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病気という大きな壁

 公園デート(?)から早翌日、僕はいつも通り携帯のアラームで起き、いつも通り朝を迎えたのだった。雀の声がチュンチュンと聞こえてくる。

 (昨日あれだけ動いたから身体中が痛い痛い!)

 これならいっそ学校を今日休んでしまおうか。いや、そんなことをしたら何を言われるか。

 少なくとも僕をどうも思っていない人なら何も言われないだろう。けれど、ひかりとかなら「そんな理由で来なかったの。全く、つばさは私よりも弱いのかな?」と言われかねない。しかも、今日は部活がある。

 休みたいな、いや、やっぱり起きよう、その葛藤のなか、僕はついにゆっくりと身体を起こしたのだった。

 自室の部屋を開けリビングに出る。トーストが焼ける香ばしい匂いが僕の鼻をくすぶる。洗面台に行き冷たい冷水で顔を洗う。いつもながら気持ちいい。昨日の余韻もプラスされてか今日はいつもよりも朝が輝かしく見えた。

 再びリビングに戻ると既に朝食がダイニングテーブルに置かれていた。トースト、スクランブルエッグ、ソーセージというごく一般的な朝食である。僕が食べ始めたときに制服に着替えたこまちも席につき朝食を食し始めた。父は既に朝食を食した後でありテレビでも見ている。もうすぐ『令和』になることをニュースキャスターが伝えている。

 「もうすぐ平成も終わるのね」

 昭和生まれの母がそんなことを言う。

 「そうしたらあなたたちも、平成って古いよ、なんて言われるのよ」

 「なら、昭和はもっと古いじゃない」

 こまちがごもっともなことを言う。

 「もっと古いも古いも同じようなものじゃないの。過去はもともと古いものだから」

 母親の意味不明な持論を発表することは至極どうでもいいのだが、僕が思うにこの会話を朝するべきなのだろうか?僕的には令和に変わろうがどのみち今まで通りに過ごせるんだからそこまで気にすることじゃない気がするが。

 食べ終わった食器をシンクに置き、自室に戻り制服に着替える。そして学校にいく準備を済ませ、8時を迎えた。

 8時になると母を除く家族全員が家を出た。父は車で通勤し僕とこまちは自転車通学だ。自宅から自転車をこぐこと約十分。我々の通う高校に到着した。それぞれ自分のクラスに行くとそこにはやや騒がしい声が辺りを包んでいた。そして僕は自分の席につき、携帯をいじり始めた。SNSには今日も色々なことが掲載されていた。イラストを載せてみたりだとかアニメ情報とかニュースだとか。最近では芸能界のスキャンダルニュースがトップ記事を飾っていた。

 「おはよう!つばさくん!」

 頭上からそんな声が聞こえる。こんなに快活に僕の名前を呼ぶのは一人しかいないはずだ。しかしなぜくんづけなんだろう。

 「おはよう、ひかり。にしても…?」

 僕は見上げながらそんなことを言ったのだったが、急に言葉を詰まらせた。見上げた先には、誰一人として居なかったのである。そして、僕が混乱状態に陥るのにそう時間はかからなかった。明らかに近いところから声をかけられた。しかしそこには誰もいない。まさか、幽霊?

 「なあ、つばめ。僕の名前を呼んだか?」

 ちょっとだけ席の離れたところにいた少女に僕は声をかけた。僕がさっきまでしていたことと全く同じようなことをしていたつばめは嫌そうな目をしながら、

 「呼んでないわよ。なぜ私がつばさを呼ばないといけないのよ」

 確かにつばめがあんなことを言うだろうか、いや、絶対に言わない。

 「さいですか。スマンな。時間とらせて」

 「変なつばさ」

 去り際になにか言われたような気がしたが無視して、自席に戻る。そしてまた考える。こまちだろうか、いや、こまちは僕をそんな呼び方はしない。みずほも同様にだ。そして、一番言いそうなひかりはまだ学校に来ていない。

 「おはよう!つばさ!」

 そしてまた頭上で声がした。僕はすぐさま上を向く。そこには165㎝のロングヘアーの少女がそこに立っていた。笑顔満点のその表情に僕は安堵し、

 「おはよう、ひかり。そのキーフォルダー、昨日僕が買ったやつだよね?」

 「うん!そうだよ!」

 それは昨日の物語である。観覧車に乗った僕達はそのあと売店に行き、お揃いのキーフォルダーを購入した。周りから見ると完璧にデートなのだがひかりの思い出にはぴったりだと僕は思った。ひかりにもその思いが伝わればなと、そのときの僕はそう思ったのだった。

