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不穏な影ー2

――キナリザ山道、山頂付近

「……何かあるぞ!」

御琴の声に全員が警戒レベルを上げる。

山頂の少し開けた場所に組まれた木造の祭壇のような物体。そしてその真ん中には――

「あれは、岩?」

クレハの声に目を向ける、巨大な岩のような物体が鎮座していた。

 周囲を見渡すシュヴェリア、どうやらここが結界の中心で間違いない様だ。

「他に悪魔の気配はないな」

「私も感じません」

「僕もかな」

シルビアとカルナがシュヴェリアに続いた。

「私、あの祭壇からとてつもなく嫌な気配がするんですが――」

メルがシュヴェリアの衣服の裾を引っ張ってそんなことを言う。

「私もなんか寒気がします~」

「それがしもだ……」

ステラと御琴が身体を震わせていた。

シュヴェリアは懐から双眼鏡のようなものを取り出し、祭壇を見る。魔力の流れを可視化する機能を使い、周囲の魔力の流れを探るためだ。

「フム、あの岩、いや、祭壇が結界を維持しているようだな」

「じゃあ、あの祭壇を壊せば――」

「ああ、結界は解除できるだろう」

シュヴェリアとクレハの会話に一安心する面々。すぐ前にある岩が気になるところだが――

とりあえず、祭壇を破壊するため、近づく一行。

祭壇まで後5メートルという距離に来た時だった。

ピシピシ――

何処かから亀裂の入る音が聞こえた。

「なんの音でしょう?」

初めに声を上げたのはシルビアだった。

「ん? 音? それがしには聞こえなかったが――」

「いえ、今しましたよ、私も聞こえました~」

 聞こえるもの半分、聞こえないもの半分という感じで、仲間内で意見が割れる。

 ピシピシ――

再び音が響く。

「ほら、してますって~」

「ウム、今のはそれがしも聞こえた」

「何でしょう、何か固いものが割れる感じですよね」

「なんか卵の殻が割れる時みたいな――?」

 クレハの言葉に続けたメル、自分で発した言葉に自分で引っかかった。

 卵が割れる、卵が孵る、卵からなんか出てくる。みるみる表情が青ざめるメル。

「シュヴェリアさん、あれって岩ですよね?」

 青ざめたまま、満面の笑みで聞いて来るメル。

「だと思うが――」

「だと思うじゃ、困るんですよー 岩ですよね、岩って言ってくださいー」

シュヴェリアを掴み、ガクガク振り回すメル。

「メ、メル君どうしたんだい!」

「あらあら――」

「メルちゃん、落ち着いてー!!」

止めに入ったクレハにも暴走するメルは止められない。

訳が分からないまま困惑する一同、どうにかシュヴェリアからメルを引きはがすと、3度目のあの音が聞こえた。

パキパキ――

一瞬にして硬直するメル。彼女はカタカタと動くと、首を動かし例の岩の方に視線を向ける。

「ひぃぃ――」

 悲鳴を上げるメル。どうしたのかとメルの視線の先を追う一同。「あっ」と声を上げる。

岩にヒビが入り、割れそうになっていた。

「あの音、あの岩からしてる音だったんですね」

 クレハの言葉に納得いったといわんばかりに頷く面々。しかし、シュヴェリアは気付いた。

「……シュヴェリアさん?」

 反応を見せないシュヴェリアに疑問を持ったクレハが声を上げる。

 シュヴェリアの顔も青ざめていた。

「ど、どうしたんですか!!」

 慌てて尋ねるクレハにシュヴェリアは一呼吸おいて告げる。

「クレハ、君は下がれ、カルナとメルは下がって魔法準備、残りは武器を取れ!!」

「む、無理ですー 絶対にぃ無理ですー」

「うるさい、つべこべ言わず指示に従え、どのみち倒さなければここで死を待つしかない!!」

半泣きで下がるメル。理解できない残りの面々はおたおたしていた。

「シュヴェリア君、どういう――」

「魔界には岩そっくりの卵を産む生き物がいる。ある日、突然、村に岩が落ちて来たと思ったら、その岩からそいつが出てきて村人全部を食い尽したなんて話があるくらいだ」

「え゛……」

声を裏返すような返事を返す御琴。シュヴェリアは続ける。

