50.入学式と佐渡島スタンピード①
4月5日明け方近く。佐渡島ダンジョンでスタンピード発生。
普段であれば容易に鎮圧しており、今日もいつもと同じように手練れのハンターで構成されたパーティが鎮圧に乗り込んでいた。だが、ダンジョンの階段からギルド職員が血相を変え、転びそうになりながら駆け出てきた。
「きゅ、急にスライムが増えて押され始めた!」
階段前の待合場には武器を持ったハンターが多数いるが、職員の叫びに首を傾げた。
佐渡島ダンジョンはスライムのみが出てくる、スライムダンジョンだ。
スライムは粘性の体を持ち、地面を這うように移動する、RPGゲームでは一番最初に戦うことになる敵と同じ名前の魔物だ。ランク1で雑魚といえる。
「増えたって言ってもブルースライムだろ?」
「『紅蓮の朱鷺』が鎮圧に行っただろが」
「あそこが動いたんなら鎮圧なんて時間の問題じゃねえか」
ハンターらは口々にそう言う。『紅蓮の朱鷺』は佐渡島ダンジョンにいるハンターの中でも上から数えたほうが早いハンターで構成されたパーティで、スタンピードの際は真っ先に突っ込んでいく正義感ある戦闘集団でもあった。
スライムには種類があり、ブルースライムは一番弱いスライムだ。弱いといっても普通の人間では倒すことが厳しい魔物ではある。
雑魚が増えても所詮は雑魚。手練れが動いている以上問題はないとハンターらは認識した。
とはいえ、彼らは自分の武器に手をかけた。職員が駆け込んでくるには理由があると本能が察知しているのだ。
「ブルーだけじゃない、グリーンもレッドもブラックも、ドラゴスライムも出てきた! このままだと抑えきれない!」
職員が叫ぶ。
「ドラゴスライムだと!?」
「10階以降に出てくる魔物じゃねぇか!」
ハンターらが武器を抜き、ダンジョンの階段へ目を向けた瞬間。ハンターらが飛び出して床に転がった。そのあとを追いかけるように階下から炎が吹き上がる。
「早く逃げろ! 中はスライムだらけだ!」
ダンジョンから飛び出してきたハンターが声を張り上げる。その言葉を追うようにダンジョンからぬめぬめとしたスライムがあふれ出してきた。ブルー、グリーン、レッド。様々な色の粘液の塊がどんどんあふれてくる。そして朱色の粘液で形作られた小型のドラゴンの姿も。
そのドラゴンが口から火を噴いた。
「外部に救援要請を! ぎゃあぁ」
カウンターにいる同僚へ駆けていたギルド職員が炎に包まれた。
「無理だ!」
「クソッ! 逃げろ!」
ハンターらは我先に出口に殺到する。その間にもダンジョンからはスライムがあふれ続け、待合場を埋め尽くしていく。
「俺たちも逃げるぞ!」
「逃げるって、どこへ!」
職員も書類を放り投げて待合場とは逆の方向へ逃げ始める。
「地下の倉庫へ行け!」
誰かが叫んだ。
複数のドラゴスライムが火を噴き、ギルドが燃え始めた。ハンターが逃げ去り、無人となった待合場はすでにスライムの姿しかなく、そのスライムも後ろから押され、外へと広がっていった。
『今朝早く、佐渡島ダンジョンでスタンピードが発生しました。魔物が地上にあふれ各地で火災が発生しています。現地ギルドとは連絡が取れず、安否はわかっていません』
食堂で朝食をとっていたら、テレビで緊急ニュースが流れだした。
『魔物が火災を広げています。付近には近づかないでください。また自治体の避難指示に従って行動してください』
地図が映り、佐渡島ダンジョンの位置と火災が発生しているエリアが示された。かなり広い地域で火災が発生している。
ダンジョンは佐渡島の加茂湖の南にあり、佐渡空港とトキセンターに近い。
「……大災害じゃん」
そんな言葉しか出てこなかった。
『総務省は周辺ギルドおよび防衛省に救援要請をだしました。防衛省が直ちに現地を確認するための戦闘機を向かわせた結果、空に多数の魔物がいることがわかりました』
ニュースキャスターは淡々と読み上げていく。ここで感情的に読み上げてはいけないと、過去の大震災の教訓が生きてる。
『現地からの中継です』
画面が切り替わり、上空からの映像になった。
『現在わたしはヘリで佐渡島上空にいます。火災の煙が多くの場所から立ち上がっているのが見えます』
男性のアナウンサーがヘルメットをかぶって説明をしている。
遠方に湖があり、その手前は畑が多い。ギルドと思われる建物が燃えており、そこから円状に火災が広がってるように見えた。離れた市街地でも煙が立ち上っているので、そこでも火事が起きてるんだろう。
『ハンターが食い止めようとしていますが魔物の数が多く、また空を飛ぶ魔物もいて食い止められないようです』
アナウンサーが説明している間に、赤い何かが近づいているのをカメラは捕らえていた。
グラっと画面が揺れ激しく上下に揺れる。
『魔物が襲ってきました!』
画面には機体の天井が映っていたが、炎で覆われた。と同時に映像が消えた。食堂が静まりかえる。
「……守、皆を集めろ」
零士くんが声を発した。
割と長くて、半月ほどこの話が続きます。
Aチーム絡みです。




