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うちの寺の墓地にダンジョンができたので大変です  作者: 海水


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38.日比谷からの客人②

あけましておめでとうございます。

皆様の1年がよきものでありますように。

「資料にも書いてありますが、ふたつのダンジョンでは出てくる魔物が違います。【いわきダンジョン】はゴブリン系で【備後ダンジョン】は獣系です。どちらもダンジョンランクは1です」

「ゴブリンと獣ですか」


 由比ヶ浜君は資料を見て唸ってる。三島さんは、ちらちらあたりに視線をやってる。気になるものがあるのかも。もしかしたら【鑑定】スキル持ちなのかな。


「ダンジョンはどこにでも出せるんだけど、そのためにここまでは来れないよね? 学校に近いほうがいいんだろうけど、そこをどうするか」

「あの、資料には1人当たり1万円とあるのですが」

「あー、それはここの使用料みたいなもんで、休憩と食事と風呂が含まれてる金額なんだよね。高校生には高いよね」

「守君、そこは学割で千円にでもすれば解決します。無料でもいいのですが、無料となるとやる方も気が抜けてしまいます」

「なるほどねー」


 ただより怖いものはないというしね。


「それよりも先に、君らがどうしたいかを聞きたい。うちも市船の授業にと考えたこともあるんだけど、教育に口を出すのは揉めるだろうとやめてるんだ」

「……どうしたいか、ですか」


 由比ヶ浜君は考えてしまった。うーん、こちらから案を出した方がいいかな。


「例えばなんだけど、部活みたいに放課後にダンジョンに入りたいとか、休みの日に入りたいとか、そんなのはある?」

「今までは、学校帰りに行ってました。武器は学校に置くことにしてて、ダンジョンに行った後は学校に戻ってから帰宅してました。人が多い場所で武器を持ち歩くのは避けるためです」

「偉いなぁ」


 よく考えてるんだな。余計になんとかしてあげたい。


「とすると、やはり学校近くにダンジョンを設置する必要がありますね」

「日比谷って大都会だよね。昨日も人波に流されたもん」


 田舎もんだから人込みは苦手だ。


「日比谷ですと、上野様の事務所がありますね。日比谷ダンジョンと池袋ダンジョンに対応するためと思われますが」

「ビッチさん、すごいところにお店持ってるんだね」

「店ではなく事務所でしょう。東京支店とありますので」

「支店なんだ。本社ってどこなんだろ」


 ビッチさんの車のナンバーはつくばだから、茨城なのかな。


「本社はつくば市にありますね。倉庫もそこでしょう。関東を中心に活動していましたがうちと取引してからは東北にも手を伸ばしているようです。年明けには北海道営業所も開設すると聞きました。地元ギルドから要望があって営業所を開設しているのが実情らしいですが」

「ポーションとか包帯関係で需要があるんだろうね。備後ギルドではポーションが手に入らないって言われたしねってこんなこと聞いてても仕方ないよね」


 由比ヶ浜君は俺たちの話をじっと聞いている。放置しちゃってごめんね。


「いえ、獄楽寺ギルドがポーションの日本最大の供給源というのは噂で知っていますし、高校に納品されてる『きれいな包帯』も獄楽寺ギルドが供給元という噂の裏付けが取れてためになってます」

「さすがは日比谷高校ですね。先入観もなく、優秀です」


 京香さんが感心してる。市船もそうなんだけど、日比谷高校も普通科は頭がいい高校なんだよね。


「話がそれてしまいましたが、日比谷ダンジョンがなくなったことで上野様の東京支店の業務量も減ると思われますので、そこをお借りしてダンジョンを設置、獄楽寺ギルド日比谷支所とでもして管理する案はいかがでしょう。実は日比谷ギルドからこちらに移ってもよいという職員が3人います。彼らをそこに当てはめれば、彼らもわざわざここまで通いや住み込みもしなくて済みます」

「なるほどねー。確かに取引してるところがなくなっちゃったら仕事もなくなっちゃうもんね」


 うちも檀家さんが亡くなってしまうと、たいていそこで縁も切れてしまうんだ。息子さんないし娘さんは東京へ行ってしまってそこで家庭を持ってたりするからね。墓は残すけど法事などはなくなるんだ。仕方がないことだけど、寂しいもんだよ。


「ダンジョンと守君との距離が離れていても管理できるのかどうかの確認と、上野様との話し合いが必要です」

「問題はあるけどクリアできない内容ではないかなって。ダンジョンの遠隔管理ができるかは俺が試せばいいだけだし。ビッチさんとはお話し合いしないとだけど」


 いままで賄賂を渡しまくってるからごり押しで行けるかも?

 ちょっと皮算用過ぎるか。

 なんにせよ、高校生にまで問題を広げるのはよくない。なんとかせねば。


「ただいまー!って来客?」


 母屋から智の元気な声が聞こえてきた。もうそんな時間か。


「やべ、夕飯の支度がまだだ!」

「誰か来てるのー?」


 俺が腰を浮かせたところで智が食堂に入ってきた。続いて美奈子ちゃんと葉子ちゃんもだ。


「佐倉さんに四街道さん! 柏さんも!」


 由比ヶ浜君が3人を見て立ち上がった。頬もちょっと赤くなって興奮してる。三島さんも智を見つめて「わぁー」って顔をした。


「その制服は日比谷?」


 美奈子ちゃんが気が付いたよう。知ってるのか。


「あの、日比谷高校ハンターコースの由比ヶ浜といいます。四街道さんにお会いできて感激です!」


 由比ヶ浜君が落ち着きをなくしたっぽい。三島さんも無言だけど嬉しそうだ。


「日比谷から……おにーさん、ダンジョンの件ですか」

「そうなんだけど、ごめん食事の準備が。京香さんお願い」

「承りましたご主人様。3人もちょっと座ってください」


 智ら3人に相手してもらう。


「改めまして由比ヶ浜といいます。この子は三島です。ほら三島さん」

「ああああの三島綾子といいます! そそその」

「三島さん落ち着いて。ゆっくり話せば大丈夫だから」

「ああああの、わたし、【祈り】スキルで、その、佐倉さんとお話がしたくって、来ました!」


 由比ヶ浜君になだめられ、目をつむって顔を真っ赤にした三島さんが叫ぶというか吠えた。初めて声を聴いたけど、ずいぶん細い声だ。内気な子なのかもしれない。

 というのは脇に置いて。


「「「【祈り】!?」」」


 俺と京香さんと智の声が重なった。

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「改めまして由比ヶ浜君といいます。 ↑この発言は、誰が? 本人の自己紹介の様な口振りだけど、自分に君を付ける男? 気にしすぎ?
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