ出す美女と、贔屓目に見ても戦国時代の

足軽にしか見えない、貧相な男。

誰が見ても、釣合いが取れているとは思われない。


「美醜だけを価値の基準にするのは子供のする事よ」

「その通りね」


明日香は判断基準を外見では無く、内面の才能や性質に重要視する傾向が強い。

琴音に至っては、更に第六感が加わるのだから、他人には理解し難いだろう。

それも自分達の美しさを棚の上に放り投げているのだから、性質が悪い。


「まずは、既成事実を作るのが先なんだけど・・・・・」

「分かっては要るんだけど・・・・・・・まだ機会というか状況というか」

「でしょうね」

「あううう」

「でも、方法が無い事も無いわ」

「本当?」

「日本の古き良き時代には、押掛け女房という制度が有ったのよ」

「押掛け女房?」

「そう!女が好きな相手の家に勝手に住み込んで良いという素晴らしい制度よ!」


ハッキリさせておくが風習であって制度では無い。

更に言えば、お互いそれなりに親密な関係でなければ、唯の犯罪である。

困った事にヲタクの知識とは自分に都合よく編纂された物が非常に多いのだ。


「一緒に暮らせば関係なんて直ぐに持てるわ」

「そ、そうかな」

「まず間違いないわ」


何度もいうが、それは自分達がモデル並みの美女だからである。

拒否できる男がこの国に何人居るだろうか・・・・・・・・。


「それで、関係を持ったその後の事なんだけど・・・・・」

「・・・・・・けっこう、しつこいわね」

「だって、気になるんだもの」

「はあ、まあいいわ」

「で?で?どうなの?マンネリ化はしないの?」

「・・・・・・いつも求めてくるから・・・その・・・・・そうじゃない」

「いつも!ねえ、時間は?時間はどれぐらいなの?」

「きゅ、休日の前は、その・・・・・・・・朝まで」

「すごっ!」

「言わせ無いでよ!」


この的外れな会話で奇妙な自信を付けた琴音はこの日から、いそいそと錬の新居を

自分好みの部屋に魔改造していった。

そんな事など夢にも思わず、病室でリハビリに励んでいた練に待ち受けるのは果た

して甘い天国の生活なのか、それとも苦く淀んだ冥府の暮らしか、選択肢の決定権

は錬の手に残るのだろうか。



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