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だから道具屋だって言ったでしょ!  作者: 朱巴
ローサリエ王国
15/20

14 ある意味止めでしたか?

ブクマ&お読みいただきありがとうございます。



 さて、本日の夜営地に到着しました。


 これから皆が夜営の準備をしている間にサクッと狩って、料理を作るつもり。


 ラディムさんも持ってるので隠す必要のなくなったインベントリから、弓と矢筒を出して装備完了。


「お、サーヤはインベントリ持ちだったのか?」


 む、ハニークさんは盗賊なだけあって目敏いですな。


「そうですよー。便利ですよねぇ」


「だなぁ。手荷物減らせるし便利だよな。くっそ俺も欲しかったぜ! インベントリ持ちは大概商人になっちまうんだよな」


 ふむ、インベントリは結構な数の人が持ってる祝福(ギフト)ってことでいいのかな? なら今後おおっぴらに使っても問題ないね!


 三人に手を振って、いざ森の中へ。ラディムさんは心配そうにしてたけど、大丈夫ですよ! お肉楽しみに待っててくださいな♪




 森に入って少し進んだ所で探索スキル発動。


 うーん、百メートル圏内に結構な数の動物がいるね。魔物はやっぱり近くにはいないんだ。

 探索の範囲を精密の百メートルに設定して、表示される名前を順に確認していく。

 鳥系が多いから卵も見つかるかな? お肉は朝と昼に食べたのでいりません。卵ください!


 はい、探してみたらやっぱりありました。

 巣には鶏より少し小さめで、うずらみたいな柄の入った卵が三つ。つなぎに使うだけなので一つだけ貰っちゃいます。ゴメンよ母鳥。


 その後も少しずつ移動しながら探索していくと鹿を発見した。……鹿かぁ。

 いくらなんでも大きすぎなので、見なかった事に。更に進むと今度は兎を発見。大きさを見ると、やっぱり私が知っている兎より倍はありそうだった。でも、あれなら丁度良さそう。

 そっと近づいて、茂みの隙間から覗いている急所を狙って、あっけなく狩り完了です。


 回収だけして処理は夜営地の近くでしたほうが良いかな? 今夜はちょっと手間を掛けるつもりなので、急いで料理に取り掛からないと!




「ただいまー!」


 夜営地に戻ると、頼んでおいた通りに焚き火の他に竈も設置されていた。今回はスープの他に肉を焼くつもりだったので、火元は多い方が便利だからね。


「サーヤちゃんお帰り、怪我はしてないかい?」


「おう、戻ったか! やっぱり早いな」


 ラディムさんとパウルさんがお出迎えしてくれました。ハニークさんは水を汲みに行ってくれたみたい。


「今日のお肉は兎ですよー」


 狩った兎を掲げると、二人とも驚いた顔になった。 あっれー? 別に普通の兎だよね?

 驚く意味が解らず首を傾げていると、先に戻ってきたらしいパウルさんが口を開いた。


「嬢ちゃん、それ、森兎だよな……」


「うん、そうだよ?」


 淡い茶色のふわふわな毛並みをした兎に視線を移して頷く。


「はー、凄いな。森兎は警戒心が強くて素早いから、並な猟師じゃ捕まえられないって聞いてたのになぁ」


 ラディムさんも頷いてるけど、そうなの?

 んー、猟師なら気配遮断のスキルくらい持ってるはずだけど。それとも『並み』な猟師さんは持ってないのかな?

 『並み』=ゲーム時代の『見習い』辺りなら解らなくもない。


 あっ、それより作業進めないと!

 まだまだ準備は終わってないのにボーッとしてちゃ駄目だね。さっき狩りに行く前にこっそり作った石のプレートも、まだ設置してないし。


「サーヤ、水汲んできたぞ!」


 ハニークさんが鍋と水袋ニつにいっぱいの水を汲んで戻ってきた。重いのにありがとうございます!


「私、解体してきちゃいますね! ハニークさん、お鍋はこっちに置いてください。水袋は一つ貰います」


「解体は俺がやろう。嬢ちゃんは他にもやることがあるんだろう?」


 慌てて行こうとしたら、パウルさんが申し出てくれました。わーい、助かります!


「俺は? 俺は何かねぇか?」


 ハニークさんも続けてお手伝いしてくれるんですね!

 待ちきれないのかな? でも残念! まだ暫く掛かるんですよ~。


「じゃ、そこの石の板の大きい方を竈の上に、小さい方はここにお願いします」


 私はその間に茸の下処理しちゃおう。軽く水洗いの後、ぬるま湯に塩を入れて五分ほど放置。

 今は予め乾燥させておいたナツメグを石でゴリゴリしてます。これが終る頃には解体も終るだろう。


「嬢ちゃん、肉はどうする?」


 と思ったらもう終ったみたい。流石冒険者!

