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【機人転生】 俺、伝説の種族だったの!?  作者: 新
機械な種族に転生
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4話 出会いは二度ある

――なんとか町には入れた。ちょっと一悶着あったけど、どうにかなった。


町の門の前にいた見張りの人たちに、可哀想な目半分、怪しむような目で見られたが、俺の哀愁ただよう顔を見て、「通ってよし。苦労したな」と言われて中に入ることに成功。思わず心の中でガッツポーズ。


ま、俺の心が少し傷ついたんだけどな。


そうそう、驚いたことにこの世界の人と言葉が通じた。というのもメアリー曰く、『機人族なのだから当たり前』だそうだ。

まだまだ知らないことがいっぱいだな。


「よし、とりあえず……」


……服屋はどこだぁ!?


町に入れたらまずは服屋と考えていた。もう腰布一枚はやだ。


そして飯屋だ。

コレは単純に腹が減ったからだ。以上。


「うん……あらためて見ると、恰好が酷すぎる」


我ながら当たり前のことだと思うが、服は人の英知の塊だな……布一枚とか人としてありえない。あ、水着はオッケーです。


周囲の目が痛いので、一刻も早く服を着たい。


よし、服屋があるか歩いてる通行人に聞いてみよう。かなり勇気がいるな。腰布一枚だから。


ああ、ちなみに町の中の様子だが、所謂西洋風の町並みといえばいいのか。中心の道の左右に建っている建物。見た感じ露店らしきものもあるみたいだ。そこで人がごった返しになっていた。




「あの、服屋ってどこにありますか?」

「あん?」


そこらへんを歩いてた髭面のごついおっさんに話しかけてみた。

最初こそ普通の顏で振り向いたが、俺の姿を見ると憐みの目を向けてくる。


……わかってるからそんな目で見ないでくれ。悲しくなる。


「……ここを真っ直ぐ行くと赤い屋根の露店があるだろ? それを左に曲がると見えてくるぞ。……あんちゃん、元気だしな」


髭面のおっさんが励ましの言葉と一緒に俺に何かを手渡してきた。


そしておっさんは「じゃあな」と言って離れていく。

渡されたものを確認すると、銀色の硬貨のようなものだった。


「……金だよな?」


どうやら俺の手に渡されたのはお金の様だった。

ちくしょう。お情けってやつか? 悲しくなるわ。


ってまてまて。そうだよ。金が無いと服が買えない。金がないと何も買えないのは世の心理。

流石にこの世界にも通過はあるはずだ。


と、なると……これって何円だろう? ああ、いや。日本円じゃないよな。単位はなんだ?


「……わからん」


……考えてもしょうがないな。こういうことはメアリーに聞くのが一番だ。


「メアリ~。これっていくらの価値があるんだ?」


俺は小声でメアリーを呼んだ。


流石に町中で普通にメアリーに話しかけると、俺の心が砕けてしまう。

主に周りの視線せいで。


現在の視線もかなり痛いのに、これ以上は耐えられない。俺の心はガラスなのだ。


さっさと服を買わねば精神崩壊する。


『はい。――スキャン完了。この世界で流通している通貨、銀貨です』


へぇ~。価値はわからないけど、銀貨っていうくらいだしそこそこな価値があるんだろう。

 あのおっさん、中々に太っ腹なんだな。


よし。そうとわかれば問題なし。

金も手に入れたし――お情けだけど――服屋の場所も聞いたし、レッツ買い物だ!


「俺は知らない事ばかりだから、いっぱいメアリーに頼らせてもらうぜ」


『はい。お任せください』


それから俺はおっさんが言っていた順に道を歩いていくと服屋らしきものが見えてきた。


看板がもう THE服屋! みたいな感じのマークが描かれていた。


多分メアリーがマッピング? してるだろうし次からは適当に歩いててもいけるな、うん。


さっさと服を買おう。そしてこの腰の布とはおさらばするんだ。


そう意気込み、俺は服屋の扉に手をかけた。


店内は中々こじゃれていて、綺麗だった。服を売ってる店なんだから清潔なのは当たり前だな。

高そうな服に安そうな服。派手な服に地味な服。色々な服があった。


入り口で立ち止まって店内をキョロキョロしていた俺に誰かが声をかけてくる。


「いらっしゃいませお客様! 本日はどのような理由でご来店を?」


声をかけてきたのは少女だった。さっきの言葉からすると店員なのだろう。

その店員は俺のつま先から頭を見て微妙な顏をしていた。


なんなんだよ、失礼だな……。俺の顏になんかついてんのか? ――確かに腰布一枚の変人ですけど。


「あの、銀貨一枚で買える……ズボンと服と靴ってある?」


そう、ズボンと靴だ。服だけ買っても意味はないのだ。

想像してくれ。俺が服だけ買ったとする。するとどうなる?

