第14話 ボクが考える最強のデートコース
さて、遊園地である。
前世ではデートと言えば遊園地という定番感があるが、この遊園地デート、中々に曲者なのだ。
まず、普通に1対1の男女で遊園地デートする場合。
これから懇ろになる……かもしれない男女で行くと、とにかく試練の嵐となる。
人気アトラクションでの行列中にトークが盛り上がるか?
そもそも各アトラクションを廻る段取りに無駄はないか?
ランチのフードコートで席が見付けられず、ハンバーガーセットの載ったトレーを抱えてマゴマゴしてカエル化現象を起こさないか?
デートの完遂を目指す男子にとっては、遊園地デートとはまさにいつでも爆発する火薬庫なのだ。
そして、グループで遊園地デートする場合も要注意だ。
そもそも、グループデートに遊園地は一見すると向いていそうに見える。
先述した1対1での試練も集団の多様性によって上手く切り抜ける事ができる。
だが、実は遊園地でのグループデートは、別ベクトルで実に難解なステージなのだ。
グループで来ている筈なのに、いつのまにか消えている2人……。
探そうと慌てて連絡しようとするが、周りの友人に止められ窘められる俺……。
──え⁉ あの2人ってそうなの⁉
と周りの恋模様に唯一気付いてなかった間抜けな俺が炙り出されるなど、前世での遊園地デートと言ったら、悲しいエピソードに事欠かない俺だ。
そんな俺が、1対多数の女子という夢の遊園地大規模集団グループデートへ挑むことになった訳だが、そこは俺も中身はアラサー。
これ位の危機くらい乗り切ってみせる!
そう、思っていたのだが……。
「はい。みなさん、こちらの男性団体専用ゲートから入ってください」
先導する多々良浜さんに従って遊園地の正面ゲートをくぐる。
今日はゴールデンウィーク2日目で連休の中ほど。
という訳で、遊園地は家族連れでごった返しており、入場チケットを購入する窓口にも長蛇の列ができている。
だが、我々ハニ学1年2組の一団は、その列には並ばずに直接ゲートを通過する。
はて? 多々良浜さんが前売り券を買ってたのかな?
「今日のコースですが、まずは最新のジェットコースター白虎に乗って、次にスピンコースター大嵐に乗り、フライングコースター蝙蝠に乗ります。後は……」
「ちょ、ちょ、ちょ! 多々良浜さんストップ!」
「どうしました? 橘君」
今日の遊園地団体デートの計画を発表する多々良浜さんを、俺は慌てて制止した。
──まったく、この世界の女の子は。デートもまともにした事ないから、放っておいたら直ぐこれだ。ったく~。
人気のアトラクションばかりを巡るコース。
まるで、何も知らない男子中学生が立てたボクが考える最強のデートコースだ。
人気アトラクションにつきものの100分待ちの行列。
序盤は良くても、2か所目から何時間も行列に並ぶことにより溜まる疲労と、反比例して減る口数。
疲労とコミュニケーション不足により上がる不平不満と、それを宥めつつも悪くなっていくグループの空気……。
これはいけない。
「あのね多々良浜さん。そのコースは無理があるんじゃ……」
「大丈夫ですよ橘君、行きましょう。準備はバッチリですから。私、今日は楽しみにしていたんです」
「そ、そっか……」
まぁ、頭ごなしに否定するのもな。
それに、人は失敗から学ぶものだし、多々良浜さん達は頭が良いから直ぐに軌道修正はできるだろう。
そんな、人生の先輩面しつつ俺は1つ目の人気アトラクションの白虎へ向かった。
このジェットコースターは、入場チケットにも描かれている、この遊園地の看板アトラクションで大迫力の規模を誇るアトラクションなのだが……。
「では、皆さん。こちらの男性用搭乗口から乗りますよ~」
「「「「は~い」」」」
──え? 男性用搭乗口?
長蛇の列で、最後尾に『現在、160分待ち』の立て看板があるのを横目に、多々良浜さん達はアトラクションの入口へ向かう。
「はい。男性のお客様とそのお連れ様ですね。こちらからどうぞ
「ええ……」
困惑しながらついて行くと、もうジェットコースター乗り場は目の前だった。
「あの……多々良浜さん。何か特別な乗車優先パスでも買ったの?」
前世のアミューズメントパークでも、高額な優先チケットを購入することで、人気のアトラクションに並ばずに入れるシステムがあった。
入場料なんて目じゃない程の高額なお値段だったけど。
今回は、そういう札束ビンタで解決したのだろうか?
「いえ、そんな事はしておりませんよ。事前に遊園地に、男性の来客を申告していますのでスムーズです。無論、この優遇に対する料金は無料です」
「ええ……。そんな所にも優遇が……」
ただ、男性であるというだけで何だか悪いな……。
「おかげで、男性の護衛やお付きという名目で、私たちも一緒に優先入場できるんです」
「ただ、流石に男の子が橘っち一人だけじゃクラス全員を一団とは認めらられなかったから、アトラクションによって同行するメンバーを入れ替えてって考えてたんだよね~」
「だが、観音崎くんというもう一人の男の子が同行してくれたおかげで、クラス全員で同じアトラクションに乗る事ができるようになった。観音崎君には感謝だな」
どうやら男性一人につき護衛や身の回りの世話をするお付きの人の人数には上限があるようだ。
たしかに、ジェットコースターについては一緒に乗れる人数は十数名といった所だから、次の男性が乗っていない分まで男性警護とする名目には無理があるからな。
──ん? って事は……。
「はい。なので、観音崎君には橘君とは別の便でアトラクションに乗っていただきたいのです」
「え?」
恐縮しつつ、でもハッキリと意向を伝える多々良浜さんに対し、晴飛が狼狽える。
だが、先んじて理路整然と男子は分かれて乗る必要がある事を説明された後であり、晴飛もこういう時の空気はある程度読めるタイプだ。
なので。
「う……うん、わかった。でも……」
と晴飛も多々良浜さんの提案に従わざるを得ない。
ただ、晴飛の顔には、『知己くんと一緒に回りたい』と顔に書いてあったのだが……。
「御理解ありがとうございます観音崎君」
その事に、同じく周りに気遣いができるタイプなので気付いている筈の多々良浜さんだが、まるで気付いていないという風に、どちらが先発の便のジェットコースターの乗るかのメンバー割りを始める。
こうして、楽しみにしていたゴールデンウイークの遊園地団体デートなのだが、何やら不穏な空気で幕を開けたのであった。
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