50.入学式と佐渡島スタンピード⑦
翌4月7日午前5時。太陽は昇りつつある。空気は冷え、吐く息も白い。京香さんはやっぱりメイド服だけど「戦闘用に迷彩柄です」と主張して陸自隊員を笑わせてた。妊婦さんなんだから戦闘なんてさせないよ?
新発田駐屯地には車両がずらっと並んでいた。戦車みたいな長い砲を持ったやつはいないけど、ジープみたいな車とかトラックとか救急車とかバイクとか。弾薬とかもいろいろだ。全部収納して持っていく。
ほいほい収納していくと、三条さんが「まるで基地だな」とつぶやいた。仏様のお力をお借りしてるだけです。
たぶん本来の使い方がこっちなんだと思う。魔物を収納するのはバグなんじゃないかな。
「守さん京香さんおはよっす」
「ざいます!」
Aチームの5人も来た。お揃いの黒い服を着てる。ジョギングウェアみたいなぴっちりしたインナーの上に伸縮素材のハーフパンツ。上はフード付きジャケットで防弾チョッキみたいなベストをつけてる。インナー類はスパイダーシルク製であったかいぞ。
「おはよう、よく寝れた?」
「ばっちりす」
「あ、守さん、いつもの杖ってあります? ちょっと借りたいんですけど」
茶髪の一宮君がそんなことを言う。彼の武器は細い剣で、突き系のスキルだったはず。
「あるけど、急に武器を変えて大丈夫?」
「レベル10になったときに剣を持ったらコレジャナイなーって感じがして、師匠に相談したら槍とかいいかもしれんって言われて」
「師匠がかー」
何かあるんだろうな。
収納から出した金剛杖を放り投げる。
「あざっす!って結構重いんすねこれ」
「折れない曲がらない!って合金らしいよ? 作ったのは市川定さんね」
「は!? 市川定!?」
「予備含めて10本はあるから壊れても大丈夫」
と言ってもう1本出す。
「そ、そうなんすか」
と言いながらも一宮君が杖の真ん中を掴んでくるくる回し始めた。最初はバトンみたいに手首だけで回してたけど、慣れたのか、体に這わすように杖を回し始めた。右手左手と持ち手を変えてブンブン振り回してる。中国武術みたいでかっこいい。
「ハァァァァッ!」
何回も鋭い突きを繰り出して演武が終わった。おおおおと拍手がわく。
いい感じっぽいね。
ちなみにAチームは卒業時にレベルが12だった。ポニーがレベル13なので相当頑張った結果だ。
ダンジョン野郎Aチーム
館山 真治 長髪ポニテ
【怪力】【押し切り】【剛力】
オークのこん棒使いでメインアタッカー
一宮 孝之 茶髪イケメン
【連撃】【牙突】【健脚】
同い年の彼女あり
剣から金剛杖に武器を変更
市原 悟 大柄マッチョ
【強打】【連撃】【闘刃】
魔法【ヒール】
武器を大剣に変更したサブアタッカー
千葉 武志 細マッチョ
【強打】【一閃】【乱舞】
魔法【キュア】
サブアタッカー
片手剣で舞う、品川の彼氏
野田 栄太郎 金髪ツーブロック
【切り裂き】【集中】【隠形】
短剣にスイッチした一撃必殺の仕事人
ポニテの館山君は相変わらずオーガのこん棒を使ってて、大柄マッチョの市原君は両手剣に変えて、金髪ツーブロの野田君が短剣に変えて必殺仕事人的なポジションになったらしい。
自衛隊の方も突入する人らが集まって三条さんから訓示を受けてる。彼も行くんだけどね。
「俺らもやるか」
市原君が言い出した。Aチームが円陣を組み始める。
「今日は誰がやる?」
「ここは守さんだろ」
「ってことで守さん、例のあれお願いします!」
あれって、あれかな?
京香さんもしれっと輪に入ってる。
「僭越ながら。増長しない!」
「「「「「「増長しない!」」」」」」
「生きて帰る!」
「「「「「「生きてて帰る!」」」」」」
「行くぞ!」
「「「「「「おぅ!!」」」」」
気合が入った。
「ヘルメットかぶってけ」
「お守り代わりだ」
Aチームが陸自の人に迷彩柄のヘルメットをかぶらされてた。
その後、大型ヘリに乗り込んだ。6機もいる。俺たちはひとまとめで、陸自の人たちは5人ずつだって。わらわら乗り込んでるけど、降りるのは25人だよね? よね?
午前5時半。朝焼けが始まる中、離陸した。
4月7日早朝。獄楽寺。朝もやがかかり、幻想的な光景が広がる中、智美と多賀城がいつもの掃除でダンジョンに向かっていた。
「守は大丈夫かなぁ」
「兄貴は無敵だからだいじょーぶだぜ!」
「無敵ってのは賛同するけど……ってあれ!」
智が見たのはダンジョンの入り口のビニールハウスだ。そこに得体のしれない白い何かが張り付ていた。液体のようであるが粘性が強そうな、ちょっとエッチな気配もする何かだ。よく見ると石畳にもへばりついていた。
「スタンピードが来てるわね」
墓地ダンジョンではすでにスタンピードが始まっていた。白い物体はスライムのアンデッドだろう。
「【大いなる祈り】!」
智がスキルを発動すると白いナニカは光と散った。
「間違いないわね!」
「よっしゃ、いくぜ!」
京子がダンジョンに向かって駆け出した。
「慎重に行きなさいよ!」
ひとりで行かせるわけにもいかないので智も後に続く。ゲートを通って階段を駆け下りれば、そこは真っ白いナニカで覆いつくされていた。墓石も石畳も白いゼリー状になっている。
「うわ、きっしょ」
「オレに任せろ!」
多賀城が「かーめーはーめーはー!」と突き出した両手から【聖撃】をぶっ放し、白い何かを爆散させる。が、まだまだダンジョンには白い何かがひしめいている。
「きりがない! 【涅槃】!」
智美がレベル25で覚えた【涅槃】を行使。1階にいた白い何か全てが一瞬で光に消えた。ダンジョンの空間が七色に煌めくほどの圧倒的な光だ。
【涅槃】は【祈り】スキルの最強版で視界に映る一切のアンデッドを昇華する神聖なる暴力だ。
「智すげーなー!」
「京子もレベルが25になれば覚えるわよ」
だが階段からぞろぞろ白い何かが湧き出てくる。おそらく下の階はスライムでぎっしりだろう。
「よーし、オレの拳で成仏しやがれ!」
京子が【聖拳】で両手を白く輝やかせながら白い何かに突撃した。
「おらおらおらおらおらおら!!」
殴る殴る殴る。京子は長い金髪を靡かせながらひたすら白い何かを殴って爆散させていく。だが、それ以上に白い何かが増えていく。また白い何かで1階が塗り替えされつつある。
「何やってんのよおバカー! ったくもう!」
智美は階段を上がり瀬奈に電話する。
「もう始まってる! 師匠を呼んで!」