瞬く間に変態に早変わりだ。腰布がスカートっぽくなってかなりの変態にならないか?


……だから俺はズボンと服が買いたい。さっさとこの変態衣装とはおさらばしたいのだ。


「……チッ。銀貨一枚となるとあちらのセットになった商品がおススメですよ?」


えっ。舌打ちした!? 今舌打ちしましたよこの子!?

どういう教育してやがんだこの店は!

店員が客相手に舌打ちしていいと思ってんのか!?

……まぁ、こんな腰布だけの変人には舌打ちもしたくなるだろう。納得納得。ってんなわけあるかぁ!


……しかし、スルースルー。気にしないのが一番だ。


そう自分に言い聞かせながら、俺は店員が手で示したところに向かう。

そこは普通の布系の衣服と靴もちゃんと置いてあった。

手に取って触ってみるが特に悪くも良くもない普通の服とズボンだ。靴も簡単な出来栄えだった。揃って着ると、なんだかゲームの村人っぽい感じになりそうだ。



「あの、この三つセットで銀貨一枚?」

「はい、その通りです。お買い上げになりますか? 勿論買いますよね? ではその銀貨を頂戴いたしますね。丁度銀貨1枚です」


そう言って俺の手に握っていた銀貨をヒョイっと取られた。


な、なんかめちゃくちゃ強引なんだけど……。

買うつもりだったからいいけど、もうちょっと誠意あってもよくない?


不服な顔で俺は店を出ようとした瞬間。


「ありがとうございました~! ……もっとマシなもん着てこい三下が」


その言葉が聞こえたと同時に扉は閉まっていった。


「……!?」


おいぃぃぃ!? 小声で言ったのかもしれないけど俺にはハッキリ聞こえたぞ! 機人なめんな!

ちくしょう! あの店員いつか見返してやる! 覚えてろよ!

そんな三下みたいなことを心の中で叫んで俺は建物の影に走っていった。

そして数十秒後。


「よし。これで大分マシになったな。やっぱり服があると安心感が違うなぁ」

『おめでとうございますマスター』

「ありがとう。そんじゃ行くか」


…………どこへいくんだっけ?


グウウウゥ~……。

oh……。


「……腹減った」


思い出したと同時に大きな腹の虫が鳴いた。恥ずかしい。

俺の近くを通る人達は俺を憐れむ目で見てくる。

ダメだ。俺への精神攻撃は止まっていなかった!

このままだとマズい!


とりあえずつぎは飯屋だ。また通行人に尋ねてみるとするか……。


と、なんだか見覚えがある背中に俺は声をかけた。


「あの、食事が出来る場所ってどこか知ってますか?」

「ん、飯屋か……ってさっきのあんちゃんじゃねーか! ……おっ? 今度はちゃんと服着てんな」


俺が話しかけたのはさっきの親切な髭面のおっさんだった。


なんつー偶然だ。さっき離れていったけどこの辺まだ歩いてたのか。

そんなことを思い出してる途中に俺の腹の虫がまた鳴いた。


「うっ……そうかあんちゃん……。大丈夫だ、俺に任せろ!」


おっさんが涙ぐみながらそう言うと、いきなり俺の腕を掴んできた。


えっ。どこ連れてくの!?

おっさんは強引に俺を引っ張り歩かされる。そして辿り着いたのは大きな窓がついた店だった。


あっ……この店、美味そうな匂いがする。

ま、まさかおっさん……。


「俺のおごりだ。いっぱい食えよ!」


なんとおっさんは俺に食事を奢ってくれるらしい。

なんて親切で太っ腹なおっさんだ……。

俺が女の子なら惚れてたかもしれん。


あ、やっぱ今の撤回。流石にこの髭面には惚れん。 その場の勢いってやつだ。




「ほんとに食べていいんですか?」


俺はテーブルに並べられている料理に手はつけず、ちゃんとおっさんに確認する。

涎を垂らしながら言っても、説得力無いんだけどな。


「遠慮すんな! あんちゃん見てたらな、昔の事思いだしてよぉ。……まぁとりあえず食え! 金の事なら心配すんな! そこはなんとかなる!」


そう豪語していた。なら、遠慮せずに……


「いただきます!」


俺は手当たり次第に料理を口に入れていく。

見たことないパンにコンソメっぽい味のするスープ。あと見た目は厚いベーコンだけど味は牛のような肉などなど。どれも結構美味しい。俺のすきっ腹にじわじわと染み込んできた。


