095.5-アリエルの暴走-1P
「辞めろ」
僕の読み通りと言っていいのか。カルマンはこれからなにが起こるかを理解した口振りで、アリエルの細い腕を掴み制止する。
「うるさい! あんた、なに様のつもりなの!?」
だけど、アリエルから返ってきた言葉は予想だにしていないモノだった。
アリエルはカルマンの腕を強く振り払い、憎しみや恨みなんかの念が込められた様な、被害者が加害者に向ける様な視線を向ける。
その視線にカルマンは、なにかを認めるようにそっと下に目を伏せ、アリエルを解放した。
二人の間になにがあったのか? それはなに一つ判らない。だけど、罪と罰。深い闇の様なモノが眠っている気がした。
カルマンの制止を振り切り、解放されたアリエルを一言で言うならば暴走寸前の猛禽類。足音を忍ばせ、ゆったりした歩調で|ナイフを投げた男の元へ歩み寄る。
一歩、アリエルが踏み出す度、この空間で緊張の糸が張り詰めていく。
そして、蛇にでも睨まれたように避難者は硬直し、身動きが取れず息を殺す。
少しでも物音を立ててしまえば、標的にされ兼ねない。そんな緊張だけが高まっていく。
「ひぃぃぃぃ!」
そんな中、男は自分が狙われていると理解したのか、アリエルの迫力に押し負けるように後退りし、最後には腰を抜かし顔面を蒼白させる。
アリエルがなにをしようとしているのか? そんなこと一つ足りとも判らない。




