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だから道具屋だって言ったでしょ!  作者: 朱巴
ローサリエ王国
14/20

13 優しい商人さん

ブクマ&お読みいただきありがとうございます。



 パウルさんから調理道具を借りて――と言っても鍋とお玉、ナイフだけだけど――、作業を進める。雉は半分使って残りはお昼に回そう。

 肉を捌きながら頭の中のレシピを検索するが、あの硬すぎるパンが主食だと考えると、ほぼスープしか選択肢がないのは如何なものか。


 朝はサッパリ味が良いだろうと、数種類のハーブと山菜、軽く塩胡椒だけのスープを作る。出汁はお肉から出るから充分です。


 煮込みも程好く、良い匂いがし始めた頃、眠っていた二人が目を覚ました。


「おはよーございまーす!」


 朝の挨拶は一日の始まりだから元気良くね!


「おはよう。なんだかとても良い匂いがするんだが……」


「すっげー腹減った……」


 そう言って起きた二人は鍋をガン見してます。いや、起きてたパウルさんもだったわ。ずっと匂いだけで我慢してたもんねぇ。涎零れそうですよ?


「皆さん、ご飯にしましょう!」


 器にスープを注いで各人に渡していく。パンはパウルさんが用意してくれました。


 スープを掬って口に入れる。

 うん、サッパリしてていい感じ。山菜の食感もいいし、お肉も硬すぎず軟らかすぎずで、食べごたえがあっていいね!


 味を確認しながら食べていたら、ふと、あまりにも静かな事に気付いた。顔を上げて三人を見ると、何故かスプーンを口に入れたまま目を見開いて固まっている。


 あれ? もしかして口に合わなかった?

 結構美味しく出来たと思うんだけど、こっちと味覚違うのかな?


 首を傾げていると、ハニークさんがピクリと動いたのを合図に、無言の三人が凄い勢いでスプーンを動かし始めた。

 鬼気迫る勢いに呆然としていると、三人は食べ終えたのかほぼ同時に動きを止める。そしてまた鍋に視線が行く。目がギラギラしてて怖いんだけど!?


「もう一杯貰っても良いだろうか?」


「ええ、どうぞ~。私はこれで充分なので、全部食べちゃってくれると助かります!」


 ラディムさんの問いに了承すると、三人が器を差し出してきた。その勢いにちょっとビクッとしちゃったよ!


 二杯目は流石に落ち着いたらしい。今度は味わって食べているのか、動きが大分ゆっくりになった。そうそう、ご飯は慌てて食べるモノじゃないんですよ~。

 マイペースに食べていたら、隣のラディムさんが大きな溜め息を吐いた。


「こんな美味いスープは初めてだよ……」


 美味しかったですか。お口に合って良かったです。でも初めては言い過ぎだと思いますよ?


「この草はなんだ? 香りもいいし、食感もいい」


 は? 草?

 ハニークさんや、もしかしてハーブや山菜知りませんでしたか!?

 え? 頷いてるけどパウルさんもなの!?


 普段の食生活が激しく気になるな! こりゃ町に着いたら要検証だね。




 あの後冒険者組が再度おかわりしてた。最終的にスープは一滴残らず無くなったので、後片付けが楽でした。全部食べて貰えるのは嬉しいよね!


「それにしても嬢ちゃん、あんな短時間で良く狩ってこれたよな」


「え、サーヤちゃんが肉を獲って来たのかい?」


「マジか? 凄えな!」


 食後の小休憩中、思い出したようにパウルさんが言ってきた。それに驚くラディムさんとハニークさん。どうやらパウルさんが獲ってきたと思っていたらしい。


 森に住んでた(設定になってる)んだから別に普通じゃないの?

 そう言うと納得してくれました。森で自給自足するなら狩りが出来ないと食事も儘ならないからね。

 肉大事。とっても大事。


「サーヤちゃんが良かったら、また作ってくれないかな」


「いいですよー。馬車に乗せて貰ってますし、少しでもお役に立てれば嬉しいです」


 ラディムさん、気に入ってくれたようで嬉しいです! 私もマズ飯は嫌なので勿論作りますとも!

 明日には到着予定なんだし、今夜の食事はちょっと豪華にしちゃおうかな♪





   ◇  ◇  ◇





 あれからすぐ出発して、私は地獄を味わった。

 幸いあの揺れでも馬車酔いはしなかったんだけど、お尻はめっちゃ痛かった!

