231-続き-
「は!? なに!? こんな非常事態に冗談なんか言わないでよ!」
僕はそう言いながらフェルの顔を摘む。だけど、フェルはそんな僕のことなんてお構いなしに言葉を続けた。
「オレサマ冗談なんか言ってないガウ
オマエとはここまでガウ!」
「いや意味が解んないよ……」
「意味が解らなくても良いガウ」
ツンケンしたような態度で告げられたその言葉。そこに、本気度は殆ど感じられないはずなのに、何故かフェルの言う通りになってしまう。そんな気がして仕方なかった。
だから僕は告げた。
「そもそも魂を守護するモノ契約を解除なんて出来ないよ!?」
でも、やっぱりフェルはフェルで……。
「オマエがオレサマに命令すれば良いガウ」
そう言って、解除の方向へ進めようとしちゃって。僕は全力でそれを拒絶した。
「ヤダよ……。
フェルとこれからも一緒に居たい!」
そして、その言葉と同時に、どうすればフェルを説得できるのか。必死に考えようとした。
そんな僕の願いが届いたのか。それとも、気まぐれか。
「それは命令ガウか?」
フェルはどこか寂しげな表情でそう問いかけてきた。
僕はそれが唯一の方法なのかもしれない。本当だったら、魂を守護するモノは主の命令に逆らえないはずだから。
だから――僕はフェルに命じた。
「命令で縛れるなら命令するよ!
フェルとこれからも一緒にいたい!」
それは祈りのような命令のつもりだったけど、フェルからすれば圧の感じるものだったのかもしれない。
「解ったガウ……」
フェルはそう言って、小さく頷いた。
それはフェルが言うことを聞いてくれる合図。僕は素直にそう受け取り、「聞いてくれるの?」そう、食い入るように問いかけた。
だけど――
「その命令……拒否するガウ!」
フェルはどこか憂いを帯びたながらもいつも通り誇らしげな態度で僕に言い切る。
それと同時に、僕の視界が暗転したように真っ暗になった――気がした。
なんで? どうして? が付き纏って、上手く咀嚼なんてできない。
そのせいか、無意識に僕はフェルへも不満を連ねてしまっていた。
「なんで!?
いっつもフェルは、そう言って言うことなんも聞かないじゃん!
ちょっとは言うことを聞いてよ!」
だけど、フェルはどこまでも自己中心的で。傲慢な態度はそのままに。どこか誇らしげ? を演じるように、普段通り胸を張って僕へと言ってきた。
「オマエと一緒の生活はめんどくさいし、小言ばっかりで逃げ出しくたくなることも多かったガウ」
でも、その不満からの解約なんて僕は認めれないし、流石に容認できる人なんていないと思う。だから僕は喧嘩になってもいい。そんな気持ちで本心をぶつけた。
「だから契約を解除しようとするの?
身勝手すぎない!?」
でも……。だけど……。フェルにもなにか事情があったらしい。ほんの少し、ちょっとだけ。目を伏せながら、フェルは僕にこう言ってきたんだ。
「でも……。オマエとの生活は悪くなかったガウ……。
これで規定回数の命令違反だガウから、オレサマは消滅するガウ
今までありがとうガウ……」
瞬間、ポワッと白い光がフェルの周囲に現れ、僕が止めるよりも先に、その姿が泡玉のように溶けていく。
それは唐突なことで、なんの前触れもなかったこと。
そもそも、突然、魂を守護するモノ契約を解除したいって言って、規定回数命令違反したから消滅するなんて一方的すぎるよ……。
僕は思わず叫ぶ。
「ねぇ!待って!?
まだお別れも済んでないよ!?
なんで毎回そんなに自分勝手に僕を振り回すんだよ!」
だけど、フェルの身体は既に実態なんて持ち合わせず。ヘレナの時のように触れることは許されなかった。
なんで? どうしてみんな、僕の周りから居なくなっちゃうの? 本当に理解できない。
「なんでヘレナもフェルも、そうやって人の心を掻き乱していくんだよ!」
僕はそう言いながら、地面を思いっきり殴りつける。
それを見たカルマンとルフーラは元気を出せと言わんばかりに、僕の肩にそっと手を乗せる。
そんな慰め、今は要らないよ。僕はそんな毒を内心に吐き出しながらも、何度も何度も、フェルの名前を呼び続けた。




