表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
うちの寺の墓地にダンジョンができたので大変です  作者: 海水


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

199/273

43.札幌ダンジョンと四街道の課題③

「で、来訪の理由はこれなのですかな?」


 父さんが突っ込んだ。

 娘が家に帰ってこない→師匠とやらがいるらしい→たぶらかされている?→だれだそいつは!

 じゃないのかな?

 琢磨氏が苦い顔になる。ビンゴだったのか。


「じゃあなんで当寺に? というかギルドに御用ですか?」


 寺なら父さん、ギルドなら俺だ。責任者の話ね。

 琢磨氏は口をゆがめてからゆっくり話し始めた。


「実は、妻との離婚調停が始まって、美奈子の親権でもめてる」

「……そんなことは大人でけりをつけてください」


 思わず言ってしまった。俺も成人したとはいえまだ子供感覚だ。大人になれていないともいうけどさ。

 その子供からすると、離婚のいざこざなんて親で何とかしろって思うじゃん。これって子供のわがままなのかな?


「そう言われちまうと耳が痛いがな。そもそもは妻の浮気が原因で離婚騒ぎになってて、あいつが親権をよこせと言っている。俺から養育費をせしめるためだろう」


 だから美奈子ちゃんはうちに入り浸ってるんだな。ギスギスした家にはいたくないよね。

 それはそれとして親権ってのはなんだろう。あとで葉介さんに聞こう。


「仕事が忙しくなってあまり家にいられなかった俺も悪いんだが」

「てめえらの都合を美奈子に押し付けるな。離婚の原因なんざ親にしかねえ。()()()見ていられるだけましだろうが」


 黙って話を聞いていた零士さんが静かに怒りをあらわにした。零士さんのご両親は鬼籍に入られてるし、そして本人もね。


「仕事の忙しさを言い訳にするならその仕事で儲けた金で払えばいいだろうが。金を払いたくない理由に美奈子を使うな」


 声を荒げるわけではないけど、零士さんの怒りが言霊になって圧を含んで腹に響く。

 ここまで怒るのは初めてだ。


「琢磨さん、ちゃんと美奈子ちゃんを見てあげてましたか? 美奈子ちゃんは強くなりたいと言ってすごくストイックに鍛錬してますよ。立ち姿とか本当にかっこいいですよ」

「……ハンター祭りで見たさ。もう俺よりも強いかもな」


 琢磨氏は天井に顔を向ける。


「あれでもまだヒヨコだ。世の荒波にもまれるには純粋すぎる。泥を見せるのはせめて成人してからにしてやれ」

「それは、師匠としての言葉か?」

「大人としての言葉だ。生きてる頃はシヅマの製品は使いやすくてよく使っていたが考案者こんな奴だと知ってガッカリしたぞ……」


 「美奈子は戻さん」と言い切ってしまった。


「お前は親じゃないだろう」

「お前に親の資格があるとは思えんが?」


 いい大人がJKをめぐってにらみ合ってる。零士さんが怒るのもわかるけど、ヒートアップしすぎじゃない?


「まぁまぁ、そこまでですよ」


 父さんが「ほっほっほ」と割って入った。


「どちらに預けるもよろしくないので、彼女は当寺で預かりましょう。寺は昔から子供を預かっておりましたからの。それに、離婚調停はすぐに決着はつきませんでしょう」


 喧嘩両成敗だ。というか、零士さんは寺にいるので片成敗でしかない。


「ワーコワイナー。おふたりとも、いったん矛を収めてもらえませんかね。この部屋に充満してる怒気で俺の手が滑っておふたりを閻魔様のもとに送りかねないですよ?」


 父さんだけに泥をかぶせるわけにもいかないんで、俺も割って入るよ。

 俺のスキルを知っている零士さんが我に返ったのか苦い顔になった。琢磨氏は「何を言ってるんだ?」って顔してる。


「本人がいないところで密室裁判のような卑怯な真似はよくないですよ。親だというならきちんと向き合って話をするべきでは? 美奈子ちゃんが知ったら『どっちにもつかない』と言い切りますよ」


 俺の言葉が堪えたのか、琢磨氏も顔をしかめた。簡単に想像できたろう。美奈子ちゃんだったら言いそうだもん。


「ともかく、話はこれまでですよ。一応、こちらから、美奈子ちゃんには連絡しますけど、父親たる琢磨さんからも連絡してくださいね?」


 些細なことかもだけど。コーユー連絡の不備とかが不信感に繋がるんだよ。俺も3人にはこまめに報告するもん。そしてお説教をいただくまでが流れだ。

 報連相大事ね。


「少し考える」


 琢磨氏はとぼとぼ帰っていった。


 その晩、風呂も入って落ち着いたころ。大人たちが食堂に集まって札幌の宿についた智たちに連絡する。メンツは、俺、父さん、瀬奈さん、京香さん、葉介さんだ。零士さんは頭を冷やすといってダンジョンから出てこない。北国分さんにはヒヨコたちのお世話をお願いした。

