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聖槍の光、魔杖の夜  作者: 望月華月
1章 グレイスロウ
8/108

6話 ダンジョン調査

6/17少しだけ改稿しました。

 グレイスロウ大ダンジョンの入口前。

 石造りの巨大な門の前に四人の冒険者が並んでいた。ひんやりとした地下からの空気がゆるやかに流れ出してくる。その前でユリウスが仲間たちを見渡した。

「最終確認をしよう」

 落ち着いた声が静かに響く。

「基本的な陣形は、ライラ、俺、セラフィナ、リュカの順。戦闘になった場合、前衛は俺。次にリュカ。周囲の警戒をライラに任せる。セラフィナは後衛から援護だ。……ただし、状況によっては臨機応変に動く。ダンジョンでは決まった形に固執しすぎない方がいい」

 ライラが軽く肩をすくめる。

「了解」

「ダンジョン内ではぐれた場合は、全員安全地帯で待機。合流してから移動する。分かれて調査する場合は、俺とライラ。リュカとセラフィナの二人組で動く。必ず二人で行動すること」

 ユリウスは少しだけ表情を緩めた。

「五階層ごとのボス戦は全員で対処。そのあとに小休憩を取る。今日は進めるところまで進むつもりだ」

 

「最初の目標は三日以内に三十階層へ到達すること」

 

 視線が順番に三人へ向く。

「他に質問はあるか?」

 誰も口を開かなかった。ライラが元気よく手を振る。

「問題なし」

「俺も大丈夫」

 セラフィナは小さく頷くだけだった。それを確認して、ユリウスが言う。

「では行こう」

 四人は調査のためダンジョンへ足を踏み入れた。

 

 最初の十階層までの森林エリアと呼ばれる場所は、新人冒険者も潜れるような比較的安全な区域だったため、四人は二手に分かれて調査を進めることにした。

 ユリウスとライラが東側、リュカとセラフィナが西側だ。

 通路を進みながら、リュカは周囲を見回す。

「静かだな」

「……この辺りは採集依頼の多い場所だから」

 隣を歩くセラフィナが淡々と答えた。

 

 やがて五階層の中ボス、オーガと遭遇したが、あちらが一歩動くよりも速くユリウスの大剣が振り下ろされると、巨体が真っ二つになって崩れ落ちた。

 十階層のフロアボス、トレントキングも同様に四人の前では抵抗らしい抵抗もできずに終わった。そのまま彼らはさらに深く潜っていく。

 十一階層を越えると地下湖エリアと呼ばれる場所だ。モンスターの数が増え始めた。

 通路の奥から群れが現れ、リュカとセラフィナに次々と迫ってきた。

 セラフィナが一歩前へ出た。赤い宝石のついたロッドを掲げる。

「...下がって」

 リュカに短く告げる。呟くように詠唱した次の瞬間、一瞬で広がった炎が群れを包み込んでいき、消えた時にはモンスターの姿は跡形もなく消え、静寂が落ちた。

 リュカは目を丸くし、思わず呟いた。

「すごいな」

 セラフィナは特に反応する事なく先へ進む。

 

 十五階層の中ボスはバジリスクだったが、ここでもユリウスの一撃で終わった。

 十六階層から二十階層。四人の足取りは止まらない。

 二十階層の中ボス、リザードマンチーフが姿を現したときも同じだった。

「私が止める」

 ライラが地面に手を触れると土の魔法が発動する。魔物の足元が崩れ一瞬動きが止まった。

 その隙をユリウスが逃さず振り下ろされた大剣が確実に仕留め、それで戦闘は終わりだった。

 その日の進行は二十階層まで。ここまで、異常は一つもない。

 

