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この異世界冒険譚の主人公はオレじゃないだと?!  作者: 茶々丸ex
ダンジョン編
24/30

初めて

「キ、キスしない?」



「へ?」



アリシアが突然とんでもないことを提案してきた。



「アリシア、もしかしてお風呂でのぼせた?」



「そんなことないわよ。そ、それに勘違いしないで、私の言ってるキスは普通のキスとは違うものだから」



「普通のとは違うキス?」



「ほ、ほらシンのスキル」



「ああ、血盟契約のことか」



シンのスキル【血盟契約】は血を用いた契約をしたときにステータスに補正が付くようになるスキル。どうしてこのスキルが今回のことに関係あるかというと、



「もしかして【接吻循環】しようとしてるの?」



「それなら多分効果が高いと思って……」



【接吻循環】はお互いの唇に傷を付けてその傷を押し付けることによって血と共に魔力を交換することで魔力譲渡ができるようになる契約のこと。



さらにシンの【血盟契約】のレベルボーナスで用いる血の量が多いほどステータスの上昇率が高くなる。



「確かに【接吻循環】なら強くなれるし、魔力も共有できるからメリットは大きいけど……キ、キスをするんだよ?」



「わ、分かってるわ。大丈夫よ私は。むしろ……したい」



モゴモゴさせながらアリシアは強気な発言をする。後のほうはシンには聞き取れなかったが、



「けど立場ってもんがあるじゃないか」



「シンは私とキスするの……嫌なの?」



「それを言われたら凄く弱る」



「嫌……なの?」+上目遣い



「うっ、嫌じゃないよ。けどどうしてそこまでこだわるの?」



「……今は言えない。時期が来たら必ず言うから、待っててくれる?」



「分かった。そこまで言うならオレも覚悟を決めるよ。何よりオレはアリシアの従者だ。アリシアが決めたことには従うよ」



アリシアはナイフを鞄から取り出してシンの前に向き合って座る。



「ちなみに経験は?」



「無いに決まってるじゃない」



「え、えっと初めてっていうのはどうなの?」



「シンならいいわよ。私の初めて。シンはどうなの?」



「オレももちろん初めてだ」



「初めて同士ね。じゃ、じゃあ始めるわよ」



アリシアはナイフの刃を立てて自らの上唇と下唇に切り傷を付ける。桜色の小さな唇から鮮血が滲みでる。

シンはアリシアからナイフを受け取って同じように傷を付ける。



「シンから来て」



「そ、それじゃあ行くよ」



シンはそっとアリシアの肩に手をかける。顔をお互いに真っ赤にしながら2人はその距離を縮めていく。ついにはお互いの顔しか目にうつらないほど2人の距離は近くなる。



ドクンドクンと響く鼓動を押さえつけ、シンは意を決してアリシアと付けた傷に合わせるように唇を重ねた。



重ねたお互いの傷から血が巡る。シンの血と魔力がアリシアへ、アリシアの血と魔力がシンへと。体内で混ざり合う2つの血と魔力。





どれくらいの間唇を重ねていただろうか。10秒、30秒、もしかしたらそれよりもずっと長かったかもしれない。2人は同じタイミングで唇を離した。



「……ありがとう」



アリシアは未だ冷めない熱を顔と心に残しながら言った。



一方シンは



「オ、オレはお風呂入ってくるから」



かなりのヘタレっぷりを披露して逃げるようにお風呂へ駆け込んだ。というかこれ以上アリシアの顔を見ていたら己の理性が限界突破してしまうからだ。



取り残されたアリシアは



「ふふ、しっちゃった」



どこか満足げに唇に指先を当ててニコニコしていた。



落ち着いた後、それぞれのステータスを確認してところ、ちゃんと一段階パワーアップしていた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「いいか?絶対にオレより前にでるなよ」



「分かってるわ。もうそれ4回目よ」



「本当はミスリル製の防具で全身を包んで欲しいところなんだけど、流石にお金がかかりすぎる」



「当たり前よ!ていうかそんなの着けたら私動けないわ」



「よし、取り敢えずデーモンについての情報集めからだな」



シンはアリシアがデーモン討伐に付いてくることを渋々認めた。というか契約とはいえキスまでしてきたからには断る訳にはいかなかった。



2人はまずデーモンについて知る為に聞き込みをした。



集めた情報によると、デーモンは剛腕から生み出される強大な腕力と巨体に似合わぬ素早さで戦うらしい。知能はほぼないに等しく、人を襲って食べることにしか興味がないらしい。そのことからデーモンは「暴喰」と呼ばれることもある。



とにかく圧倒的な身体能力で襲ってくるデーモンは少なくとも│神銀ミスリル級の冒険者で無いと太刀打ちできないし、倒すとなれば少なくとも実力者が5、6人必要となる。



現在、ダンジョンの管理部は上層部と相談しているらしく、精鋭部隊は未だ編成されていない。となると、デーモンが本当にいれば犠牲者は増えるていくばかりだ。



シンはできればいないことを祈りながらアリシアとともにダンジョンに足を踏み入れた。



デーモンが出現したのはあの男の言っていることが正しければ第46層。デーモンは少しずつ上の階層にあがってくるので1日たった今は2、3層は移動しているかもしれない。2人は第40層からデーモンの捜索を始めることにした。



ダンジョンには5層ごとに入口が設置されている。過去に勇者パーティが第70層まで到達しているため、入口も第70層まで開いている。当然といえば当然だが第70層に入ろうとする馬鹿はいないし、現在第60層より深く入る人はいないらしい。管理部の使い魔が巡回するぐらいである。



2人は第40層への入口を通り、しばらくすると魔獣の群れとエンカウントする。第40層ではレベル40程度の魔獣が出てくる。ちなみにこれらの魔獣は訓練を重ねた熟練の兵士と同じぐらいの強さがある。



多種多様な魔獣が一斉に2人に襲いかかる。そこには連携の二文字は存在しないとばかりに真っ直ぐ向かってくる魔獣の姿があった。



例え熟練の兵士と同レベルの強さであってもシンとアリシアには大したことない。シンは急所を的確に貫き、アリシアは後方から範囲攻撃でダメージを稼いでいる。



特に苦労せずに魔獣の群れを蹴散らし、2人はデーモンの捜索を再開した。



第40層から第41層に下りようとしたときに、突如地面が振動した。



「これは……地震じゃないな」



3秒ほどで揺れは収まり、一安心したところだった。



「きゃあああああ!! 」



女の人の悲鳴がダンジョン内に響いた。先程の揺れと今の悲鳴が無関係ではないことに気づいた2人は急いで悲鳴の発生源へと向かった。


そこで見たのは、シンの3倍ぐらい大きい山羊の頭を持つ魔獣、デーモンに、今にもデーモンに殺されそうな赤髪の女性だった。

ここまで読んでくれてありがとうございます。


次は出来れば水曜日に、おそくても木曜日の夜にでも投稿します。


よければ評価等、感想お願いします。

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