50.入学式と佐渡島スタンピード⑨
離れたところにいるヘリからも陸自の人らが飛び出している。
「ドラゴスライムを排除しつつ地上へ降りることを最優先で」
京香さんから指示が飛ぶ。
「ご武運を!」
ヘリの中から隊員が敬礼してきた。
「行ってきます!」
京香さんを支える腕に力を入れ、地上へ向かって降下を開始した。
「ドラゴスライムが寄ってきますが、あっちの方に行ってしまいそうです」
「じゃあこっちに来てもらおうか」
収納してあったファイヤーボール10発を景気づけにぶっ放す。
ドドドドドと紅蓮の花火を咲かせてやれば、はっきり敵と認識したのか、朱色のドラゴスライムが俺を目指して飛んでくる。いいぞいいぞ。
「【鎮魂の鐘】!」
蒼い空に荘厳な鐘の音が響き渡ると迫って来ていたドラゴスライムが急に墜落していく。
「折破摧伏!」
速度を上げ、墜落していくドラゴスライムを追う。俺の方が速度が上だ。
追い抜きざまに投網をひっかけて収納する。
「うりゃぁぁ!」
離れたところでは千葉君が速度を上げてドラゴスライムに突っ込み剣で一刀両断にする。違う場所では館山君がオーガのこん棒でドラゴスライムを粉砕した。
「よっし! 全力でやれば斬れるぞ!」
「いけるいける!」
ふたりに刺激された残りの3人も墜落中のドラゴスライムを攻撃、撃破していく。
「地面が近い」
500メートルなんて時速60キロで進めばすぐだ。減速しつつスライムがひしめく地上に向かってファイヤーボールを乱打した。爆炎が晴れた後に、焼けた土がむき出しの空間に着地、右に吹雪の、左に炎のブレスを放射して周囲のスライムを駆逐する。収納してある車両を取り出す場所の確保が必要だ。
あんまりやるとフレンドリーファイヤーになるからここでやめておく。
「【駆け込み寺】!」
5メートル四方の寺が出現する。
橋頭保を確保し、京香さんを降ろす。固定してたベルトは力で引きちぎっちゃった。配信機材を出せば京香さんがセットを開始する。
飛行船の母機が浮かび、ドローン10機が空に浮かんだ。
「墜落中の魔物は全部倒しました!」
Aチームの5人も次いで降りてきた。地上には一緒に降下した隊員と三条さんの姿もある。
「まずはこのあたりのスライムを掃除して!」
「了解!」
「おっしゃ次は地上だぜ!」
「気合入れてけ!」
「ケガする間抜けはいねーよなぁ?」
一宮君、煽らないで!
Aチームの5人が散っていくとドローン5機もあとを追いかけていった。残った5機のうち1機は俺の頭上にいて、4機は忙しなく動いてる陸自の人らの頭上にいた。
俺は駆け込み寺から出てバイクやらトラックやら収納したものをボンボン出していく。順番なんて考えずにともかく出す!
「各小隊、装備を確認しろ!」
三条さんの命令で隊員が取り出した車両と武器をチェックしていく。バズーカみたいな武器とか結構物々しい。三条さんが歩いてきた。
「我々は空港へ向かう」
「こっちは任せてください」
敬礼と合掌を交わす。
「バイクは先行しろ! 優先は空港の確保だ! スライムは無視しろ! 我々後続がつぶす!」
三条さんはタイヤの大きなクロカン型の装甲車に乗り込んだ。天井部分が開いて、そこから上半身を出して指示を飛ばしてる。小銃と剣を背負った隊員が乗るバイク5台がエンジンを唸らせて空港の方へ走っていった。ドローン2機も向かう。
上空からはヘリの爆音の大合唱が聞こえる。空を見れば、陸自の隊員を載せてたヘリ5機が空港方面に向かってる。そのさらに上空にはしろっぽい太い飛行機3機が見えて空港の上らへんを旋回してる。なんだろあれ。
「C-2輸送機……まさか空港に降りるつもりですか!?」
京香さんが叫んだ。
「我々第30普通科連隊がヘリボーンして空港を確保した後だがね。君らばかりにおいしいところはあげられんよ!」
サムズアップした笑顔の三条さんを乗せた装甲車が俺の目の前から走り去っていき、残りの2機のドローンも追いかけていった。
無茶しすぎじゃないですか?
同時刻、千葉の獄楽寺。
「瀬奈先輩! おにーさんが佐渡島に着きました!」
ポニーの渋谷が墓地ダンジョンに駆け込んできた。入り口の階段付近には瀬奈とツンドラがにらみを利かせ、その視線の先では【ヒグマ】たる浦河羅と二刀流の美奈子がスライム相手に大暴れしていた。
地面をはいずるスライムスケルトンは羅に蹴られるか美奈子に斬られるかで消える。時折出てくるドラゴスライムスケルトンは即座に殴られるなり斬られるかして消滅していた。
その背後には腕を組んだショタ零士がいて、険しい顔をしている。スタンピードが始まってからもうすでに300体は倒しているが魔物の勢力は衰えない。
「京香ちゃんは大丈夫そうー?」
「配信を見てる限りでは大丈夫そうでした。迷彩柄のメイド服なんて初めて見た!」
「こっちは戦力が多いから交代交代でやれるけどー」
「なんか、自衛隊の人も一緒に降りてましたけど?」
「はー? 聞いてないわよー?」
瀬奈もびっくりだ。
そのころ分家で着替えをしている智美には多賀城の母である涼子がついて着なれないスーツに悪戦苦闘していた。
「肩と胸がきつい」
「やっぱサイズが小さいから無理だねぇ」
スーツは涼子のものだった。さすがにまだスーツを着る機会はないだろうと智美をはじめ卒業したての子らは買っていなかったのだ。急遽入学式に参列となり、礼服がない智美は涼子に借りたのだが。
「どうしよう。お化粧もあるから買いに行く時間なんてないし」
「こうなったら、着てた学生服にするかい? 学生服は学生の正式な服でもあるんだ」
「あたし卒業してるし」
「仕方ないよ。まぁ誤差みたいなもんさ」
涼子が苦笑する。寺から市船までは1時間以上かかる。準備をして出ないと入学式に遅刻してしまう。それは母校に対して失礼だ。
「うーわかった、制服にする!」
智美は部屋に走っていった。




