12話 暴走解除
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『――コアへのアクセスを開始。第一ブロックを強制解除。……第二ブロックと接触……解除』
バチリとスパークが一瞬だけ迸り、俺の手からこいつの頭に魔力が流れ込んでいるのが、不思議とわかった。なんだか、変な感覚だな。
『第三ブロックに接触。……解除、不可能――マスター、私のハッキングスペックでは第二ブロックまでしか辿り着けず……申し訳ございません』
「えっと、よくわかんないけどお疲れ?」
さっきからメアリーの声が頭に響いていたが、なにをしているかはサッパリだ。
いや、目的は情報の入手っていうのはわかってる。その過程の方法を俺が理解してないだけである。
『ですが、第二ブロックまで強制解除を行い、一部の権限を行使することが可能になりました』
「……? えーっと、情報の入手はできそうなのか?」
『メモリーが保存されている第三ブロックは掌握できませんでしたが、本体機能を弄る権限は掌握できました。ここで、私から一つ提案があるのですが……』
メアリーはそこで一度言葉を切った。……あぁ、俺の許可とか必要な感じか? 別に気にしなくてもいいのにな。
「その提案って言うのは?」
『はい――この機兵の機体状態はオーバーヒートと言われる、所謂……暴走状態であります』
「ふむ」
暴走……ね。
あの滅茶苦茶に叫んだり、がむしゃらな攻撃は暴走状態だったせいなのか?
『そして、その暴走状態を解除し、マスターとの対話を可能にします』
おお、そりゃ願ってもない事だ。
……けど、そう上手くいくんだろうか?
いや、別にメアリーのことを疑ってるわけではないんだけど……。
ドリル攻撃に、最後の自爆覚悟の爆破攻撃。さっきまでのコイツの行動を思い出すと、どうにもなぁ。
「うーん……」
『どういたしましょうか?』
「……まあ、物は試しって言うし……いっちょ対話してみるか」
どっちみち情報は絶対に必要になってくる。この機兵がなにか知っているのなら、どんな些細なことだって知る必要がある。
なんで俺がこの世界に転生してきたか……とかな。
『では、暴走状態を解除します。――コード【リベレイション】』
「ゲガクゲガガガガガガガ」
「うおっ」
さっきと同じようなスパークが手から放たれ、機兵の頭がガクガクと揺れだし、口から壊れた奇声を上げ始めた。
だ、だいじょうぶかコレ? なんか頭から煙が……。
「これ、ほんとに暴走を解除して――」
「――はっ! ここは……ここはどこだ!?」
「しゃ、喋ったぁー!?」
さっきまでの奇声とは違い、しっかりとした男性の声がその機兵の口から発声されていた。
こ、これならもしかして対話が……会話が可能なのでは!?
はい、無理そうです。
「貴様ああああ! 貴様が私の体を奪った盗人だなぁぁぁ!?」
「いやだから……はぁー……」
さっきから何度もこの問答の繰り返しだ。俺が何かを訊ねようとしても、今叫んでるこの言葉と似たようなことしか言わない。何度この頭を掴んでいる手で投げ捨てようかと思ったか。
流石の俺も、溜息しか出なかった。……どーすんだよコレ。つーか、これだと最初と言ってること変わらないぞ。
「黙っていないでなんとか言わんか! この、盗人がああああ!」
「いや、泥棒ってなんのことかわかんないんで、教えてほしいんですけど……」
「罪人がなにを言っている!! いいからその体を私に返せ!」
「…………」
――はぁ~~~……。スゥゥゥゥゥゥ……。
「――うっるせぇぇぇぇ!! さっきから盗人、盗人と同じことしか言えないのか! この、壊れたブリキ野郎が!」
「なん、なんだと!?」
「ふん、何度でも言ってやるよ! 口先だけのブリキ野郎!」
もう我慢の限界だ! なんにも知らないのに、口を開けば俺のことを盗人呼ばわり……俺の怒りも有頂天に達してきたぞ!
……こうなりゃ、こっちも言いたい放題言ってやるからな!
「まずアンタに聞きたいのは一つ! アンタは一体何者だ!? 答えねぇとアンタの頭、地面に叩きつけんぞ!」
そう言い放ちながら地面に向けて投擲の構えをとる。
「――む!? よくよく見れば私の仮の体がボロボロではないか! どういうことだ!?」
……なんだコイツ、今気づいたのか? ……どんだけ俺の事しか見えてないんだよ。
「アンタが暴走して襲ってきたから返り討ちにさせてもらった」
「なにィー? ……しかし、記憶にない。暴走状態……確かに、研究所を出てからの記憶がプツリと途切れて……」
今度は独り言かよ。ていうか、俺の質問に答えてねーし。
「おおーい。俺の質問に対しての答えはないっのかっ!」
「ぐっ! 視界が!? や、やめんか!」
イラついたのでぶんぶんと振り回してやった。はっはっは。どうだこの野郎。俺の怒りはこんなものじゃないが、これくらいで勘弁してやろう。
「で、アンタは何者だ?」
俺は再度問う。つぎ答えなかったら……地面に向かってボウリング玉みたいに転がしてやる。絶対だ。
「…………」
そうかい、だんまりか。
「地面とキスでもしてな!」
「まてまてまて! もういい! 話すから乱暴はやめろ!」
その言葉に腕の動きを止める。チッ……。
「……私の名は六道だ」
六道……六道? なんかどっかで聞いた気がするな……。
「……六道ね。んで、その六道さんはなんで俺の事を盗人なんて呼ぶんだ?」
「それは貴様が!――まて、投げようとするな!」
「えー? なんか叫ばれると投げたくなるんだよなぁ……」
つーか、投げたい。俺の怒りのボルテージはまだ治まってないし。
と、静かに怒りを滾らせていると六道と名乗る男はゆっくりとこう言った。
「そもそも、貴様が私の転生するはずだった体を奪わなければこんな……こんな事にはッ!」
「……なんだって?」
俺が転生を、奪った?
2019 十月五日 加筆と修正、改行などしました