 四人は二十一階層へ降り、安全地帯で足を止めた。野営の準備が始まる。火が起こされ、簡単な食事が作られ、やがて焚き火の周りに三人が集まった。

「ねぇ、ちょっと進むペース早すぎない?」

 ライラの言葉にリュカが首を傾げる。

「そうか?」

「私、こんな早くここまで来たことないよ。しかも調査しながらなのに」

「問題はない」

 ユリウスは落ち着いた様子で答えた。焚き火の火が静かに揺れる。

「深層に近づくほど、魔物も地形も厄介になる。早く進めるうちに進んでおくのは悪くない」

 ライラは少しだけ考えてから頷いた。

「まあ、それもそうか」

「今日は俺の出番ほとんどなかったな。怪我もなかったし、それが一番だけど」

「ヒーラーが暇なくらいがちょうどいいんじゃない?」

 そのやり取りを少し離れた場所からセラフィナは見ていた。焚き火の光がわずかに届く石壁にもたれ、輪の中には入らず三人の会話を静かに聞いているだけだった。

 

 翌日、二十一階層から先は遺跡エリアに変わった。石造りの柱や崩れた壁が続く。

 ここからは四人で行動する事に。現れる魔物も変わり、スケルトンやゴースト等の魔物が増えていく。

 だが、四人にとっては大きな問題にはならなかった。遭遇しても戦闘は短く終わり、そのまま順調に階層を進んでいった。

 二十九階層。

 通路の途中でライラが足を止めた。耳がぴくりと動く。

「……待って」

 小さな声。ユリウスがすぐに反応する。

「どうした」

 ライラは奥の暗闇を見つめていた。

「なんかおかしい……数が多すぎる」

 少しして、姿が見えた。

 スケルトンの群れ。通路の奥まで埋め尽くすほどの膨大な数だった。眉間に皺を寄せてユリウスが呟く。

「事前の情報とは違うな...」

 ライラが小さく舌打ちをする。

「これ、ちょっと多過ぎない?」

 さすがに三人の表情もわずかに変わった。

「……この先に下層に降りる階段がある。強いモンスターでは無いが数が多すぎるからな。油断するなよ」

 それぞれが武器に手をかけたその時、リュカが一歩前へ歩み出る。

 

「下がってて」

 

 リュカは聖槍を前に掲げて静かに目を閉じ魔法を詠唱すると、一瞬で広範囲に治癒魔法が広がり柔らかな光が空間を満たした。

 聖属性の光魔法は、アンデッド系のモンスターにとって致命的だ。光に触れたものから次々と形が崩れていき、光が消えたときにはスケルトンの群れは一体も残っていなかった。

 同時に、三人の体から疲労が消えている。

「ついでに回復しといた」

 そう言ってリュカは眉を下げて小さく口角をあげる。

「……今のは……範囲治癒魔法?」

「ちょっと待って、何それ」

 セラフィナも驚いたような顔でリュカを見ていた。

 

「……これ、あんまり使えること知られたくないんだ……だから、黙っててくれると助かる」

 

 頭をかきながらリュカは困ったように笑った。

 三人は顔を見合わせた。そしてユリウスが小さく笑う。

「了解した」

 

――三十階層。

 フロアボス、ミノタウロスとの戦闘は長引かなかった。四人の連携は既に揃っており、短い戦闘のあとボスは倒れた。ユリウスが剣を納める。

「今日はここまでにしよう。……予定より一日早く三十階層に到達できたのは大きい」

 誰も異論はなかった。

 

 二日目の進行、三十階層踏破。ただし――

 二十九階層で、異常あり。

爆速で進むパーティ(仮)


_________________________

※グレイスロウ大ダンジョンについて①

グレイスロウ大ダンジョンは普通のダンジョンと違い、階層ごとに環境が変わる。


1〜10階 森林エリア

11〜20階 地下湖エリア

21〜30階 遺跡エリア

31〜40階 砂漠エリア

41〜50階 古代都市跡

51〜60階 洞窟エリア

61〜63階層 深海エリア

64~65階層 火山エリア

66~70階層 禁域

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