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果汁

「リニっ!」


 パラメータ閲覧で見つけたリニの元にたどり着いた時、全てが終わってしまっていた。


「シド。逃げてといったのに」

「その姿は……」

「醜いでしょう。シドには見られたくなかった」


 ポツンと一人佇むリニ。


 その周囲には、さらさらと砂になる途中の物がいくつも立っている。

 元、人間でモンスター化した者たちだろう。

 校外実習の時の特異個体モンスターのように、俺には見えない方法でリニがやったのだろう。


 いくつもの砂柱が崩れていくなか、端然と、しかしどこか寂しそうに佇むリニの姿。それはまるで、ゲームで終末が訪れた世界での物悲しい支配者のようにも見えるのだった。


 そんな幻想を見てしまったのは、リニ自身の姿が、ゲームの時の裏ボス状態に近くなっていたからだろう。


 その姿は確かに、一般的に言ったら醜いという人もいるかもしれない。

 人の姿を所々に残したまま、その体の所々が黒い鉱物のような物に変化していたのだ。


 真っ白な人の体に対して、その黒く光沢のある鉱物部分が、ひどく目をひくのは間違いない。


 体の末端にいくほど鉱物化は顕著で、特にその手は完全に鉱物と化していた。

 その真っ黒なリニの右手に、何かが握られている。


「それは、魔素暴走の基点?」

「いい目。そう、これが今回の原因」


 それは、一見、リンゴのような形をしていた。しかしよく見るとリニの手の中で宙に浮き、ゆっくりと回転している。


「どうするの」

「それ以上、近づかないで」


 一歩、踏み出したところで俺は足を止める。

 確かに、自身のステータスにも魔素暴走の兆候が現れ始めていた。これ以上、無策で近づくのはモンスター化してしまいそうだ。


「本当に、見られたくなかった」


 リニは少し悲しそうに呟くと、手にしたリンゴのようなものを頭上に掲げる。

 そして鉱物化した両手で、そのリンゴのようなものを握りつぶす。溢れ出す真っ赤な果汁。


 リニは上を向き喉を大きく晒すと、滴り始めた果汁をすするようして呑み込み始めた。

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