 小さい方の石板の上に、まな板代わりの大きな葉を敷く。その上に置いて貰って、肉と骨に分けていく。骨は少しだけソラ用に貰って、残りは出汁を取るのに鍋の中に。ソラちゃん、生まれたばかりでも歯があるからか嬉しそうに齧ってるね! 可愛い♪


 お肉は周りでソワソワしてるハニークさんにミンチにしてもらおう。ナイフ使い慣れてるだろうし。

 お水は使い切っちゃったので今度はパウルさんに頼んだ。嬉々として手伝ってくれるけど、じっと待ってるのはそんなに嫌かい?


 戻ってきたパウルさんには更にユリ根の下処理を任せる。やっぱり見たことは無いみたいだけど、これなら簡単だから失敗しないでしょ。

 私はアクを取りながら茸の処理の続きですよ。再度軽く水洗いして石突きを落とす。適当な大きさにスライスしたら鍋に投入。


 少量のハーブを刻んで鍋に入れた所でミンチも終ったみたい。三分のニを容器に移して卵とナツメグ、塩胡椒を入れてコネコネします。残ったお肉は明日の朝食用に塩胡椒だけして、葉っぱに包んでインベントリにポイ!


 熱くなった石のプレートの上に、七つに分けて丸く形を整えたお肉をそっと乗せる。途端にジュワッとお肉の焼ける音と良い匂いが辺りに漂った。


 気づけばさっきまで雑談してた三人は無言でガン見。ソラは嬉しそうに尻尾振ってる。ん? 食べたいのかな?


 良い感じに焼けたところでひっくり返して、もう片面も焼いていく。後は火力を落として葉っぱで蓋をして蒸し焼きに。最後にユリ根を鍋に入れれば丁度良いタイミングで出来上がるだろう。


 ゴクリ、と。

 誰かの喉が鳴る音で視線を上げると、そこには飢えた獣がいた……。ちょっ、怖いですって!!

 ハニークさんなんて涎垂らしてるし! 垂らしそう通り越してるし!!


「えーと。そろそろ出来上がるのでお皿くださ……い」


 言い終わる前に凄い速さでお皿が目の前に。いや、だから怖いからね!?


 お皿にお肉、器にスープを注ぎ、パンを渡せば後は食べるだけです。


「どうぞ、食べてくださいな!」


 私の言葉で三人が一斉にスプーンを動かした。

 一体どれだけ飢えていたのかと聞きたくなるくらいの食べっぷり。……あれ? ちゃんとお昼食べたよね?

 思わず乾いた笑いが込み上げてきそうになったけど、なんとか堪えてソラと一緒にのんびり食べることにした。アレは関わっちゃイケナイ。私は何も見なかった。


 取り敢えず一巡目は終了。前回と同様ならお代わりで落ち着くでしょう。出来れば初めから落ち着いて欲しいんだけどね。


「この肉料理はとても美味しいね。私は今まで結構色々な場所に行ったが、こんな料理があるのは知らなかったよ。良かったら名前を教えてくれないかな?」


 お、早速ラディムさんが正気に戻った模様。


「だよなぁ! 見た目は固そうなのに、食ったらやらけーし汁気もたっぷりだ!」


 ハニークさんも気に入ってくれたみたい。ミンチ作り手伝ってくれた分、余計にそう感じるのかもね?


「それはハンバーグって言う料理ですね。今日は兎だったけど、他のお肉でも作れますよ~」


 本当は玉ねぎも入れたかったんだけどなぁ。まぁ今回は無かったからミート百%だったけど。あ、ちなみに玉ねぎは生入れ派です!


「ハンバーグ?も旨かったが、こっちのスープが凄いな。キノコの旨味もあるが、なんて言うんだ? コクがあって今まで食べた事がない味だ。それにこの白い花弁みたいなヤツ、イモみたいな食感で面白い」


 ふむ、パウルさんはスープが良かったですか。どちらかというとメインがスープなので嬉しいです!

 ユリ根はホクホクしててお芋みたいだよね。私はマッシュがオススメかな!


