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白み始めた神話たち  作者: gcoma
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安全な場所 誓いの声

4話目になります。


安全な場所にいてね。

約束だよ。

必ず、会いに行くから──。


 村の存亡は最初から大聖堂が握っていた。

 青年は7年ほど前から、珠人が大聖堂に仕えはじめたことをしっていた。離れた場所に位置する大聖堂から監視の目が向けられている段階で理解していた。

 青年は監視や敵意を気にしなかった。大聖堂に興味がなく、かかわるつもりもないからだ。珠人が威嚇や警戒の眼を第1審臨だいいちしんりんに向けても、青年が大聖堂を害することはない。気分を害することもない。珠人が護るたった1人もしらない。興味もない。青年は第1審臨の中央で、誰からも妨害されることなく静かに眠っていたかった。

 ──安全な場所にいてね。

 誰かの声がした。

 青年の中でささやく声は使聖でも使聖徒でもない。顔も性別も不明な誰かが、

 ──きみが争いとは無縁な毎日でありますように。

 祈りを届けた。

 魔物に祈る使聖や人はいない。

 ──お前は誰だ? なぜおれに?

 返事はない。

 声も消えた。

 1度きりだった。

 昼夜関係がない審臨のため白昼夢とも言えない。どれだけ目を閉じていても、青年は眠れなくなる日がある。

 寝ている場合ではない。

 第1審臨を守らなければ。

 安全な場所にいる。

 ──だから早く。

 言われたとおりに、安全な場所で、目立つところで青年は待っている。

 誰を待っているのか。

 なぜ待とうと思うのか。

 青年にはなにもわからない。

 わからないのに守らなければならない。

 声は泣いていた。

 ──泣かせたくなくて頑張っていたのに、結局は泣かせてしまった。

 浮かぶ言葉の羅列に、青年はわけもわからず地を叩きつけたくなる。空洞の臓器がざわめく日は、青年から眠りを奪う。だから青年は静かに待っている。大聖堂が消えようが、他の魔物が討伐されようが、青年にとって、本当にどうでもいいことだった。気に入った木の根元で惰眠を貪るほうが青年には大切だった。

 ミラトス大陸でもっとも安全な場所は大聖堂だと人は言うだろう。

 青年にとっては第1審臨こそがミラトス大陸で1番安心できる場所だった。

 ──お前が言ったから。

 お前とは誰だ?

 わからない。

 寝ていれば考えなくてすむ。

 第1審臨の居心地は悪くない。第2審臨に棲む存在は例外として、他の魔物は立ち入れない。入口を見つけたところで弾かれる。弾かれた存在がどこに飛ばされるのか青年にもわからない。

 使聖や使聖徒と出会うこともない。

 審臨に繋がりはない。

 他の審臨でなにがおきても、青年には関係がない。

 審臨は1つずつが独立している。

 他の審臨に棲まう魔物がどんなものであるか。おしゃべりな奴から聞かされている青年は熟知していた。どうでもよくても、一応はしっておきなさいと言われたからだ。

 青年はおしゃべりな奴に恩がある。

 だから一応の話を聞く。

 おしゃべりな奴はそんなものはないと冷ややかに言う。

 2人の関係は、人で言うところの師弟関係だ。

 おしゃべりな奴からは、第3審臨から第12審臨までの魔物の話は出てこない。

 青年も訊ねない。

 いまではない、そんな気がしたからだ。

 数の大きい審臨は、ミラトスの呪が施されていない。第12審臨からはミラトスがいた時代の魔物以外は弾かれる。数千創った審臨は好きに使って構わない。誰が立ち入ろうが関係がない。第12審臨に入れなかった魔物が根城にしては諍い、使聖に狩られて審臨ごと消滅させられる。審臨外の魔物は人を襲い、力を誇示する。使聖に返り討ちにされても、次からつぎに現れるのだと、おしゃべりな奴は呆れたように青年に話した。

「さっさと戻れ。おれが珠人に目をつけられる」

 すでにつけられているとは言わない。

 使聖と魔物の間に駆け引きや取引はない。討伐対象とみなせば珠人は第1審臨にやってくる。それだけの力がある。大聖堂に属しているが、彼らが護るべき存在は、珠人として生まれながらに定められた、

 ──たった1人のはずだ。

 大切な1人を傷つけないかぎり、珠人は動かない。他の使聖が魔物に手を出しても動かず、使聖徒の小競り合いや嫉妬、羨望、恐れ。すべての感情を向けられても振り返ることはない。

 その珠人は、その性質ゆえに、静の珠人と呼ばれている。孤高の存在にして、たった1人を守るために惜しげもなく命を使う。

 おしゃべりな奴はそう、青年に話した。

「きみは優しいから大丈夫だよ」

「おれの話をきいていたか?」

「心配してくれているんだよね」

「なんだそれは」

 青年の心底わからないという表情と声に、

「なんでもないよ」

 こどもは少しだけ落ちこんだ。

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