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第13話:主演発表会見――スポットライトの下、あの男から届いた一通の手紙

新ドラマ『暁の声』主演発表会見。


都内某ホテルの特設ホール。

壇上には、白のロングドレスを身にまとった朱音マリアの姿があった。


その横には、共演者でありトップ俳優の白河レン、そして脚本家や監督陣。

報道陣のカメラが一斉にフラッシュを浴びせる中、司会が声を上げる。


「新ドラマ『暁の声』のヒロイン、“リサ”役を演じるのは――朱音マリアさんです!」


大きな拍手が起こる。


芸能界から一度姿を消した少女が、いま再び“主役”として脚光を浴びる――

その構図は、メディアにとっても格好のドラマだった。


 


だが、マリア自身の心は不思議なほど冷静だった。


壇上でマイクを握ると、真っ直ぐに記者たちを見つめて口を開く。


「……私は、かつてこの世界を離れました。

でも今、ここにいるのは――誰のためでもなく、“私自身”のためです。

それだけは、どうか記事にしてください」


どこか、微笑みをたたえながらも、芯のあるその言葉に、記者たちのペンが止まった。


一言ひとことが、彼女の“物語”そのものだった。


 


会見後。控室に戻ったマリアを、マネージャーが迎えた。


「最高だったわ。どの局も明日トップニュースにするって」


「……ありがとうございます」


笑顔を見せた瞬間だった。


「――これ、さっき届いた。差出人は……“東條遼真”。あんたの元彼よ」


手渡された封筒は、薄くて、白くて、まるで何も書かれていないような無機質さだった。


差出人の署名もない。だが、筆跡だけは確かに覚えていた。


 


封を切り、中身を取り出す。


一枚だけの便箋。そこには、たった数行の文字が綴られていた。


あのときのことを、

「正しかった」と思いたい日もあった。


でも、お前の芝居を見て、分かった。


間違ってたのは、俺だ。


それだけは言わせてほしい。


東條遼真


沈黙。


マリアは、便箋を見つめたまま、動かなかった。


マネージャーが言った。


「……どうする? メディアに出す?」


「いいえ。これは、私だけの“結末”にします」


便箋をそっとバッグにしまい、マリアは窓の外を見た。


夕暮れの空が、静かに色を変えていく。


 


過去はもう、追ってこない。

恨みも怒りも、もう芝居に変えた。


そして、勝った。


“彼に勝った”という事実だけが、マリアの中で確かに灯っていた。


 


――それでも、あの手紙は。


少女だった私の心に、ほんの少しだけ“救い”をくれた。


それでいい。


私は前を向く。


スポットライトは、もうずっと私を照らしている。


 


そして――新たな舞台が、また始まる。



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