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会計士、転生したら万能の仙人だったけどコンプライアンスだけは譲れません  作者: もりそんば
第二十章 期末試験と幸子さんと利修のコンプライアンス
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期末試験と幸子さんと利修のコンプライアンス(10)



2031年3月。期末進級試験にて大量の赤点をとってしまった杏那さん。



これにより杏那さんは利修仙人のパートナーの欠格事由に該当し、パートナー降板の危機に瀕していた。杏那さんに最後のワンチャンスを与えるべく、幸子さんとの姉妹対決「伴侶入れ替え決定戦」が開催された。



わがまま大臣、瑞姫さん指定のセクシャルハラスメント満載な、コンプライアンス的にも真っ黒な謎審査ではあったが、勝負を制したのは幸子さんであり、杏那さんは仙人の伴侶を幸子さんに譲り渡すこととなった。



しかしながら、最初のプロジェクトRi Xiu の出動において、喫茶店経営との両立の難しさに直面した幸子さんは、早くも伴侶継続が難しいと訴えた。僕は再び、新たな伴侶を探すことを求められ、その難題に途方に暮れていた。





その日の夜。バイト帰りの自宅リビングにて。



ほかの妹たちが自室に戻っていなくなったタイミングを見計らって、リコちゃんに相談を持ちかけた。



「リコちゃん、どうしよう。幸子さんが仙人の伴侶を続けるのは難しいっていってきちゃった。」



「ひょっとして、喫茶店経営との兼ね合いですか?」



「よくわかるね。」



「昨日の時点で何となくそんな気配は感じておりましたから。お店をこちらの都合で急に閉めてまで、利修の術式行使に協力できるかどうか。一応、事前の伴侶受諾に関するアンケートではその辺りも確認したのですけどね。」



「昨日、久しぶりに来てくれた常連さんを追い出すような形で、緊急集合がかかったのが、幸子さんにとってはすごくショックだったみたい。」



「あぁ、そういうきっかけがあったわけですね。」



「とにかく瑞姫さんに相談だね。このまま杏那さんを復帰させるって判断が下ればいいけど、会長や、こぶしさんを代わりの候補者として選定するよう指示が出たら、えらいことになるね。なんとかそれだけは避けなくちゃ。」







翌日の放課後、重い足取りで、おそらくうちのリビングで香月堂のバームクーヘンを食べているであろう瑞姫さんのもとへ向かう。



「おかへり。」



予想通り、リビングでPCに向かっている瑞姫さんを発見した。バームクーヘンを口にいれているところまで、予想と寸分たがわない状態であった。恐る恐る瑞姫さんに近づいて、状況を説明する。



「・・・というわけで、幸子さんがいつ呼び出しのかかるかわからない仙人の伴侶は受け入れがたいという申し出がありまして・・・、できれば元の杏那さんを正式伴侶として再起用したいと思うのですが、いかがでしょうか?」



「う~んと、それじゃあ、杏那ちゃんの赤点補習クリアが条件。」



「えっ、それだけでいいんですか?早坂会長を次点として起用するとか、そういう話にはならなくて大丈夫ですか?」



「利修くんにとっては、早坂会長を起用する方がいいのか?」



「いえ、僕は杏那さんがいいです。」



「う~ん、早坂会長と杏那さんとどっちが面白いかな。」



「早坂会長は非常に忙しいひとですから、実務運用上の柔軟性を考えれば、幸子さん以上に、伴侶としての適性が低いと思いますよ!やっぱり杏那さんが最適任者かと。」



「ふむ。利修くんがそういうなら、まぁ、それでいいんじゃないかね。」



こちらは全力で交渉に臨んでいるのに、瑞姫さん側は二日酔いで会議に出席している文鎮の代わりにもならない部長並みの対応の軽さである。



「リコちゃん、瑞姫さんって本当に、赤点とったら交代って通達を出したのかな?」



「一応文書で通達が残っていますから間違いないと思いますが・・・」



「でも本人完全に忘れている様子じゃない?補習受ければいいなら、赤点で伴侶交代なんて絶対起きないでしょう??」



「むむむ、ちょっと、通達の発信元を少し調べてみます。」





伴侶入れ替え戦は、結局なんやかんやあって、再びめでたく杏那さんが伴侶の座に返り咲くことになった。幸子さんが伴侶受諾を辞退し、杏那さんが伴侶の座に復帰したのだ。



ただ、入れ替え戦の途中で、淑女協定の観点から、3人の間で大物議をかもした競技があった。僕のファースト模擬キスに関する競技である。



オブラート越しとはいえ、あれはやっぱりキスなのではないか?



