人間達の町
…悪魔とは、怪異や魔物達の中でも特に強大な存在だ。人々が暮らす町や魔物達が暮らす森は、昔から悪魔に支配されていた。それによる恩恵と災厄を交互に受けながら人々と魔物達は暮らしていた。悪魔は人々と魔物達にとって畏怖の対象だった。ジュリはそんな悪魔の被害を受けた結果、傷ついてしまったのだ。
ジュリとレオナは、リアを人間達が暮らす町へ連れて行った。そこには、大勢の人々が集まって暮らしている。リアがこれだけ大勢の人間を見たのは初めてだ。
「魔物の森が近くにあるのにこんなに人々が暮らしているのですか?」
「私達が見張っているから、魔物達は襲っては来ないと思う。」
レオナは魔物達が人々を襲わないように見張っているというが、それでも悪魔までは見切れないと言っていた。
「あの森も、昔は人間が通っていたからね。」
町と森は隣合わせだったが、それぞれ異なる世界があった。お互いの世界を侵さないと決めてから、別々の道を歩んで来たのだろう。
悪魔に対抗する為に退治屋として立ち上がった人間が居る。その一人がブルーだ。彼は仲間達と共にかつてこの地に災いを与えていた強大な悪魔であるレッドを倒したのだ。
「この町は神に見放されたようでね。今も悪魔を神のように敬う人も居る。だが、ジュリのように悪魔による被害を受ける人々も居る。僕はそんな人を放ってはおけなくてね。退治屋になったんだ。」
ブルーはジュリの側でそう語った。ジュリはレオンと別れた後、悪魔に襲われ、その時にブルーに助けられたのだ。
「悪魔が居た頃は人々は怯えながら暮らしていた。森の魔物達もそうさ。だから、僕達がレッドを退治したんだよ。でもそのせいで他の悪魔もこの町や森に来てしまった…。」
「そうだったのですね…」
「お兄さんが悪魔と関わっているのは本当なのかい?」
ブルーはリアにそう聞くが、リアは首を振った。
「いえ…、私には何も分かりません…。」
「そっか、それなら無理に答える必要はないよ。レッドやジュリを襲ったレベッカ以外にもまだ悪魔は居るらしいからね。今も警戒しているんだ。」
ブルーはリアに優しくそう言った。
ブルーはリア達を自分達の家に招いた。ブルーが退治屋の仲間達と暮らしている。中は簡素な造りだったが、広々と使えるようになっている。
「そういえば私、ずっと魔物達と一緒に過ごしているけど、悪魔とどう違うのか知らないわ。」
「そっか、それならこの町に伝わる悪魔の話をしてあげよう。」
ブルーはそう言って三人に森と町に境目が無かった頃の話をした。リアは様々な物語を本で読んで知っていたが、この話は聞いた事がなかった。