35. クリスマスと因果応報②
区切りの都合で短くてすみません。
みんなと離れた場所でさみしそうに立ちすくんでいるのは、お母さんが急用でいられなくなってしまった白子君だ。
一緒に登園はしたけどお母さんは帰っちゃったんだよ。ポツンになってるのを先生たちも気が付いてはいるけど手が空かない状態だ。どれ、俺がいくか。
すすっと白子君に近づいてしゃがむ。
「白子君、飾りを取り付けようぜ」
「ぼくはブラックだから、いいんだ」
「ブラック?」
「ブラックはこどくをあいするせんしなんだ」
白子君がキリっとして言い切った。でも君は白なんだよねって関係ないか。
「てんじくせんたいのブラックだよ!」
「あぁ、日曜朝にやってる戦隊もの」
なるほど、話がつながった。
戦隊ものって大体が5人なんだけど、たまに5人以外の仲間が出てくるんだよ。ブラックってのはその最たるもんで、一匹狼気質なキャラだったりするんだよね。で、単独行動して陰ながら5人を助けてるって役。カッコいいイメージがある。
「そっか、白子君はブラックが好きなんだ」
「そう、だから、ひとりでも、へいきさ!」
白子君がバシッとポーズを決めつつ、ちらっとほかの子を見た。お母さんの手を引いてもみの木を見せてる子がいる。
白子君はお母さんが残れなかったから、彼なりに我慢の理由を考えて自分に言い聞かせてるみたいだ。
白子くんの気持ちはよくわかる。俺も、小学校でも中学校でも参観日には父さんは来れなくて、友達の親を見てはいーなーって思ってた。やっぱり寂しい。
なんとなく、零士君が頭に浮かんだ。
零士くんは、仲間と一緒に死んだはずがひとりだけここにいるんだ。生き残った人がいるけど、連絡を取ると大騒ぎになっちゃうから動いてない。表には出さないけど、寂しさはすごいだろうね。
「白子君、ブラックはひとりで行動してるかもしれないけど、レッドとか仲間がいるじゃん。ブラックが活躍してるときはひとりだけど、お休みの日は仲間と一緒に遊んでるかもしれないよ?」
「おやすみのひ?」
「ブラックも戦いっぱなしじゃ疲れちゃうから、お休みも必要だよね。お休みの日は仲間と遊んでるんだよ」
「そうなの?」
「そうなんだよ。今日は、本当は幼稚園はお休みだけど、みんな来てるのは、遊びに来てるからなんだ。だから白子君もブラックみたいにみんなと遊んでもいいんだ」
「そうなんだ……」
白子君がもみの木を見る。まだまだ飾りつけでお祭りになってる。ただ、親と一緒にやってる子が多くて、気後れしているのかも。
「よし、じゃあ俺とやろうか」
収納から余った飾りを取り出す。こんなこともあろうかと、と言いたくて入れといたんだ。
「わぁ、てじなだ!」
白子君の目がキラキラになる。インチキでも手品でもないぞ。でも白子君の意識がブラックから移った。
「ほらほらほら」
「わぁぁぁ!」
調子に乗ってポイポイ取り出す。
「よし、取り付けに行くぞ!」
「おー!」
白子君に飾りを渡すと、彼はトテテテっともみの木に駆けていった。
「つけるぞー!」
「しらこくんだー、ぼくもつけるぞー」
「よーし、きょうそうだー!」
俺もついていくけど、白子君が友達と一緒になって騒ぎ始めた。
「大丈夫かな」
ちょっと安心した。ミッションコンプリートだ。
「やるじゃん」
達成感に浸ってるとほっぺに指が刺さった。その指をぐぐっと押して顔を向ければ、智がニヤニヤしてた。ニヤニヤもかわええのぅ。
「ふふふ、寺の坊主見習いをなめちゃいけない。説法の練習なんだぞ」
将来は寺を継ぐからね。ハンターは副業だよ。
「お義父さんにはまだまだだけど、がんばってるじゃん」
「そりゃね。お地蔵様を推してるなら子供がさみしそうにしてたら放っておけないさ」
「おー、言うわねぇ。でもま、見直したわ」
智がふふふって笑う。
「どう、俺の好感度は上がった?」
「もうMAXだからこれ以上は上がらないわよ」
んべって舌を出された。なにこのかわいい生物。持ち帰って愛でていいですか?