……多分俺がこの世界に来た時、既にエネルギーが少なかったんだろうな。だからあんなにも腹が減ってたんだ。きっとそうだ。だから俺は遠慮なく食べる。


うおお! 腹がいっぱいになるまで食ってやる!



一旦小休止という名の注文の追加をする。

俺のその様子におっさんは唖然としていた。


「……すげぇ量を食うなぁ、あんちゃんは」

「おっさんも……食べたらモグ、いいんじゃないか? モグ」


注文はすぐ終わり、食べるのを再開した。


「ああ、それじゃあ俺も食うか……ってほとんど食って無くなってるじゃねぇか!」

「あ、ごめん。おっさんの分残すの忘れてた」


思い出したかのようにそう口に出した俺。


ていうかいつのまにか馴れ馴れしくおっさんって言いながら話しかけちゃったよ。


……まぁいいか。こういう事気にしなさそうな人っぽいし。


「がっはっは! 気にすんな! 元々あんちゃんに食わせるために頼んだだけだしな! 追加でもっと頼んでるのは流石に驚くがよ!」


おっさんは豪快に笑うとそう言った。

ホントにいいおっさんだな。

この恩は絶対に返すぞ。


「けどあんちゃん。布一枚の無一文ってことは、ここへは!仕事でも探しに来た流民かなんかか?」


おっさんは俺にそう尋ねてきた。


うーん、なんて答えよう。

特に考えずにここに来ちゃったしな……。

いや、エネルギー補給と服を買うって理由があったんだけども。


でも、流石に無一文はまずいだろうな。これからも食事とかしないといけないし、寝るとこも確保しないといけない。

この町って宿はどこにあるんだろ? ……兎にも角にも、お金を稼がないとな。


おっと、あんまり黙ってると怪しまれるから適当に返すか。


「そうなんだよ。仕事探しに来たのはいいけど服は盗まれるし、金はないしで……それにお腹減っちゃってさ……。んでおっさんに出会った」

「そりゃ災難だったな……よく魔物に襲われなかったもんだ」


いや、出会いましたよゴブリンに。頭消しとばしてやったけど。


にしても、このおっさんには感謝しかないな。ありがとうおっさん。

……おっさんおっさんって失礼かな? 名前訊いとくか。


「気になったんだけど、おっさんの名前ってなに?」

「ああ、言ってなかったな。俺の名前はゼンだ。よろしくなあんちゃん」

「ゼン……。ゼンさんって呼んでも?」

「おう! かまわねぇ! ……でだなあんちゃん。仕事が見つからないなら、俺が紹介してやろうか?」


おっさんはどうやら救いの神みたいだ。最高。

どんどん恩が増えていくな。払いきれるのかコレ……。


「ゼンさんがいいって言うなら、紹介してほしいな」

「おっ! そうかそうか! なら先に会計済ますか。俺についてきてくれ」


そう言っておっさんは立ち上がると出口に向かった。

その途中おっさんが従業員にこんなことを言っているのが聞こえた。


「ここの支払いはギルド(・・・)に請求しといてくれ」


そう言った。……ギルドってなんだ?

おっさんの職場か? 請求ってことは会社かなんかか?

そんなことを考えている間にもおっさんは歩いていく。

その後を慌ててついていく。


おっさんの後をついていくこと五分。俺達は大きな建物の前で立っていた。


「えーっと、ここは?」

「あん? 冒険者ギルドを知らないのか?」


冒険者ギルド? なんだそれ。いや、友達に借りた小説にそんな名称が出てきてたような気が……。

まぁ、とりあえず適当に返しておこう。


「俺が住んでたとこにはなかった、かな」

「ギルドがないっつったら……寂れた村とかか? ……まぁなんでもいいな。いつまでも立ってないでいくぞあんちゃん!」


そう言ってからおっさんは俺をギルドの中は押し込んでいった。



誤字や脱字、おかしな部分は気づき次第修正します。


2019 十月五日 加筆や修正、改行をしました!

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