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音芸神話 - yukito's side story -  作者: 七海 雪兎
第 章 -reconstruction-
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equality:Narcissus At Oasis -Ekho At Ruin Mix- / wac


灰色の粒子に包まれた木。

私はこの木を忘れることが出来ない。

かつては青く染まり、そして白い世界で朽ちていった記憶。


ここは、私と彼の分岐点。






「……ごめんね」


涙があふれ出す。

ずっと、ずっと我慢していた涙。

一度流れ出したその衝動は、もう止めることなど出来やしない。


私とあなたの春は、ここでお終いなの。


涙が二人の頬を伝う。

彼が何かを口にするけれど、私の耳にはもう伝わって来なかった。


さようなら。


その言葉もきっと、彼の耳には届かなかった。






太陽が木の葉をすり抜けて私を射抜く。

その光も灰色に染まっていて、私には眩しさを感じることはなかった。

街を見渡せばそこにかつての面影はなく、シンと静まり返った建造物がただ立ち並ぶのみ。

生前想像していた"あの世"と言うものは、こんなにも寂しいものだっただろうか。

こんなにも、悲しいものだっただろうか。


死にたくなんてなかった。

誰だってそうだろう。

でも死ななくてはならなかった。

人生とはそういうものなんだと、私は理解する。


何千何万と溢れる死者の山の中、こうして一人で立っているのは何とも不思議な感じがする。

きっと一人一人こうして、それぞれの世界へと閉じこもっているのだろう。


穏やかな風を感じながら、私は丘を下る。

すれ違う並木からいつかの声が聞こえてくるようで、何度も何度も立ち止まっては振り返る。

未練、執着、後悔。

人だからこそ持てたその感情が、今私の心に呼びかけてくる。

どうしようもないからこそ、やつらは姿形をはっきりと浮かばせる。


ねぇ、どうして私だったのかな。


君に問う。


もっと、もっと、もっと一緒にいたかった。


君に乞う。


でも、みんなそうだったんだ。


君に説く。


特別じゃないから。

私も、あなたも。

特別じゃないから。

誰しもが。


選ばれて当然。

選ばれなくて当然。


あなたの手を掴みたくて、私は右手を差し出した。

恥ずかしそうに右手を握るあなたの影。

私の右手は空を掴む。

もう涙は流れない。

それは生者の特権だ。

私に出来ることは、あなたを想うことだけ。


この世界で、ずっと一人で。


退屈じゃないよ。

寂しいけれど。




麓に辿り着いた。

そこにはかつての木が、灰色の葉をなびかせて悠然と立っている。

風に揺れる髪を掻き分けながら、私は沈黙し続ける街を見下ろした。











……おやすみなさい。

私はどうも、この季節は眠るのが好きみたいなの。

ほら、春眠暁を覚えずって言うじゃない?

……違ったかな。


……うん、それじゃ、おやすみなさい。




傍らで眠るあなたの頭を、起こさないようにそっと撫でる。

その手は既に、灰色に染まっていた。


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