56.クラン獄楽寺①
取手ダンジョン踏破から数日後。寮には卒業したての若鳥が揃ってた。
智ら【桜前線】【ダンジョン野郎Aチーム】【ポニー】に成田君のパーティ【リーダーズ】と昭島ちゃん、立川ちゃん、三鷹ちゃん、羽村ちゃん、青梅ちゃんの女の子5人のパーティ【カチューシャ】だ。新たに【リーダーズ】と【カチューシャ】をクランに入れる。
3+5+4+5+5で22名。アイアンビューティーに入ってる寄居ちゃんらが3名。卒業生は27名で、残りのふたりは先輩のパーティへ入ったらしく、分裂して残された男子が成田君たちと合流して【リーダーズ】になったんだって。
「問題ありません、僕らとやりましょう」
と言ったらしい。成田君らしいね。
その他に俺、京子ちゃんのハンターとクラン運営として瀬奈さん京香さん葉介さん北国分さん涼子さんの32名だ。ほぼほぼギルドとかぶってるけどクランも経営しないとだからさ。
大所帯になったもんだ。
「はーい、じゃあ説明の前に、改めてわたしたちの紹介ねー。瀬奈でーす。営業になるのかしらー。育児で忙しいかもだけどー」
「寺のメイドさんの京香です。鑑定経理もろもろです」
「頼りないギルド長兼クランリーダーの守です」
「ようちゃんの兄で葉介です。法務経理他です」
「き、北国分ですぅ……鑑定やってますぅ」
「オレだぜ!」
「この子の母で涼子さ。いまのところ寮の管理が仕事ってとこかねぇ」
そのほかに日比谷に4人いるけど、こっちに来ることは少ないからその時でいいかな。
おっと忘れちゃいけない零士くんだ。
「みなも知ってる師匠です。ギルドにもクランにも所属はしてないけど師匠です。いいね?」
表の名簿には出せないんだもん。
「……師匠と呼んでくれ」
ショタ形態の零士くんだけど、ここにいる子は見慣れてるはず。うちに来た時にちょこちょこ見かけてるし。
ここで注意をば。
「怒らせると一番怖い人だからねー」
「俺は怒らんぞ? お前の方があっさりブチギレるだろう」
「あいたッ」
デコピンしなくっても。
「えっと師匠のことは内密に。ばらしたらお尻ぺんぺんだからね」
閻魔さまの前に引っ立てちゃうぞ?
「守さんのおしりペンペンはガチでやべえからな」
「剥かれて晒されるし」
「クラン解雇通知だしな」
「実質ハンター廃業だぞ」
なんかざわついてるぞ。
「何もしなけりゃ何もないよー」
悪評をばらまかないでほしいなー。
「クランとしては、みんなは寺のダンジョンにつきっきりってことはなくって、逆にここでお金を稼いで各地でいろいろ経験して欲しいなって思ってる」
「はい、ですがギルドから納品の依頼はあります」
京香さんが挙手した。
「現在寺には複数のダンジョンがあり、先般佐渡島ダンジョンも加わりました。そこの魔物であるスライムのドロップ品が医療業界では必要とされているので、定期的に納品できる方はお願いしたいです。その際はラビットフットを持たせますのでダンジョンへ入る前に教えてください」
「あとー、日比谷のワイバーンと佐渡島のドラゴスライムのドロップ品の【飛翔】の魔法書もねー、こっちは数が多いからぼちぼち集めてほしーかなーって」
京香さんに続いて瀬奈さんも説明した。しゅっと成田君の手が上がる。
「それは買取ってことですか?」
「流通している金額よりは安いですが買取になります。その人の収入になります」
「そもそもクランに所属するとメリットとはなんでしょう」
「それは、葉介さんお願いします」
「承りました」
法律関係なので葉介さんにボールが渡った。葉子ちゃんが嬉しさでニパッとニコニコだ。心の中は「スケ兄カッコイイ」で埋まってるはず。
「その、ハンターは基本的に個人事業主です。稼ぐ以上税金がかかってきますが、日本は800万円を超えると社会保険料が大きくなる仕組みになっています。寺のダンジョンでは高確率でドロップ品が入手可能で、必然的に稼ぎは多くなります。そこにいる美奈子さんを参考に算出すると、みなさんでも800万円は半年ほどで稼げてしまう結果になっています」
「おいおいまじか」
「そんなに!?」
葉介さんの説明にざわつき始める。そりゃ働き始めてすぐにそんな額が?って思うよね。
「さ、参考までに、Aチームの5人合算ではありますが、現在で2000万円を超えています。ポニーも同じような感じとなっています。この後説明しますが、ドロップ品は基本的にはパーティ単位での入手とみなしますので、内部での分配はパーティで決めてください」
葉介さんの説明にAチームが顔を見あう。
「口座の確認なんてしてねえなそういや」
「分けるって言われてもな」
「分け方なんて、等分じゃねーの?」
「5人で協力して倒してるわけだしな」
「それな」
Aチームは均等らしい。同じくポニーも均等でいいと回答がある。
「えっと、ラビットフットが手に入ってからみなさんでもポーションや魔法書を持ち帰ってきていますので、それくらいはすぐです。えっと、後で収支をまとめた資料を各パーティに配りますね」
葉介さんも人前での慣れない説明だけど弁護士になるならこれもできるようにならないとね。
ちなみにドロップ品はハンター→クラン→ギルドに流れていく。クランの運営費はハンターから買い取った金額とギルドへの販売価格の差で賄う。
というのが一般的らしいけど、実際は俺の稼ぎですべてがまかなえてしまうので各パーティ名義で積み立てられてるのは内緒だ。
「話は戻りますが、800万円を超えると法人化した方が得なのですが、それはみなさんが大変だと思うので、税務処理はクランで一括処理します。会社に就職したと考えると早いかもしれません。ドロップ品は歩合報酬扱いですかね」
「うちのダンジョンからのドロップ品が全国のハンターやみなさんの後輩を支えている部分もありますので、よろしくお願いします」
葉介さんの説明に続いて京香さんがよろしくと頭を下げた。
「なんとなくですが責任重大なのは理解しました。ありがとうございます」
成田君の顔は引きつってた。
「ワイバーンもドラゴスライムもAチームとポニーならいけるがリーダーズとカチューシャは俺が付き添って倒し慣れてからにしてくれ」
「「「はい!」」」
あいつらは空を飛ぶしランクもそれなりだしね。サンダーとかを覚えてもらった方が戦いやすいかな。
「俺らには来てくれないんすか?」
「お前らは普通に倒せるだろうが」
「「「「「えーー」」」」」
Aチームががっくりしてる。
「あと、寮はあるけど住む住まないはお任せするよ。葉介さん葉子ちゃんは基本通いだし、みんなも実家はあるしさ。そのあたりもパーティで話し合ってね」
通いでも住み込みでもやりやすい方でと補足しといた。
完全に寮に住んでるのは美奈子ちゃんと多賀城親子と北国分さんだけなんだよね。零士くんは母屋だし、智は家族だから分家だし、みんな実家に帰ったりここに泊まったりばらばらだ。それでいいと思う。そのための寮だしさ。
その後は「どうするー」とか「まずはレベル上げからー」なんて声が聞こえてる。みんなで話し合ってねー。




