表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖槍の光、魔杖の夜  作者: 望月華月
1章 グレイスロウ
6/127

4話後編 模擬戦

 訓練場の中央で、二人の男が向き合っていた。

 リュカは聖槍を軽く回し構える。対するユリウスは大剣を肩の高さに掲げ、静かに呼吸を整えていた。

 周囲にはセラフィナとライラ、そして腕を組んだグスタフが立っている。模擬戦とはいえ、空気は張り詰めていた。

 

「まぁ怪我しても俺が治すから」

 

 リュカが気軽な調子で言い、挑戦的な笑みを浮かべる。ユリウスはわずかに口角を上げた。

 

「あぁ。君のヒーラーとしての噂は聞いている。……うん。そうだな。手加減すると逆に怪我をしそうだ」

 

 肩を竦め、大剣を構え直した。その言葉にはどこか期待が込められていた。

 

 次の瞬間、仕掛けたのはリュカだった。踏み込みと同時に槍が一直線に突き出される。狙いは肩。速く、鋭い突きだった。

 だがユリウスの大剣がわずかに動く。槍の軌道を読み切ったように、刃が正確にそれを弾いた。

 

(反応が速い)

 

 リュカはすぐに次の突きを放つがそれも防がれる。さらにもう一撃。ユリウスは体勢を崩さない。

(やっぱりな)

 リュカは心の中で笑った。

 

(俺をただのヒーラーだと思ってたら、ここまで対応できない)

 

 何度か刃が交差するが互いに決定打はないまま、やがて二人は同時に距離を取った。

 ユリウスが静かに息を吐く。

「すごいな。防ぐので精一杯だ」

 槍の石づきを地面につき、リュカは眉をひそめた。

「嘘つくなよな……全部わかってたって顔してただろ」

 ユリウスは小さく笑うだけで否定はしない。

 

「次はこちらから行くぞ」

 

 大剣を下げ、空いている手を前へ向ける。水の魔力が集まり、凝縮されたそれは槍のように細く鋭い形を取り放たれた。水の槍は一直線にリュカへ向かった。  

 まるで貫通を目的とした弾丸のような速度だった。

 リュカは体をひねり、ぎりぎりでそれを避けるが、通り過ぎたはずの水の槍が軌道を変え、更に分散して背後から再び迫ってきた。

「追尾かよ!」

 リュカは舌打ちする。その瞬間聖槍の宝石が淡く光った。それを地面に突き立てると守護結界が展開される。

 水の槍は全て薄い魔力の壁に弾かれ、霧のように散った。

「あっ……ぶな!!」

 リュカはすぐさま前へ踏み出し、一気に距離を詰める。ユリウスは目を細めた。

「あれを弾く守護結界とは恐れ入る」

「いやさっきの普通に当たったらヤバいから!!」

 言葉を交わしながらも剣と槍は止まらない。刃が何度も交差する。

 その最中、ユリウスの視線がわずかに動いた。次の瞬間、リュカの足元の地面が崩れる。

「っ!」

 土魔法だった。足場が崩れリュカの体勢が揺れる。その隙を見逃さず、ユリウスの大剣が振り下ろされる。

 避けきれず、腕を切り裂かれ赤い血がにじむ。だがリュカは表情を変えない。

 

治癒(ヒール)

 

 淡い光が腕を包むと傷は瞬く間に塞がり、そして次の瞬間にはもう前へ出ていた。再び槍が突き出される。ユリウスの目がわずかに見開かれた。

「自己治療してすぐ突っ込むのか」

「油断してくれてたらこっちは助かったのにな!」

 まるで倒れても起き上がる兵士のように、リュカは止まらない。何度傷を受けても回復して前へ出る。ユリウスは剣でそれを受けながら思う。

(なるほど、実際見るのは初めてだが…これが戦場型のヒーラーか)



「えぇー…何あの追尾の魔法……あの速さで分散とかされたら避けれる気がしないんですけど。守護結界も展開が速すぎるし……上級冒険者は伊達じゃないって事ね……」

 ライラが眉をひそめ小さく声を漏らした。

 少し考えた様子のセラフィナが独り言のように呟いた。

「……すごく圧縮してあるんだ…水魔法の精度が高すぎる…」

 

 更に進む戦いを固唾を飲んで見ていたが、リュカが腕に傷を負った瞬間にユリウスに向かう姿に目を見張った。

「…リュカ、回復した瞬間また突っ込んだんだけど…ヤバ...」

 ライラが小さく声をあげた。グスタフはそれに腕を組んだまま答える。

「実戦慣れしてるな。後方で回復だけする神官とは違う」

 ライラは眉を上げる。

「いや、違うってレベルじゃないでしょ!動きがヒーラーじゃないじゃん!」

 グスタフは低く笑った。

「戦争帰りの連中には時々いる。自己治療しながら攻撃もする、倒れない前衛だ」 

 

 

 次の一撃で決着がつきそうだった。

 ユリウスの剣が振り下ろされ、リュカの槍が突き出される。

 互いの攻撃が同時に届くと思われたその瞬間。

 

「そこまで!!」

 

 訓練場に声が響いた。グスタフだった。

 ユリウスの剣はリュカの肩に触れる寸前で、リュカの槍はユリウスの足を貫く寸前、わずか数センチを残して止まっていた。

 沈黙が落ちる。グスタフが腕を組んだまま言った。


「互いの実力は、もう分かっただろう」

 

 二人はしばらく見つめ合い、やがて同時に武器を下ろした。ユリウスが口を開く。

「……なるほど。君は面白い戦い方をする」

 リュカは肩をすくめた。

「そりゃどうも」

 軽く笑うと、ユリウスも小さく笑った。

 

「ダンジョン調査開始は明後日の朝だ」

 グスタフが四人を見渡す。

「それまでに各自装備や持ち物を整えておけ」

 

 模擬戦を終え、それぞれ息をつく。

 調査に向けての話し合いをする為に四人は再び応接室へと足を向けた。

上級冒険者のヤバさが少しでも伝われば…


6/12少しだけ改稿しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