212-新たな刺客-
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「なに!?」
僕はその音に大きく肩を跳ね上げさせながらも、恐る恐るなにかが落ちてきたのか――確認する。
砂埃が舞い、視界はかなり悪い。
だけど、若干見えずらいだけで、それがなんなのか――何となく理解できてしまった。
大柄で毛むくじゃらの体躯。それは、遠目から見ても誰だかすぐさま理解できてしまう。
でも、ここにクルトがいなかったのだけは幸いかも。
だって、天井から落ちてきたその物体、それは――テオさんそのものだったから。
それを認めた僕は、一瞬だけ硬直してしまう。
だって、もう死んでしまったはずのムーステオの店主が、今こうして、再び僕の眼前に現れたんだから仕方ないと思う。
でも、何も驚いたのは僕だけじゃなかった。
天井からテオさんが落下し、舞っていた砂埃が治まると同時。
ルフーラも目を見開き、息を止める。
その様子は、思考停止も甚だしい態度にも思える。
けど、ルフーラは完全に思考を止めることがなかったらしい。
「ねえ、あの皮と骨の被り物をしていた人は!?」
そう言いながら周囲を見渡し始めた。
けれど、この空間のどこを探したとしても、奇妙な狼の被り物をしたタナストシアは存在しない。
唯一残っているのは、クルトが吸い込まれたであろう本が無造作に地面へと転がっているくらいだった。
それを認めたルフーラは、顔を強ばらせながらも、僕へと視線を送り付ける。
その瞳が語るのは、“僕なら探せるんじゃないの?”という一縷の望み。
だけど、残念ながら僕も狼の被り物をしたタナストシアは見つけられず。
ただただ首を静かに横へ振ることしか叶わなかった。
僕が首を振ると同時。みるみるとルフーラの表情が絶望の色へと染まっていく。
そして、何かを悟った様子で、悔しげに自身の太ももを強く叩きはじめた。
けれど、僕にはどうして、ルフーラが悔しがっているのか。その理由が一切判らなかった。
生気を感じられない眼前のテオさんと思しきクマ。
目には虹彩も瞳孔もなく、白目を剥き、ダラダラとよだれを垂れ流す姿は、どこか狂気じみた雰囲気が醸し出されている。
でも、そんなクマはただの操り人形でしか無かったのかもしれない。
テオさんは、徐に手を地面へとゆっくり下ろすと、新たな敵であろう――蛇の骨を被ったタナストシアが姿を現す。
ここで応戦されれば、この蛇の骨を被ったタナストシアの能力がわからない以上、不利になり得る。
僕はどうしたらいいかと手に冷や汗を握った――瞬間。




