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刀剣の巫女ー4

「ここが冒険者ギルドなんですね~」

 ステラが言いながらを室内をくまなく見渡す。

「ここに居るのって皆さん冒険者なんですよね」

 物珍しそうに周囲の人々を見るクレハ。周囲には屈強な者が多数いた。

「そうだ、ランクは様々だが、大体が冒険者のはずだ」

 御琴が声を上げると周囲がざわつき始めたのを感じた。

 巫女の訪問に周囲が動揺しているようだった。

「あそこのカウンターで話を聞いてもらえるぞ」

 まさか、自分が周りにそんな影響を与えていると思っていない御琴はシュヴェリアにカウンターに行くよう指示する。

 刀剣の巫女が連れている謎の怪しい男が周囲の注目を引かないはずはない。

 注目を受ける中、シュヴェリアたちはギルドのカウンターに進む。

「すまない、少し聞きたいことがあるのだが」

「はい、なんでしょう?」

 シュヴェリアの姿に怯んだのか、少し怯えた様に返事をする受付嬢。

「街道に高位のドラゴンが出るという案件について情報が欲しい」

 いうと、受付嬢は「失礼ですがランクはいくつでしょうか」と聞いて来た。

 そんなもの無いのだが…… と思いながらも、そんなこと言っては話してもらえないと対処法を考える。

「アメジストです」

 横からクレハがそう言った。指輪を見せながら。

受付嬢はそれを見ると、申し訳なさそうに、

「申し訳ありません、現在その案件はコランダム以上の冒険者の方しか受け付けておりません」

 と告げる。コランダム、第9位の冒険者だ。

「む、そうなのか、それがしでも駄目か?」

 シュヴェリアとクレハの間から顔を出して御琴が尋ねる。

 困ったような顔をする受付嬢。

「巫女様なら特例としてお教え出来ると思うのですが……

残念ながらギルドマスターが今、不在でして」

 なるほど特例の判断を下すものがいないらしい。

これは困った。まあ、別に情報などなくても向かえばいいだけなのだが――

「ちなみに現在、その危険性の高さから、ペタゴンタ方面への通行を制限しています」

 思ったそばから釘を刺される。フム、これは相当に面倒な事態だぞ。

「つまり、今、ドラゴン退治に向かえないということですか?」

「そういうことになるね~」

 メルとステラが後ろで話していた。

「どうする、シュヴェリア君、ここでゆっくりしてもいいけど……」

「あまりのんびりしているのも、な。ルーフェス王との約束もある」

 フムと口元に手を当て思考していると、

「よう兄ちゃん!」

 大柄な男が声をかけて来た。振り返るシュヴェリア。

「何かお困りのようだな、手を貸そうか?」

 男の手を見る、コランダムの指輪をはめていた。

「どうだ、俺らなら力になれるんじゃないか?」

男の背後で下品な笑みを浮かべる仲間たち、シュヴェリアはそれを見て一考する。

「おお、それは助かる、是非――」

「悪いがそれには及ばない。こちらの問題はこちらで何とかしよう」

 シュヴェリアはキッパリと断った。御琴が「えっ」と振り返る。

「シュヴェリア殿、何を言っているのだ、今はいち早く――」

「急いではいる、だが仲間は選ぶべきだ」

「ああ? 俺たちじゃ力不足って言いてぇのか!?」

 大柄な男の仲間の1人が声を上げる。

「ああ、それどころか、後ろから斬られる可能性すらある。……というか、そのつもりだろう?」

問うと、大柄な男のさわやかな笑みが固まった。

「目的は私の仲間たちと、私の装備と言ったところか」

 シュヴェリアがそういうと、クレハとステラの表情が曇った。大柄な男の仲間たちと共に。

「随分な言いようだな、兄ちゃん、こっちは親切心で言ってるのに」

「そうか、ならば失礼した。だが、必要ないことに変わりはない」

 そういうのは他を当たってくれ、そういうシュヴェリアに大柄な男は不満があふれていたようだ。

「待てよ!!」

 大柄な男はシュヴェリアを掴もうとして――

「い、いてて!!」

 悲鳴を上げる。背後からシュヴェリアに迫った男はシュヴェリアに掴まれ、逆にねじ伏せられていた。

「どうする? どうせなら腕の一本でも、もらっておこうか?」

 組み伏せられた男を見るシュヴェリアの目は殺意を纏う、恐ろしいものだった。

「くっ、解った、解ったから放してくれ!!」

その声を聴いて拘束を緩めるシュヴェリア。男が慌てて仲間の元に駆けだす。

「クス、おバカさんですね。相手が悪すぎますよ」

 一連の騒ぎで静まり返っていたギルド内にふと声が響いた。1人の女性が階段を下りてくる。

(なんだこの声、どこかで聞いたような……)

