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聖槍の光、魔杖の夜  作者: 望月華月
一章 グレイスロウ
5/8

4話前編 模擬戦

「模擬戦だと?」

 

 低く響く声で問い返したのはギルドマスター、グスタフだった。

 巨大な体を椅子に預け、鋭い視線を四人へ向けている。その圧力にも、ユリウスは落ち着いた様子で答えた。

「ええ。ダンジョン調査に向かう以上、互いの実力を把握しておく必要があります」

 静かな口調だったがその視線は冷静で、まるで状況を分析する研究者のようだ。

 グスタフは腕を組み、しばらく考えるように四人を見渡した。やがて口元がわずかに持ち上がる。

「いいだろう。訓練所の使用を許可しよう」

 

 ギルド裏手にある訓練所は、広い石造りの空間だった。武器訓練用の設備が整えられ、戦闘訓練を行うには十分な広さがある。その中央には、人型の岩のようなものが四体並んでいた。

「……ゴーレムか?」

 リュカが呟く。岩と金属で作られたそれは、関節部分に魔導装置が取り付けられていた。グスタフから説明があった。

「最近導入された魔法研究所製の模擬戦用ゴーレムだ」

 胸部を指さす。

「そこに停止ポイントがある。強い衝撃を与えれば無効化される仕組みだ」

 つまり、その部分を正確に叩けば戦闘不能になるということだ。ユリウスが興味深そうに観察している。

「なるほど。よく出来ている」

「はいはーい!」

 明るい声が響いた。ライラが手を挙げて前へ出る。

「私先やるわ!」

 自信たっぷりの笑みを浮かべている。

「四体同時でいいの?」

 グスタフが小さく頷いた。

「もちろん」

 ライラは肩をすくめる。

「中級だからってなめないでよ」

 その瞬間、ゴーレムが起動した。鈍い動きで四体が前進する。

 ライラは地面を軽く蹴った。足元の土が盛り上がる。

岩壁(アースウォール)――」

 突き出た岩の壁が、ゴーレムの進路を塞いだ。しかし一体がそれを押し破ってくる。

「おっと」

 ライラの体がふわりと浮く。風の魔法で体を軽く持ち上げ、そのまま空中で体勢を変えた。振り抜かれた鞭が空気を裂き、ゴーレムの腕に絡みつく。

「ほいっと!」

 腕を引くとゴーレムの体勢が崩れた。その隙を逃さずライラは懐へ踏み込む。剣が正確に停止ポイントを捉え、一体目の動きが止まる。

「次!」

 地面が再び盛り上がり、土の塊がゴーレムの足元を崩す。体勢を崩した瞬間、ライラは低い姿勢で滑り込み剣先を突き立てた。

 二体目が沈黙するがその後も動きは途切れない。風の魔法で体を加速させ、土で足場を作り、鞭で動きを封じる。そこへ迷いのない剣が振り下ろされる。

 戦闘というより、なだらかな舞踊のような動きだった。

 やがて四体すべてのゴーレムが停止する。ライラは剣を肩に担ぎ、振り返った。

「はい終了!」

 まるで軽い運動でも終えたかのような表情だった。ユリウスが腕を組む。

「……ふむ」

 冷静に観察していた視線が動く。

「かなり多彩な攻撃だな……様々な場面で活躍できそうだ」

「でしょ?」

 ライラは得意げに笑う。リュカは感心したように呟いた。

「ライラって強かったんだな……」

「今さら?」

 ライラが笑った。

 その隣で、セラフィナは少し驚いたような顔をしていた。

 

「次はお前だ」

 グスタフが言った。視線はセラフィナに向けられている。

「……私?」

「そうだ」

 ゴーレム四体が再び起動する。セラフィナは少しだけ考えた。

「……壊しても大丈夫?」

 グスタフは鼻を鳴らし、口角を上げて即答した。

「構わん。好きにやれ」

「じゃあ遠慮なく」

 風が静かに巻き上がった。セラフィナの体がゆっくりと浮かび上がる。

「浮いた!?」

 リュカが思わず声を上げる。風に揺られてフードが外れ、銀色の髪が広がった。整った顔がはっきりと見える。ライラの目が見開かれる。

(ちょっと待って……セラフィナ、めちゃくちゃ可愛いんだけど)

 そんなことを考えている間にも魔法は発動していた。

土弾(ストーンバレット)――」

 土の弾丸が一直線に飛び、ゴーレムの停止ポイントを正確に撃ち抜く。

 一体が停止。

水弾(ウォーターバレット)――」

 二体目の動きが止まる。

炎弾(ファイアバレット)――」

 三体目も沈黙する。

 そして、セラフィナの周囲に魔力が集まり始めた。

 赤い宝石が強く輝く。

炎乱(フレアバースト)――」

 放たれた炎は一瞬で膨れ上がり、残っていたゴーレムを包み込んだ。炎が消えた時四体すべてのゴーレムは動きを止め、訓練場に静寂が落ちる。ユリウスが呟いた。

「……四属性の魔法をあそこまで使いこなすとは」

 感嘆が混じる声だった。

「戦術の幅が広がるな」

 目が完全に輝いている。リュカは空中に浮かぶセラフィナを見上げた。

(セラフィナって……すごい魔法使いだったんだな……)

 そして、ふと思う。

(魔力暴走は……そのせいなのか?……でも……あんなに制御できているのに……)

 答えは出ない。セラフィナは静かに地面へ降り立った。

「終わり」

 いつも通りの落ち着いた声だった。

 

「じゃあ次、俺が行くわ」

 そう言ってリュカが前へ出る。

 

「ちょっと待ってくれ」

 

 声をかけたのはユリウスだった。

「君とは手合わせ願いたい」

「え?」

 リュカは振り返る。ユリウスは真剣な表情でこちらを見ていた。

「上級冒険者同士、実力を知るにはこれが早いからな」

「えぇー……」

 リュカは露骨に困った顔をする。

「許可する」

 グスタフが即答した。

「お前も気になっていただろう」

「まぁ……そうだけど」

 リュカは頭を掻く。

「本気じゃないよな?」

「もちろん模擬戦だ」

 ユリウスは静かに剣を抜いた。

「互いの力量を知るだけだ」

 その目は完全に戦う者の目だった。リュカはため息をつく。

「はぁ……なんでこうなるかな」

 しかし口元には、わずかな笑みが浮かんでいた。

それぞれの実力が少しでも分かってもらえれば...


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