 「早速バッグに付けてくれて嬉しいよ。僕もまあ、バッグに付けたけど」

 もうこれ付き合ってるんじゃね。そう思ったが言うのをやめた。もっと言えばさっきの意味不明な現象も忘れた。

 その時、チャイムがなって、羽島先生がクラスに入ってきた。


 HR後授業が4時限あり、昼休みに突入する。昼休みになるとクラスは騒がしくなり、ある人は昼御飯を食べたり、ある人はゲームをプレイしていたり、ある人は友達と話しながらワイワイしていたり、それはそれは様々だった。

 僕はというと、今朝母親が作ってくれた弁当を食した。もし弁当を忘れたら売店に行くことになるが、大勢の生徒で賑わってることだろう。

 昼御飯は一人で食べるときもあるが今日は違った。三つの机をくっ付け合い、僕とはやてと大層嫌な顔を見せているつばめと共にご飯を食べた。

 「珍しいなぁ。つばめと一緒にご飯食べれるだなんて」

 うんうん、とはやても頷いている。

 「私もこうなるだなんて考えてもみなかったし」

 聞くに今日は友達が休んでしまったらしい。そして他の友達も別の友達と昼休みを過ごしていて結果一人になってしまったらしい。

 「まあ、気にするなって。どんな偶然か知らないが、今日はつばめの好きなグミもあるから分けて食べようぜ」

 たまにあるのだ、こういうお菓子を勝手に入れてくるの。

 「マジか!」

 つばめが急に破顔した。スマイルつばめ。実はとてもレアだ。そしてテンションの高いつばめもまたとてもレアだ。(普段はつばめと話すことはあまりないからとてもレアかどうかは一概に断言できない)そして僕もそれを見て頬が緩んだ。

 「今日は平和そうだな」

 はやてがそんなことを言った。それは間違いないと僕は心のなかでそう思った、その時だった。

 「つばさくんはおとこのこよりもいろんなおんなのことなかよくしてる!」「なに楽しくしてるの?私も中に入れなさい」

 二人の声がして後ろを振り向くとひかりがいた。ひかりしかいなかった。だから、

 「ひかり、お前は今とんでもない偏見を持っているぞ」

 「偏見?」「ん?」

 ひかりは首をかしげ、つばめのグミへと伸ばす手が止まった。

 「いや、だから、男の子よりも女の子の方が仲良くしてると聞き取れたのだが。僕は均等に仲良くしてるぞ」

 「何が言いたいのかな、つばさは」「少なくとも私はそんな声一言も聞こえなかったぞ」

 「いや、確かに聞こえたんだ」

 僕は慌てふためく。その様子を見たひかりは、

 「そ、それよりも、昨日さ_」

 そしてひかりは昨日あったことを一部始終すべて話した。その目は輝いており、聞いてるこっちも楽しくなって、、、


 「それってデートじゃん」


 昼休みが終わると5時限目が始まる。総合の授業で、将来どんな生活をしていくのかというのを考えさせられた。ちなみに僕は大学進学を目標としているのだが、その後の将来なんて考えられない、僕はそう思った。

 5時限目が終了し10分休憩後、6時限目が開始する。6時限目はLHR(ロングホームルーム)だ。

 「というわけで六時間目はそろそろ始まる体育祭の応援団員を決めたいと思う。各クラス男女それぞれ10人出さなければならないらしい。誰かやりたいやついるか?」

 羽島先生がそんなことをいい、行事に暑くなるタイプのやつが立候補したり、面倒だからずっと黙ってるやつや(僕のことでもある)、やれよやれよと言い誘ってるものの自分は立候補しないやつ等、それはそれは様々だった。だがそれよりも右の席が勢いよく立ち上がり、

 「はい!」

 と大きな声で言った。目が輝いているなぁ、青春だなぁ、そう思った。そう思えたから、僕は若干哀れな顔をした。そして羽島先生の方を見る。予想通り僕とほぼ同じ雰囲気を纏っていた。

 「その、だな。小山。応援団練習というのはかなり厳しい練習になる。その身体では、厳しいのではないだろうか」

 「リハビリにはちょうどいいかと」

 リハビリか。確かにその発想はなかったな。けれど、

 「ここでは小山の要望には答えられない。医師との相談の上決めようと思う」

 先生はいつもの陽気モードではなく冷静に、かつ生徒を気にかけている様子に見えた。しかしここで事件は起きた。ひかりの様子を見たところ顔色がいかにもおかしい。悪すぎるというほどに悪かった。そして急に座ったと思うと、

