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うちの寺の墓地にダンジョンができたので大変です  作者: 海水


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43.札幌ダンジョンと四街道の課題④

 翌朝、札幌。

 昨夜にあんなことがあったが四街道の心は水面のように穏やかだった。零士がわかりやすく感情を露出させたことが主な理由だ。

 ふふ、師匠の心にも楔を打ち込めてたんだ。

 どちらかというと浮き上がりそうですらあった。

 そんな明るい四街道を見た佐倉と柏は逆にカラ元気を疑ってしまう。


「美奈、無理してない?」

「無理はダメダゾー」


 声をかけるが四街道は笑顔で「大丈夫よ」と答える。それがより心配を加速させてしまうのだが。


「そろそろ行こっか」


 四街道が刀2本を持った。学校のジャージに、背中には小型リュック。その上から防寒着を羽織る。動くたびにリュックが重しになるので邪魔になるから上着で抑え込む魂胆だ。

 3人がギルドの待合場についたのは午前8時を回ったころだ。日帰りでダンジョンに向かうハンターの姿が多い。


「うーん、船橋を思い出すね」

「寺はハンターが来ないしね」

「スケ兄に聞いたケド、今は忙しーみテー」


 3人の感想だ。


「ああああの。もしかしたら市船から来た桜前線の3人ですか!??」


 待合場を眺めていた3人に声がかけられた。声の主を見れば、同い年くらいの男女が6人。男3女3だ。防寒着の首元からジャージの襟が見えたので、札幌東のハンターコースの生徒だろう。


「そうだけど? あなたたちは?」

「札幌東のハンターコースの生徒で名寄っていいます!」


 四街道が代表で問うと、名寄と名乗った女子が答える。背後では「キャー!」「おお!」と黄色い声が聞こえる。佐倉が視線を回せば、自分たちと同じくハンターのヒヨコたちの姿があった。


「あの! 一緒に写真を撮ってもらってもいいですか!」

「……いいわよ」

「やったぁ! ありがとうございます!」

「歳は一緒なんだから敬語はいらないわよ」

「いやいやいや! それはムリー」


 名寄は手をバタバタ横に振る。そして敬語ではない。


「ほら大丈夫じゃない」


 四街道がにっこりすると「ほわぁぁ」と何かが蒸発する音がした。

 佐倉、四街道、柏にはそれぞれファンがいて、並んで写真を撮っている。

 あらかた写真を撮り終わると札幌東の生徒たちがダンジョンに入っていく。まだ残っているのは話しかけてきた名寄のグループだけだ。そろそろダンジョンに入りたいのだが。


「いつまで札幌にいるんですか?」

「今日明日ダンジョンで、明後日は札幌を観光して、泊まって帰る予定ね」

「そうなんだ。良ければ案内するよ!」


 いつの間にかため口になっている名寄がパンと手を打った時、やけにガタイのいい男3人が「おやおや」と寄ってきた。名寄が「ゲッ」っといやそうな悲鳴をこぼした。

 佐倉ら3人はトラブルの予感を感じ目つきをきつくする。

 寄ってきた3人は全員背が高いうえに上着の上からでもわかるくらいガタイがいい。彫が深く濃いめな味噌顔のイケメン、さっぱりした塩顔のイケメン、面長なしょうゆ顔のイケメンだ。ヒエラルキー上位の存在だろう


「桜前線の3人とお見受けしたが」


 味噌顔が話しかけてきた。


「そうだけど、なに?」


 佐倉が不機嫌全開で答える。今までにこやかに写真を撮っていたのがウソのようだ。


「俺たちがダンジョンを案内してやるぜ」

「俺たちが札幌東ではトップだしな」


 塩としょうゆが追従する。北海道だけにラーメンかよと言いたくなる佐倉だったが我慢した。

 なお、北海道のラーメンといえば味噌のイメージがあるが、実際は函館の塩、札幌の味噌、旭川のしょうゆと群雄割拠なのだ。


「ちょっと!」

「雑魚は控えてろ」


 名寄が抗議すると塩が一喝した。


「俺は石狩純也。これでもユニークスキル持ちでね」

「俺は小樽啓二」

「俺は函館将」


 味噌塩しょうゆの順で名乗ってくる。味噌は剣を、塩は斧を、しょうゆはクロスボウを持っている。

 だが佐倉の中ではこの3人はすでにラーメンで判断されている。よってこいつらの名前は味噌塩しょうゆだ。本名は覚えてやらん。


「俺たち3人が札幌東ではトップなんだよね。で、せっかく北海道まで来てくれてるのでダンジョンの案内でもしようかとね。ついでに言えば、俺はちょっと大きな会社の社長の息子でさ、札幌の街も楽しませられるかなーって」


 味噌の言葉は丁寧だがどこかあざけりも含まれている。佐倉はなめられてるなと感じた。名寄の反応からもそう推測できる。女3人なんて楽勝だぜ、とでも思っているのだろう。ムカツク。


「初日は自分たちで調べるから」


 佐倉は申し訳なさそうな顔をした。内心では「うるせーさっさとどっかいけ」と罵倒していたが。


「ダンジョンは初がおもしれーんダゾ」

「そうね。初めてだからこそ学びがあるのよね」


 佐倉の意をくみ取ったのか本心か、柏と四街道の援護が飛んできた。


「そうか。パーティの構成が俺たちと似てるから札幌ダンジョンでの行動の参考にしてもらえればと思ったんだけど」


 あくまで上から目線だ。うざい。


「それを自分たちで学ぶのも課題でしょ? わたしたちは複数のダンジョンに入ってるから、やり方も知ってるわよ?」

「そうダゾ。アーシたちはこの札幌ダンジョンで7つ目のダンジョンダシナ」


 四街道、柏が反論する。

 船橋に始まり勝浦、墓地、いわき、備後、日比谷と6つのダンジョンを経験した、ある程度のハンターの中でも経験豊富といえる。しかもルーキーのくせに2階以降まで行っているし、10階まで走っていった四街道もいる。増長はしないが「お前たちよりは経験豊富だぞ」と言いたくもなる。


「チッ」


 味噌が舌打ちし、塩としょうゆに視線を投げる。


「わかったわかった。気をつけてな」


 味噌塩しょうゆが愛想笑いで去っていった。こっそり中指を立てた佐倉だった。


「あ、あの、うちの馬鹿どもがごめんね」

「申し訳ない」

「ごめん」


 名寄ら6人が謝罪をしてくるが、あれと一緒に3年間過ごしてきたあなた方がご苦労様と言いたい佐倉だ。


「確かに俺たちよりレベルは高くて強いけどさ」

「親の七光りっていうかさ」


 その言葉だけでいろいろ察せられた。虎の威を借り、かつフィジカルでクラスを支配しているのだろう。そんなのは漫画の中だけだと思っていたが現実にあるのだ。


「どこにでもいるわよね、あの手のは」

「日比谷にもいたシナ。オニーサンにボコられたケド」


 直に見ている四街道と柏はざっくり断じた。


「今日はおとなしくしてるけど、明日は来るかもね」


 あの手の輩はプライドを傷つけられると逆恨みする。フィジカルも金も権威も通用しないこの3人はそんな輩の天敵なのだ。


「ってなわけで、ダンジョンの案内をお願いしていい?」


 佐倉は首を可愛くかしげてにっこり笑った。

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