騒動の後で
アリシアもルジュールが軽く暴走し、シンが屋根に避難した日から一週間が経った。
どこもかしこも同じ話題で盛り上がっている。
「本当にデーモンがいたって話聞いたか?」
「俺もそれ聞いた。しかも人知れずに討伐されてたんだろ?」
「それが出来そうなパーティーは何も知らないって言ってるしな」
「管理部がきちんと出入りのチェックしていれば、真相が分かるのにな」
今、街の中で話題になっているのはシンが倒したダンジョンに突如出現したデーモンのことだ。イレギュラーなケースで出現したデーモンにアタフタしていたらいつの間にか誰かがそのデーモンを倒していたのだ。管理部の方も上と連絡を取っていたりと忙しそうにしている。
本来なら目立った被害も現れずにデーモンが討伐されたことに喜ぶべきなのだが、思わぬ方向で影響か出ている。
「デーモンが出現する階層が変わったって噂は本当なのかね?」
「だとしたら大問題だよな」
「迂闊にダンジョンに行けなくなっちまうよ」
「そろそろダンジョン卒業すっかな」
今回のイレギュラーが今後も起きないとは限らない。そういう考えからダンジョンから離れて通常の冒険者稼業に戻ろうとする人が増えてきている。
これは街にとって好ましくない状況である。ダンジョンがあることで冒険者を集め、冒険者が集まることでその分需要が増える。そのサイクルが金を回し、街を発展させることになる。しかし、今回の騒動でそのサイクルが狂い始めてきている。
結果としてデーモンが大きな被害を出すこと無く討伐されたのはよかったが街としてはデメリットを被ったためイーブンと言ったところか。
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「……ん、もう朝なのね」
一足先に起床したアリシアは少し離れた場所で眠っているシンを視界に捉える。一週間前に思わず自身の想いを打ち明けた相手。ルジュールの登場により感じた焦りとその場のテンションに任せてシンに思いの丈を打ち明けてしまった。
ちなみに未だ、シンからきちんとした返事は貰っていない。アリシアとしては告白した際にルジュールの邪魔が入ったがいい雰囲気になっていたことからシンにその気が無いなんてことは無いと思っているが、この頃はどうにも落ち着かない。聖女の称号を持っているといっても中身は普通の恋する乙女となんら変わりない。
そして、1つ大きく変わったことと言えばルジュールの存在だろう。一週間前、助けた彼女はシンに一目惚れしたと言って暴走していた。しかし、次の日には元騎士らしく紳士な態度で改めてシンに交際を申し込んでいた。シンはルジュールへの返事も未だに返していない。が、ルジュールは2人のダンジョン探索に付いてくるようになった。
最初はいい顔をしなかったアリシアとシンだが取り敢えず1回行ってみようということになった。その時に2人はルジュールの有能さを思い知ることになる。ルジュールは実力こそシンには到底及ばないが剣士としてはかなり上位の力量を持っており、安定した戦闘が出来ていた。
元騎士のため剣技も攻めるというよりは守ることに重点を置いたものであり、ルジュールの存在は2人にとって都合がよかった。今まではシンが攻めとアリシアの守りもどちらもしなければならなかったが、ルジュールが入ることでアリシアの守りをほとんど気にすること無く戦うことができるようになった。
ルジュールの参加によりダンジョン探索は加速的に進み、現在第55層まで踏破している。街の中でもトップパーティーとして知れ渡るようになっている。
そうこうしているとシンも目を覚ました。
「……アリシア起きてたんだ。おはよう」
「うん。おはようシン」
「ご飯食べたら今日もダンジョン?」
「もう少ししたらドラゴンと戦う適正レベルまで上がるからね。もう一踏ん張り頑張るよ」
「そっか。昇華したら本当に世界が変わるよ」
魔法レベルが5から6上がることを昇華という。この世界でおいて昇華は重要な意味を持っている。魔法レベルが5まで行く人はザラにいる。しかし、レベル6以上になった人はそうそういない。
昇華することで変わることは主に2つ。
1つは扱える魔力量が増える。これはその人が持つ魔力総量が変わるわけではない。魔法は注ぎ込む魔力を増やすことで威力はその分上がっていく。昇華することで注ぎ込むことができる量が増える。これを用いればレベル1魔法であるバレット系の魔法でもレベル4魔法のキャノン系の魔法に打ち勝つことができる。
2つ目はオリジナル魔法が作れるようになる。魔力の流れ、質、力をコントロールすることで自分だけのオリジナル魔法を作ることが可能となる。更にオリジナル魔法は使う魔力の割に強い威力を発揮する。
この2つの点により昇華することには多大な利益がある。なお昇華するには条件が課せられており、いくつか取得する方法があるがアリシアがしようとしているのは単独でドラゴンを討伐するというものだ。
アリシアがダンジョンにきた目的はドラゴンを討伐するのに十分なレベルになるまでに必要な経験値をダンジョンで効率的に稼ぐことだ。
アリシアとシンは朝ご飯を済ましていつも通りの集合場所へと向かう。ダンジョンから少し離れた噴水の前には燃えるような赤い髪をもつ、女性にしては長身で引き締まりながらも女性としての魅力も備えているスタイルをしているルジュールがいる。
「おはようアリシア、シン。今日も修行に勤しむとしよう」
今日もいつものようにダンジョンに籠る3人。
そんなこんなでアリシアはドラゴンと戦えるレベルに上がったのは一週間後だった。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
今後の投稿予定として、日曜日に1本。約5000文字ぐらいを目安にしていこうと考えています。
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