「スープは骨から出汁を取ってるからね~。白いのはユリ根って言って花の根っ子?茎かな? そんなとこだよ」


 説明難しいなぁ。まぁ大体でいっか。


「それにしても、サーヤちゃんは本当に料理上手だねぇ。朝のスープも美味しいと思ったけれど、このスープはそれ以上だ。こんな可愛い子の美味しい手料理が食べられるなんて、私たちは幸運だね」


 二杯目のスープを飲みきったラディムさんがニコニコ笑ってそう言ってくれた。料理は好きだから誉められるのは嬉しいな。ありがとうございます!

 でも空になった器を悲しそうに見て溜め息付くのは止めてください。お代わりまだあるから!


 作った料理も全て無くなり――無くなったんですよ、朝よりも大量に作ったのに! いや~ビックリした。――少々お腹も落ち着いてきたので、本日最後の取って置きを出したいと思います!


「ちょっと甘い物食べたくなっちゃったんだけど、良かったら果物食べませんか?」


 男の人は甘味嫌いな人もいるから、ちゃんと聞かないとね。


「おや、甘い物は好きだよ。頂こうかな」


「俺も貰おう」


「食う!」


 三人共大丈夫なようで何よりです。これは大量に食べる物じゃないので二つも剥けばいいかな?


「へえ、また見たことない果物だな」


 剥いてる手元を覗き込んで首を傾げるパウルさん。そうだろうね、私も売ってるの見たことないや。


「香りもいいものだね」


 ラディムさん流石です。完熟するともっと香り高くなるんですよ!


 人数分に切り分けて、早速頂きます!

 一切れ口の中に入れて、ゆっくり噛む。シャリッとした梨のような歯ごたえに溢れる果汁。しっかりとした甘みを感じるのに、飲み込んでしまえば後を引く事もない。プレイヤーの間でも幻と言われた味が今ここに! これぞ至宝! もう頬っぺた落ちちゃいそう!

 あ、ソラも食べる? 半分こしようね!


 そして固まる三人。今日何度目ですか?


「……こ、れは、また」


 ほう、と溜め息をついてラディムさんご帰還です。

 うんうん。私も初めて食べた時は言葉が出なかったよ!


「あり得ねぇ……なんだこれ」


 ハニークさんもお帰りなさい。あり得てますよー。ちゃんと果物ですよ?


「…………。」


 ありゃ、パウルさん戻ってこれませんか?

 え、大丈夫? 息止まってない? 天国行っちゃった?

 ほら、ちゃんと息しよ!? ヒッヒッフーって!


 ちょっとゴタゴタしたけど、なんとか気を取り直して皆さん完食です。もうっ一時はどうなるかと思ったわ。


「サーヤちゃん、あの果物は一体……?」


 甘味の余韻に浸っていたら、ラディムから質問を頂きました。ですよねー。やっぱり気になるよね。


「あれはね、宝果桃って言うんですよー。もうすっっごく美味しいですよね!」


 ホント、何年でも探し続けたくなるくらいの、正に宝物のような果物だよね!


 そう言ったらまた固まったよ!

 て言うか震えてる? あれ、顔色も変だし汗も凄いけど大丈夫!?


「……嘘だろ? はは」


「マジかよー。あれで俺の稼ぎの半年分とか……」


 う、うわぁ……。

 パウルさんは虚ろに笑ってるし、ハニークさんはずっとブツブツ言ってるし……。べ、別に幻覚とかの状態異常効果なんてなかったよね? それともNPCにはそんな効果あるとか!?


「さ、サーヤちゃん、驚かないでね。実は――」




 あれからラディムさんに皆が固まった訳とか、まぁ色々聞きました。どうやら宝果桃は貴族の間でも『幻の果物』と言われているらしく、超高額で取引されているとか。ちなみに一個で金貨一枚から、らしい。えーっと、私のインベントリにはまだ六十個以上入っておりますが? 最低価格でも六千万相当かい。一生とまではいかないけど、数十年は遊んで暮らせる額ですね!

 ……うん、封印しよう! そうしよう!

 もう二度と人前では出さないように気をつけます。だからそんな怖い顔しないでくださーい!





 そんなこんなでトラブルはあったけど、概ね楽しい夕食は過ぎていったのだった。


 あ、皆さん精神的疲労が半端なかったらしく、気絶するように眠ってしまったので、今日の夜番は私が勤めさせて頂きますよ!

 私? 全然大丈夫ですが?

 暇なんで内職でもしながらのんびり過ごそうと思います。


 どうかゆっくり休んでくたさいな。

 では、お休みなさい。






書いてて自爆しました……。お腹すいた(泣)


――――――――――――――――――――


捕捉です。


植物の名前は一部の特殊な素材(創作含む)以外は日本仕様になっています。

例】

通常 ユリ根・ナツメグ 等

特殊 枇杷 → チガの実 等

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