「非常に凶悪で獰猛、魔力の量で身体を急激に成長させる巨大なドラゴン」

 岩の姿をした卵が割れ中からそれが姿を現す。

「悪魔にとってすら災害級と呼ばれるドラゴンの上位種、その名も――」

『黒龍』

シュヴェリアの言葉に全員が戦慄をした。




「うわーん、魔将シュロウガどころの騒ぎじゃないじゃないですかー」

背後まで十分下がったメルの悲鳴が聞こえて来た。

振り返る、いや、ちょっと、下がり過ぎじゃないか? そんな疑問を抱きながら叫ぶ。

「だが、まだ幼体、それも生まれたばかりだ、勝機はある」

 剣を構えるシュヴェリア。

「前衛、ついてこいよ!!」

 シュヴェリアの掛け声で慌てて走り出す、御琴、ステラ。

「シュヴェリアさん、私はとりあえず独立して動きます」

了解した、シュヴェリアの返事を聞いて一先ず距離を取るシルビア。

「クレハ君、後ろに――」

「はい、その前に――」

 クレハはそういうとその場で銃を構えた。発砲。クレハの打った銃弾は黒龍の左目に直撃する。

「ギャァァ」

 悲鳴を上げる黒龍。よし!! クレハが歓喜の声を上げる。

「クレハか!?」

走りながら、苦しむ黒龍を見て声を上げるシュヴェリア。

(全く、下がっていろと言ったのに――)

何処か嬉しく、何処か心配な気持ちを振り切るように、ドラゴンの腹部めがけて斬撃を繰り出す。

「――真・紅破」

 ズドーン その一撃は周囲にすさまじい音を響かせたが――

「チィ――」

 黒龍のその装甲は固く鱗の数枚を砕き、出血させるにとどまる。

「だが――」

急いでその場を離れるシュヴェリア。シュヴェリアのいた場所をドラゴンの爪が襲う。

「ステラ――」

 ステラに向かいポーションを投げるシュヴェリア。ステラがそれを手にしたとたん。

「パラメーターオールリビジョン」

 どこかで唱えられた魔法が、シュヴェリア、ステラ、御琴のステータスを上げた。

「!?」

「シルビアさん~」

「皆さんのステータスを少々弄らせてもらいました。ポーションは飲まなくても大丈夫ですよ」

 澄ました様子で言うシルビアだが、この数秒で、シルビア含む4人のステータスを上げたのはなかなか骨の折れる仕事だったはずだ。

(さすがはダイアリングか――)

シュヴェリアは自身の能力がかなり向上しているのを確認し、再び、ドラゴンに向けて走る。

御琴が刀の力を使い、竜の爪を弾くとその隙にステラが黒龍の懐にもぐりこむ。

「はぁぁぁあ!!」

 ――蓮華

 ステラの槍が先ほどシュヴェリアの剣が露出させた皮膚を射抜く。

「ギャァァァァァァ」

 黒龍の叫びが響いた。

「ステラ、危険だ、下がって」

 黒龍の腕を斬り払いながら御琴が叫んだ。すぐさま後退するステラ。

 黒龍がステラたちに気を取られているうちに背後に回り込んだシュヴェリアが斬撃を繰り出す。

 ――紅蓮

攻撃が後頭部に直撃し、黒龍は倒れ込む。

(奴の左目が使えないのが効いているな。左から回り込んでしまえば、見つかることなく背後を取れる)

 開戦直後、クレハが打ち込んでくれた一撃が効果を出していた。

 とはいえ、楽観は出来ない。黒龍の回復力を侮ってはいけない。すぐに自己再生してしまうはずだ。

ならば、両目を潰して一気に―― というのも手ではあるが、リスクが大きすぎる。視界を奪われた黒龍が暴れ出せば、もう手が付けられない。クレハもそう考えて、片目だけを潰したのだろう。

まあ、そんな小細工が通用するのも、幼体だからなのだが――成体なら眼球も強固で銃程度では打ち抜けない。

 倒れ込んだ黒龍に向かいスキルを放つシュヴェリア。

――大蛇おろち

「ギャァァァア」

 黒龍が悲鳴を上げ、その背中に無数の切り傷が入る。

「今だ!!」

 シュヴェリアの合図で後退していた2人の魔術師の魔術が火を噴く。

「――エクスプロード」「サイクロン」

 メルのやたらと気合の入った叫びで発動した魔法は黒龍の背中を捉える。

「頼むから効いてー!!」

 半泣きのメルの一撃は実に切羽詰まっていた。


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