という疑問が杏那さんから提起された。ただ、すでに終わったことであり、それについて今さら協議することにどれだけ意義があるのかは僕にはわからない。



いくつかの意見がでたが、そのうち一つの意見は、もしあれがキスにあたるならば、僕のファーストキスを幸子さんに取られたのは釈然としない。幸子さんに一定の責任を取ってもらうべきだ、という意見である。


もう一つの意見は、もしオブラート越しがキス扱いにならないというなら、この際みんなで順番に同様の方法でキスしたらいいんじゃないかという意見である。



例のグループチャットで決まったのだろう。主に杏那さんが言い出したことである。



「え、でもオブラート越しのキスがキスじゃないんだったら、避妊具を付けてて直接接触しないならエッチしてもエッチにはならないって議論になっちゃわない?その理論間違ってるかな? え、わたし変なこと言ってる?わけわかんなくなってきちゃった。・・・恥ずかしい!何言わせるのよ、りっくんのくせに。」



杏那さんが自爆気味にまた理不尽なことをいう。



「じゃぁ、ちゃんと避妊をしておけば、これからはエッチしても大丈夫って事でしょうか?」いろはさんがおずおずと問う。



「だめだめ!!いろはちゃん、それは絶対だめ。だから、やっぱり、そもそもオブラート越しのキスだってダメなんじゃないの?オブラートは避妊具じゃないけど!もうそれでいいでしょ?」



「じゃあ、例えば薄いプラスチックの板とか、薄いガラス板だったらどうなんでしょうか?」いろはさんが再びおずおずと問いかける。



「ちょっと議論の整理が必要ですね。混乱を招くようなので、淑女協定に追加しましょう。オブラート越しなど、キスに類した行為も含めすべてのキスも禁止する。ただし人工呼吸など命にかかわる事態はその例外とする。と。」



「そろそろ、いっそキスくらいは解禁してもいいんじゃないでしょうか?」いろはさんが三度おずおずと提唱する。



「いいえ、一つのキスがその先の風紀の乱れをもたらすのです。一つの例外が、多くの例外を生み、淑女協定をすこしずつ骨抜きにしていくのです。18歳の約束の日までは厳守しなければなりません。」



青山野先輩は取りつくしまもない。そこまで言われていろはさんは沈黙した。



「じゃぁ、お姉ちゃんにりっくんのファーストキスを奪った罪を贖ってもらわないといけないね。いくら伴侶交代協議の途中のこととはいえ、あれはずるいよ。」



「でも杏那さん、あなたが赤点を取らなければそもそもこんな自体にはなっていないという説もありますよ。それでも幸子さんの罪を咎めることができるのでしょうか?」



「むむむ」



青山野先輩の正論に杏那さんは沈黙した。



こうして結果、杏那さんを再び伴侶に迎える予定で、僕らは新学年を迎える。



杏那さんは春休みに赤点の補修があり、赤点補習をクリアしなければ伴侶への復帰話も水泡に帰す。しかし、もはやそれは僕には手出しできる領域ではない。とにかく杏那さんに頑張ってもらうしかないのである。



僕は杏那さんが、春休みをすべて諦めて、日々の補習に通い、再び伴侶として返り咲くことができると信じている。信じたい。信じさせてください。お願いします。



なお、リコちゃん調べの結果、瑞姫さんからの通知分は、毎年この時期に発信されるよう設定されたタスク・スケジューラーからの自動メール発信であった。瑞姫さんも当該ルールについての認識はあったものの、今年、瑞姫さんが明確な意思を持って発信したものではないことも同時に明らかになった。



この10年あまり、利修不在につき、このメールも有名無実と化していたものが、10年ぶりに意味を持ったメールだったという事である。



どうりで、瑞姫さんに何が何でも杏那さんを交代させる、という気がなかった訳である。



毎度ながら、瑞姫さん関連のイベントはだいたいこんな感じである。一生懸命対応しても、結果全力で足をすくわれる。しかし、その瑞姫さんが、依然として僕の儚い珠の緒の端を握りしめているのである。



そんな気まぐれな瑞姫さんに翻弄されるのも、哀れな子羊と思って、引き続き利修仙人とリコちゃん、杏那さん、青山野先輩、いろはさんの生きざまを見ていて下されば幸いであります。




一年生編 完




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