 食堂の大きなモニターに3人が映る。3人とももこもこの寝間着姿だ。


「お疲れー」

『『『おつかれー』』』

「そっちの雪はすごい?」

『秋田ほどじゃないけどすごいよ』

『スケ兄、雪がスゲーヨ!』

『除雪はされてますけど、その代わり雪の壁がすごいです』


 元気な様子に一安心だ。

 向こうのギルドの様子なんかを聞きつつ、話を切り出すタイミングをうかがう。重い話だからさ、あらよって感じでは出せないよ。


「今日ね、美奈子ちゃんのお父さんが寺に来たんだ」


 「あ、そうだ」って感じで切り出したけど、美奈子ちゃんの顔が一気に険しくなってしまった。


『そうですか……父が……』

「家庭の事情を話されたけど、両親で話し合ってくれって追い返したよ」

『……ご迷惑をおかけしました』

「全然。美奈子ちゃんのほうがきっついでしょ」

『それは、まぁ』


 俺と美奈子ちゃんの会話に智と葉子ちゃんはついていけなくて、「何の話?」って顔してる。


『あのね、うちの両親が離婚するんだけどわたしの扱いでもめてるのよ』


 美奈子ちゃんがふたりに説明し始めた。美奈子ちゃんの話を聞いているふたりは口をゆがめて不機嫌になった。


『浮気する奴が悪い』

『浮気者には死ヲ』


 絶許のようだ。俺が浮気したら刺されるな。しないけど。


『どっちについていくかなんて、どっちにもいきません』


 美奈子ちゃんは予想通りの答えを出した。


「そういうと思ったから、そう伝えたよ。それと、零士さんがめっちゃ怒ってた。金のもめごとに子供を巻き込むなって」

『師匠が!?』


 美奈子ちゃんはキョトンとして動きを止めた。いつもは冷静で楚々としてるのに、高校生らしい顔になった。


『美奈子は戻さんって静かにブちぎれてた。今はダンジョンにこもっちゃってる』

「そうですか。渡さん、ですか」

『いや、戻さん、だけど?』


 だめだ、美奈子ちゃんがうっとり乙女になっちゃってる。


『守、美奈はどっちかについていかないといけないの?』

『ダメー?』


 不安顔の智と葉子ちゃん。ふたりとも家庭が不安定で、それぞれなんとか克服してきたけど、最後の美奈子ちゃんもそうだと知ったらやるせない顔にもなるよね。


「まずは親権についてだけど」


 ここで葉介さんに振る。専門家に丸投げだ。


「親権ていうのは、子供の面倒を見る権利と義務のことで、離婚する場合、必ず両親のどちらかが親権を持つことになるんだ。この親権が決まらないと離婚は成立しないかなり重要なものなんだ」


 葉介さんの説明を美奈子ちゃんは真剣に聞いてる。葉子ちゃんはキラキラした目で話を聞いてるかあら「スケ兄カッコイイ!」って思ってるんだろうね。自信を持って話をしてるから確かにかっこいい。


「親権を持った親には子を養育する義務が、失った親には養育費の支払い義務が生じるんだ。大体がそのお金でもめるんだけど、美奈子ちゃんのご両親もそれでもめてる感じなんだ」

『……母が浮気してることは知ってました。知らない男が家にいることもありましたし。会社の売り上げが上がって家のお金が増えると母の行動も派手になっていったので、離婚するならかなりのお金を要求してるんでしょう』

「えっと、京香さんが調べた情報だと、お母さんには結構な借金があるみたいでね」

『そうなんですね……はぁ。お金は人を狂わせますね……』


 美奈子ちゃんががっくり肩を落として大きなため息をついた。敬愛する師匠が金に頓着しないから、そのギャップも堪えたろうな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
仕事しか見ない父親 金の為に親権寄越せとほざく浮気してた母親 この時代、高校在学中に成人になるからこのまま揉め続けて卒業、ハンターとして自立したら親権発生しないのでは?
高校卒業したらハンターになる=就業ってことだから、支払いはせいぜい3カ月だろ。調停が長引けばもっと短くなる。月10万だとしても相場より高いんだから、妻と縁切りたい・子供要らないなら30万で済むぞ 母親…
仏・・・輪廻・・・・転生・・・ ハッ、閃いた!守!レベルを上げよう!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