213-続き-
「カルマンよ、いつまでこんな子供たちと戯れているのですか?
あなたには幻滅しましたよ」
蛇の骨を被ったタナストシアは大きな溜め息をついたあと、カルマンを諭すように冷めた言葉を吐く。
そんな蛇の骨を被ったタナストシアにカルマンは、ギロリと鋭い視線で睨みつけると、嫌悪感たっぷりな様子で吐き捨てた。
「うるさい
おまえの指図を受ける義理なんて無いはずだ」
「おやおや。
あなたにはそんなことを言う権利はないはずですよ?」
その会話は、お互いが不仲であるかのようにさえ思える。
ううん、多分だけど僕の予想は当たってる。何となくそんな気がした。
でも、今はいがみ合ってる二人の会話を静観するのは何か違う。
こういう時、どうすればいいんだろ?
僕はすぐさま思考を巡らせようとした。
けれど、その直後――ボッ
クルトが吸い込まれたであろう本が、急に火を上げ燃え始める。
それと同時になぜかシャルルートの気配も消える。
多分だけど、クルトが死んじゃったのかも……。僕はなぜだかわからないけど、そんな最悪なことを直感的に脳裏に思ってしまった。
それと同時に、無意識だったんだと思う。
「ねえ!? この本が燃えたら、クルトはどうなるの?」
助けを乞うようにして僕は、声を上げていた。
だけど、それは特定の誰かに向けたものじゃない。だから、本来なら答えなんて帰ってくるはずがない言葉だったはず。
にもかかわらず、どうしてだろ?
まるで自身に投げかけられたと言わんばかりの態度で、カルマンが口を開いた。
「諦めろ待つのは死あるのみだ」
……待つのは死あるのみ。
つまり、クルトは死んだってこと……?
さっき、不意に僕の脳裏に浮かんだ考えが、その通りになっちゃったかもってこと?
それはあんまりすぎないかな……?
さっき、ヘレナがいなくなっちゃったばっかりなんだよ……?
僕はその事実を上手く飲み込むことができなかった。
だけど、そんな僕よりも動揺を示した人物が。
それを聞いたルフーラは、火を鎮火すれば助けることが出来るかもって考えたんだと思う。咄嗟にその火を消そうと、具現化した本から水や土系の技を繰り出しはじめる。
だけど、なぜか本を纏う火は、なにをしても消えることはなく。なにも出来ず本は墨となりスっと消えていってしまった。
それは、ルフーラの努力が無意味だったと突きつけられた瞬間。
ルフーラはそれと同時に力なくしゃがみ込み、悔しそうに地面を何度も、何度も叩きながら涙を流す。
ルフーラの気持ちは今の僕には痛いほど解る。
これは解っているつもりになっているだけかもしれないけど……。多分、ルフーラは、クルトのことが好きだったのに、そのことを伝えれず、自分の知らない所で最後を迎えたのかと思うといたたまれない。
僕の場合は恋心に気づかず、ヘレナが死んだあとに気づいたから、同じような気持ちになっているだけかもしれないけど、今この場で傷を舐め合っても仕方ない。
「ルフーラ。悔しいのは解るけど今は前を向いて。生きている可能性を信じてあげて」
僕はルフーラにそう言いながら本の持ち主を必死に探した。
けれど、どれだけ探してもその姿は見つからない。
もしかすると相打ちになったのか?
ううん。それはほぼあり得ないと思う……。ならどこへ行ったの?
そんなことを考えていると、突然フェルが声をあげる。
「そんなことよりもまずは、アイツを倒すのが先決じゃないのかガウ?」
それと同時に冷静さが戻っていく僕の心。
フェル。いつもは本当、最悪なことしかしてくれないけど――今回ばかりは助かったよ。
僕は内心でそう感謝を述べながらも一言。
「そうだね」
カルマンへと一時休戦を告げ、眼前の敵を倒すことに専念するという提案を持ちかけた。
それを受けたカルマンはどこか不満気な……それでいて安心したような……?
なんだかわかんないけど、複雑な表情をチラリ。
「そうだな……」
そう言うとギュッと強く鎌を持ち直す。
それと同時。
「先手必勝ガウ!」
フェルは戦う気満々な様子で大きく息を吸い込むと、お腹から声を出すように、蛇の骨を被ったタナストシアとテオさんに似た気味の悪い物体へと火炎を放った。




