225-新たな刺客2-
だけど、そのうち眼前の映像が遠のき――僕はいつの間にか、ジメリとした暗がりに佇んでいた。
「……? ここは?」
きょろりと周囲を見渡すも、暗く何もない空間としかわからない。
だけど……母さんが死んじゃった時にいた空間に似てるような気も……。
ただ、その感覚が合っているのか否かは判断しようがない。
僕はキョトリと首を傾げながらも訝しんでいると、突然後ろから声がぶつけられた。
「なるほど。次の器はあなたですか。面白いものを身体に宿らせているんですね」
まるでヌワトルフ神父のような言葉遣い。僕は、驚きを覚えながらも、咄嗟に振り返る。
「誰!?」
そんな僕の眼前には、ミミズのような黒く奇妙な紐が。
「私はモナド。あなたたち人間の概念そのものです」
「……は? えっと、何を言ってるのかわからないんですけど?」
緊迫した空間内。意味のわからないことを口にするミミズ。
人間の概念? 概念って何? いや、そんなことより、人間の概念ってミミズだったの!? えっ、ミミズが概念……?
僕は概念なんて実際に見たこともなかったら、思わず目を丸くして驚きを覚えちゃったよね。
だけど、ミミズはちょっとズレた考えをしていたんだと思う。
「……あなた。こんな状況下でパニックにもならないとは、なかなか肝が座っているようですね。まぁそんなことどうでも良いとしましょう。そこのモニターを見てみなさい」
そう言って、手足のない紐のような体を器用に使いながらも、僕に後ろを振り返れと合図する。
でも、これは罠かもしれない。だって映像はここに来る前に見えてたけど、ここに来たと同時に消えちゃったもん。
だけど、それを確認せずに嘘だと断じるのも何か違うような……。
僕はそんなことを考えながらも、微かに体を捻り振り返った。
「……!?」
僕の眼前。さっきまではなかっであろう。モニターが浮かび上がっている。
(これ、は……?)
モニターに映し出されている映像には、なんの躊躇いもなしにカルマンやルフーラへと攻撃する僕の姿が。
僕はここにいるのに、どうしてカルマンたちに攻撃しているの?
そう自問したところで、わからない。
だけど、多分……これは嘘の映像とかではないんだと思う。
だってカルマンの動きには戸惑いのようなものがあるから。いつもだったら隙がなくて、動きにもキレがあるはずなのに、どこか迷いを孕むように、鎌の軌道がブレている気がする。
とはいえ、カルマンは強い。
僕とカルマンが放った攻撃がぶつかり合い、衝撃波を生み出していく。そんな衝撃はは僕たちを中心に広がり、教会もその場で死んだお互いの仲間も一瞬にして消し炭にしてしまう。
それは言葉通りで、何も残すことはない。
そんな中、カルマンが何かを口にする。
『おい! 目を覚ませ! ロリババアの術中にハマほど、おまえの意思は弱いのかよ!』
だけど、モニター越しからは何を言っているのか――わからない。
ただ、カルマンが必死に僕を止めようとしているのだけわかった。
そんな映像を食い入るように見ていると、ミミズが理解不能なことを口にする。
「とても真剣に見ていますね、こちらの映像は非常に面白いものでしょう?」
でも、こんなものを見せられても面白いわけがない。だから、僕は素直に反論した。
「これのなにが面白いの?」
「大切な者を手に掛けようとする恐怖。抗おうとする心。そして、自分のせいでと嘆く慙愧の念。こんなものを観て面白い以外、ほかの感情が動きますか?」
『君は狂ってるよ……気持ち悪い程に」




