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魔将シュロウガ−4

シュロウガは『最弱の魔将』と呼ばれている。どういう意味かは説明するまでもない。魔将30体の中で一番弱いのだ。そもそもシュロウガはハエ族の下級悪魔、元来それほど強くなる悪魔ではない。

 しかし、シュロウガは真面目だった。日々真面目に訓練をこなし、それでも足りずに自主練習を行い、カエリウスに頼んで参謀になるための訓練まで受けた。

 その結果、卓越した戦闘能力を得た特別個体だ。

 その努力を買いカエリウスが魔将に押した。実際は本来の魔将の力には若干足りないがそれでも周りからは認められている努力の将だ。

 しかし、事実として『最弱の魔将』であることは間違いない。

 だから、シュヴェリアも、そのラインをしっかり守り殺さないように気を付けた。

 だが――

「サア、我ガ力ヨ昇華セヨ!!」

 確かに限界まで削ったはずなのに、シュロウガはまだ戦える。これはどういうことか、そして更なる力を解放しようとしている――つまり。

(シュロウガ、自身の努力で超えたのだな、限界を――)

 シュロウガの全身が銀色に変わっていく。破れた外皮も包み込むように。

「我ガ力、陛下ノタメニ!!」

 魔王アトライアスすら知らぬ、新たな戦闘形態。一体の悪魔の意地をシュヴェリアは目撃する。

「シュヴェリア君、これは――」

「カルナ、メル、詠唱を始めろ、クレハは下がれ、残り全員、私を援護しろ!!」

 即座に作戦を伝え、戦闘に入るシュヴェリア。全員が指示に従った。

 魔術は使わず、腕による近接戦を始めるシュロウガ、シュヴェリアは攻撃を避け近づこうとするが――

(速い、先ほどまでより、かなり――)

 攻撃が早く近づくことが出来ない。

「シュヴェリア殿!」

 クロードが盾を掲げ近づいて来た。

「俺の後ろに!」

 クロードの背後に隠れ、シュロウガに近づく。

「煩ワシイ」

 シュロウガが数本の腕で、クロードの盾を狙う。

「させない!!」

 盾の前に深冬が立ちはだかり――

「――抜刀」

 その腕を弾いた。しかし、

「邪魔ダ――」

「かっ――」

 別の腕が迫り、深冬を吹き飛ばす。またすぐに数本の腕がクロードの盾に向かった。

「ぐ、うう――」

 クロードの大盾とシュロウガの腕がぶつかり合う、しばし、拮抗し――

「ダメだ、行ってくれ!!」

 クロードの盾が変形し始めた、破れるのも時間の問題だ。

 クロードの脇を抜け進むシュヴェリア。ほどなくして、盾を砕かれたクロードがふとんだ。

「チィ――」

 しかし、シュロウガは目の前、攻撃準備に入るシュヴェリア。

「シュヴェリア様!」

「ステラ、合わせろ!!」

 攻撃がシュヴェリアに集中したため、ステラも無事シュロウガの前までたどり着けたようだった。攻撃力を上げるポーションを放り投げ、叫ぶ。

 「はい」ポーションを一気に流し込むと、ステラは一気にシュロウガの腹部に駆けていく。先ほどシュヴェリアが装甲をぶち抜いたあたりだ。

(さっきの変化を見る限り、あれは新たな外皮を身にまとったようだった。ならばその下は――)

 新たな外皮で身を包んだのならば、その下はそのままだ回復するとしても時間がかかる。

 外皮が2重のところを攻撃するよりも、新たな外皮だけを攻撃する方が貫通の可能性がある。

 ステラの意見に、シュヴェリアも賛成だった。ストレングスアップの魔法をかけ、ステラを追う。

 念のため、防御力ダウンの効果のあるマジックポーションをシュロウガの腹に投げつける。

「ステラあそこを狙え!」

 ステラと息を合わせ攻撃に踏み切る。

「――真・紅破」

「――椿」

 シュヴェリアの手に硬質な物同士がぶつかり合う振動が伝わった。

「!?」

 目の前で折れていくステラの槍を見てシュヴェリアは言葉を失う。

 シュロウガの外皮はシュヴェリアの剣とステラの槍を防ぎ切ったのだ。

(ならば――)

 すぐにステラに下がるように指示を出した。後衛に合図する。

――エアスマッシャー

――フレア

 2つの魔法が後方からシュロウガの腹部に向かい放たれた。接触するなり大爆発を起こす。

(これなら――)

 爆風の中目を凝らすシュヴェリア。しかし――

「!? 馬鹿な!」

 シュロウガの外皮は貫通していなかった。

「我ノ勝ダ」

 その声でハッとしたシュヴェリア。魔術の爆風による煙幕が晴れると、そこにはシュロウガの腕に囲まれた自分がいた。

「シュヴェリア様!」

「シュヴェリア君!」

(まずい――!!)