 降りて来た女性を見て周囲がざわめき出す。クレハとステラが「あっ!」と嬉しそうな声を上げた。

「あなた方が相手にしたのは黒き英雄、ブラックダイアクラスの超大物ですよ」

 そこに居たのはドレスのような魔道士服を着た女性――シルビアだった。




 思いがけない人物の登場に言葉を呑むシュヴェリア。

「どうもご無沙汰しています、シュヴェリアさん」

 声をかけられ頭を下げるが何故ここに居るのかが気になってしょうがない。

「シルビアさん、なんでここに!?」

心配しなくてもすぐにクレハが聞いてくれた。

「ここは冒険者ギルドですよ、冒険者である私がいるのは当然では?」

 何食わぬ顔で言われ、口籠ってしまうクレハ。確かにその通りな訳だが――

「ルーフェス王国にいた君が何故ここに居るのかっていうことだと思うけどね」

「その言葉そっくりそのままお返し出来ると思うんですが――どうでしょう?」

 やっぱりそう返すよね。のらりくらりとかわすシルビアにカルナも手を焼いているようだった。

「ふふ、冗談ですよ。私はドラゴンの情報を聞いてここまで来たんです、そちらも同じですよね?」

 にこやかにほほ笑む彼女からは嫌な感じはしない、嘘ではなさそうだ。

「全く、貴方方はまだこんな真似をしているんですか? この間、手ひどく痛めつけたばかりでしょうが」

 シルビアの声に恐縮する先ほどの冒険者たち、ひぃぃ、と声を上げ後ろに下がっていく。

「知り合いか?」

「知り合いというか、この間私を獲物にしようとして、逆に私に打ちのめされたかわいそうな人たちです」

「だ、大丈夫だったんですか?」

「ええ、勿論」

 “言ったでしょう、こう見えて私強いんですよ”と胸を張るシルビア。豊満な胸が揺らいだ。

「あなた方、こんなことをしょっちゅうやってるんですか?」

 メルが冷たい視線で吐き捨てる様に言う。――見た目――子供の一言に口籠る大人たち。

 はぁ…… 御琴がため息を吐いた。

「情けない、冒険者なら冒険者らしく、仕事で稼いだらどうだ」

「く、くそ――行くぞ、お前ら!!」

逃げ去っていく大柄な男と、その仲間たち。

「おい!」

 シュヴェリアはその背中に声をかける。

「ターニングポイントだ、ここで切り替えなければ、じきに命を直に命を落とすぞ!」

 シュヴェリアの言葉に舌打ちを返す男たち。そのまま、彼らは去って行った。

 彼らが居なくなると再びギルドは賑わいを取り戻した。

「……ふう、ギルドとして何とかしなくていいんですか?」

 シルビアに問われ、受付嬢は困った顔をしていた。ギルドにも色々事情があるようだ。

「まあ、それについては一先ず置いておきましょう。さてシュヴェリアさん、何かお困りごとがあるのではないですか?」

シルビアはダイアリングを見せつけながら聞いて来る。

 シュヴェリアは思った。やはりこの女、油断できない、と。

(しかし、確かに困っているのも事実、変な輩に力を借りるよりは……)

 シュヴェリアが困惑していると、クレハが目線で訴えて来た。力を借りましょう、と。

 う~ん、しかし~ 珍しく煮え切らないシュヴェリア。カルナを見ると、お手上げと言わんばかりに手のひらを天に向けていた。

「私、そんなに信用できませんかね?」

 何やら泣きそうな声でそんなことを言うシルビア。今にも泣きだしそうだが、演技だと解っているので余計に信憑性が薄れる。

(さすがにそんなことは言えんが……)

言って本当に泣き出されたら、というか嘘でも彼女は泣いて見せるだろう。

「何を迷っておるのだ、大丈夫、シルビア殿は信用できるぞ」

 そんなことを言いだす御琴。知り合いだったのかと聞くと、前に一度挑んで負けたらしい。コテンパンにされたそうだ。――お前……

 仲間たちはすでに皆シルビアを信頼しているようだ。

「はぁ、解ったよろしく頼む」

「はい、よろしくお願いしますね。皆さん」

 シュヴェリアたちの一向に、シルビアが加わった。


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