 「つばさ、気分、悪い」

 「先生!!ひかりをすぐに保健室へ!!!」

 クラスが一気に騒がしくなる。しかしそれも一瞬のことで、

 「静粛に!」

 羽島先生がそう怒鳴ると、ひかりのそばまでやって来て、

 「よいこらせっと」

 とひかりをお姫様だっこした。そして彼女は保健室に連れてかれた。


 波乱の6時限目は早々に終わり放課後に突入する。僕は心にモヤモヤしたものを感じながらも今日の部活の準備をした。心がモヤモヤしているのは僕だけではなく、つばめもそんな感じだった。はやては元気溌剌に見えるものの、同じ気持ちなのは目に見えていた。そんな重い空気がクラス中を包んでいた頃、急にドアが開いた。

 「お疲れさまでーす!ってあれ?何でこんなに寂しい雰囲気なの?何でひかり先輩は居ないの?」

 「こまさん。何でみずほとセットじゃないんだ?」

 「掃除当番だ。そしてこまさん言うな。何があったんだ?」

 こんなダイレクトに聞きにくい事を聞けるこまちって格好いいな、そう思ったが同時に聞きにくい理由くらい感じ取ってほしいという願望も芽生えた。

 「ひかりが急遽早退してな。心配なんだよ」

 「ひかり先輩が!まじでか!」

 こまちは心配そうな顔をしつつもはやて同様元気溌剌だ。ひかり先輩のことだ、きっとすぐに元気になるだろう、そう言いたけだ。

 「まあ、ここまで空気重くなるほど気にすることねーんじゃねーかと思うぜ。ひかり先輩のことだ。敵なんて瞬殺だろ!」

 似たようなことを言った。空気が軽くなるのを感じた。同時に清々しい風がクラス中を駆け巡った。

 「お前の妹ってめっちゃ良いこと言うな!」

 はやてがそう誉めている。えへへとこまちが照れてる時に、

 「「遅くなってすみません!」」

 みずほとあさまが同時に入ってきた。今日はこのセットだったか。

 

 「先輩。折り入ってお話が」

 早速みずほは僕のところまで来るとそう訪ねてきた。

 「ん?なんだなんだ?デートのお誘いか?」

 「つばさ。あんまり調子乗ると悲劇が再来するよ」

 つばめがそんな忠告をしてきたので、コホンと咳払いし、

 「で、どうしたんだ?」

 「ゴールデンウィークのことなんですけれど」

 ゴールデンウィーク。今年は色々あって10連休中なのだが、今年も僕はお暇である。

 「その内のどこかで、ちょっと出掛けたいなぁ、っと思いまして」

 ほうほう

 「先輩、ポートレートって知ってますか?」

 ポートレート、簡単に言えば人を被写体として写真を撮る行為を指す。実際に体験入部のときにやったあれである。

 「知っているけど。それがどうしたの?」

 「だから、写真を撮る練習で校外活動したいのですが」

 ああ、そゆこと。

 「別にいいんじゃないか。で、誰を撮るんだ?」

 「一応私の友達でお願いしたところ快く快諾してくれました」

 「もうそこまで計画を進めていたのか。そういうことなら、やろう!」

 もしここでやらなかったらその友達に申し訳ない。

 「よし、みんなポートレートで写真を撮る練習として校外活動を急遽ゴールデンウィークにすることになったから、よろしく!」

 色んな苦情と謝罪の声が入り交じったが、それだけで空気が面白くなっていくことに気付いた僕は、楽しく受け答えていた。


 その日の夜、SNSの通知が来た。えっと、みずほから?

 『夜分遅くすみません。今日はなんか申し訳ありませんでした。』

 『いやいや、気にしないでいいよ。で、どうしたんだ?』

 『ポートレートの詳細なんですが、5月1日の午前10時からってことで大丈夫でしょうか?』

 『僕は大丈夫だけど、他の人はわからないなぁ。部活のグループに送るもよし、次回の部活で伝えるのもいいんじゃないかな』

 『了解です!ありがとうございます!』

 数分後、部活のグループにみずほが部活の呼び掛けをしたのは言うまでもない。


 翌日、昨日とほぼ変わらない朝の始まり、そして学校へ通学、クラスに入ってスマホをいじる。これまではいつも通りだった。羽島先生が入ってくるまでは。

 「おはよう!みんな!ちょっと残念なお話がある。小山がそこの病院に入院してしばらくは学校に来れないから、徳山、お前が臨時の学級委員だ!」

 


 えっ?

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