 万事休す、シュヴェリアは終わりを覚悟した。自分に向かい進んで来るシュロウガの腕、仲間たちが悲鳴を上げるのが聞こえる。

(まさか、こんな形で――)

 最後のあがき、シュヴェリアがヴァルヴェロの指輪を外そうとした時だった。

「ダメぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 どこかから聞こえた叫びと銃声。それが――

「!?」

 シュロウガの腕を吹き飛ばし、その外皮を貫通する。

「!!」

 銃弾が数本の腕を弾き飛ばしたことで出来た死角、そこに逃げ込み、どうにか難を逃れるシュヴェリア。

(なんだ、一体何が起きた?)

 声の聞こえた方を見ると、クレハが銃を構えていた。そして、本人も何かに、驚いていた。

(まさか――)

 シュヴェリアがシュロウガを見ると、シュロウガの胸部を何かが貫通し、シュヴェリアたちの攻撃すら防いだ外皮から出血させていた。

「ドウイウコトダ、我ノ外皮ヲ貫通サセタノカ?」

 その程度のダメージではやはりビクともしないらしく、シュロウガは健在だ。しかし、異常に驚いている。それはそうだろう、シュヴェリアも訳が分からない。ただ、状況を考えるに、クレハの銃弾がシュロウガの外皮を貫いたようだ。

 何故、そんなことが、シュヴェリアが考えるより先に、シュロウガが動いた。

「女、何ヲシター!!」

 シュロウガの攻撃の矛先がクレハに向いた。

 まずい、すぐにシュロウガに攻撃を仕掛けるがビクともしない。ステラやカルナたちも攻撃してくれているが結果は同じだ。

「な、なんで!!」

 慌てて銃を撃つクレハだが今度は外皮を貫通することはない。弾は全てシュロウガの外皮に弾かれていた。

(まずい、シュロウガも頭に血が上っている、このままではクレハが――)

 ドクン、鼓動が聞こえた。よく知っている鼓動だ。――アクティムが目を覚まそうとしている。

(馬鹿な、私は部下に対し、アクティムを使用しようと考えているのか? そんなふざけた話が――)

 ドクン、鼓動が聞こえる。鼓動が見せる悪夢――クレハの死。

「くぅ――」

 シュヴェリアは背中に手を伸ばす。

(死ぬなよ! シュロウガ!!)

 シュヴェリアは叫んだ。

「起きよ、アクティム!!」

 ドクン!! 魔装アクティムが途方もない魔力を開放する。剣を両手で握り振りかぶる。

「吠えよ、アクティム!!」

 魔装アクティムが漆黒の魔力を放つ。膨大で強大な魔力それがクレハに迫るシュロウガの背後を取った。

「ギャァァァァアアアアア」

 シュロウガがとんでもない悲鳴を上げて吹き飛んだ、漆黒の魔力が直撃した背後の外皮は完全に消滅している。

「な、なんだ今の……」

 その場にいた全員の視線がシュヴェリアに向いた。シュヴェリアは素早く剣を背中に戻す。

「探索は終了だ、帰還する」

 静かに告げるシュヴェリア。

 え? と全員が声を上げた。

「いや、確かに終了だけど、あいつまだ生きてるよな、ここでトドメ刺しといた方が――」

 クロードに向かい歩くシュヴェリア。

 シュロウガに目をやる、動けないようだがまだ生きている。カエリウスならすぐに騒ぎに気付いて兵を送るはずだ。――まだ助かる。

「繰り返す、探索は終了だ。すぐに帰還する」

「いやだから――」

 食い下がるクロードの前に立ったシュヴェリアは、クロードの胸ぐらをつかみ持ち上げる。

「お、おい゛、ち゛ょ――」

「私の意見に従え、さもなくば殺す!」

 それまで見たこともない恐ろしい形相で、クロードに迫るシュヴェリア。

 その様子にその場にいた全員が言葉を失った。

 クロードが静かになったのを見ると、手を離す。クロードがドシャリと腰を落とした。

 すぐにその場を去る面々、クロードは納得いっていなかったのか最後までシュロウガの方を見ていた。しかし、あそこまで言ったシュヴェリアに逆らうつもりはなかったらしい。最終的には何もせずその場を後にした。

(済まぬ、シュロウガ……)

 シュヴェリアは全員その場を離れたのを確認し、シュロウガに一瞥しその場を後にした。

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