 耐えきれなくてコッソリ回復魔法使っちゃったのは内緒。




 午前中もラディムさんが色々教えてくれました。


 話によると、この街道は国の主要道路なんで兵士が定期的に巡回しているらしい。だから魔物が少なくて動物が多かったんだね。

 夜営ポイントも幾つか作られてるから、更に安全みたい。昨日使った所もその一つ。

 たまに、ホントに極たまーにだけど、流れてきた野盗が出るんだそうな。規模の大きい野盗は出ないんだけどね。だから安全だとは言っても護衛は欠かせないんだって。




 お昼は朝の残りの雉肉に、乾燥させたハーブと塩を混ぜた自家製ハーブソルトを馴染ませてソテー。

 硬すぎるパンは、肉から出た油を染み込ませた後、蓋をして蒸し焼きにしてみた。水分が多いとべちゃべちゃになるので加減が難しかったけど、なんとかなって良かった。

 サラダ代わりにルッコラとクレソンを添えて完成。やっぱり野菜が足りない……。


 焼いたお肉は全部無くなりました。むしろ足りなそうな顔をされたけど、食べ過ぎだからね!? 塩分取りすぎちゃうからね!

 夜は沢山作るからそれまで待ってくださいな。




 肉肉しい昼食も終わり、引き続き馬車で移動中。


 なんと! お尻が痛くありませんよ!

 ラディムさんが昼食のお礼に、とクッション増し増しにしてくれました。やったね!

 これで教えて貰うアレコレがきちんと頭に入るだろう。今まで? た、多分半分くらいは残ってる、かな?


 夕食は頑張るつもりだし、狩りもするからお勉強は馬車に乗ってる間に終わらせないと。と言う事で、今後生活するにあたって一番重要な『お金』に関して聞いてみたいと思います。


「ラディムさん、質問です!」


「なんだい? サーヤちゃん」


「お金に付いて聞きたいです! 手持ちこれだけなんだけど、これで宿屋に泊まれますかね?」


 そう言いつつ鞄から所持金の銀貨七枚と銅貨三枚を出して、ラディムさんに見せた。


「サーヤちゃんがソラと一緒に泊まれる宿屋か。それなら知り合いの――ん? その銀貨、ちょっと見せてくれないかい?」


 あ、はい。幾らでも見てくださいな。

 手を出されたので一枚乗せてみる。


「うーん? これは、この国……いや、この大陸の通貨じゃないねぇ。これは何処で?」


「えっと、お爺ちゃんの遺品片付けてたら出てきたんだけど」


 はい嘘です。

 素直に千五百年前の貨幣なんて言えないよね。入手経路聞かれても困るし。


「そういえば、サーヤちゃんは身分証も持っていないんだったね? 身分証が無いと、町に入るのに銀貨一枚必要だから……」


 そう言いつつ、ラディムさんは自分のお財布から硬貨を出して見せてくれた。ほお、丸い硬貨の他に八角形の硬貨もあるんだ。


 説明によると、大体


  銅貨 =  百円

 大銅貨 =  千円(八角)

  銀貨 = 一万円

 大銀貨 = 十万円(八角)

  金貨 = 百万円


 になるのかな。


 金貨より上もあるけど、大銀貨以上は商人か高ランクの冒険者にでもならない限り、平民はそうそう目にする事もないとか。

 ちなみに宿屋は、安くて大銅貨一枚から高くて銀貨ニ枚の間。良心的な宿なら大銅貨五枚くらいで泊まれるらしい。


「ああ、商人ギルドなら他の大陸にも詳しいだろうし、そこで換金して貰えばいい。門を通る時の通行料は私が出そう」


「ええ!? 流石に悪いですよ! 馬車に乗せて貰って追加の護衛費まで出して貰ってるのに!」


 慌てて断ると頭ポンポンされました。


「子供が遠慮するもんじゃないよ。いいから小父さんに任せなさい。お礼なら美味しい手料理で貰ってるしね」


 そう言って、ウインク一つと撫で撫で追加。


 ふおおおおっ

 優しい! 優しすぎるよラディムさん!!


 ここまで言って貰って断るなんて出来ません!

 お言葉に甘えさせて頂きます!


 代わりに夕食は取って置きを出しますね!






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