意識世界の旅人9 安全装置ワールドエンド
世界歴58812年。
新世界は、その中に無数の子世界を存在させていた。
新世界、それは、かつて多くの世界が生まれ、そして滅んでいった後に、、、生き残った世界である。
因果律の裁き によって滅びなかった世界だけが生き残った。
世界が、生き残るために必要なルールが、設定されていたのだ。
「与えるものが、受けとるものとなる」
その法則は、因果律の裁き と呼ばれた。
多くの者が、自滅していった。
彼らは自らの悪意によって、因果律の裁き を受けて 自滅した。
隠れた悪事も、すべて裁かれた。
ある世界は、兵器を作る競争をやりはじめ、その兵器を使い合って自滅した。
ある世界は、誰もがその世界に生きる意味を感じなくなって、子孫を持ちたいという願いも消えて、次第に滅びていった。
だが、ネガティブな悪意や欲望に染まった世界が最終的に自滅するにしても、その間に、多くの悲劇が生まれた。
そして、ついに、そうした悲劇をなくすために、世界を安全に管理する仕組みが現れた。
世界消滅システム 「ワールドエンド」 が、そうして世界管理のために使われた。
世界消滅システム 「ワールドエンド」 それは、世界そのものを、一瞬で完全消滅させるシステムであった。
何も残らない、、、対象世界の物質すべてが、ガス爆発のように一瞬で消滅する。
後には,何も残らない、、、死体も大地も空気も。。。
灰すらも残らない。
核兵器が、原子構造を変えることで膨大なエネルギーを発生するのと比べ、
世界消滅システム ワールドエンドは、あらゆる原子そのものの存在を一気に崩壊させて、純粋な無のエネルギーにしてしまう。
無の世界は、物質世界の背後に、影のように常に存在していた。
有の物質世界が、ワールドエンド によって無の世界になり、無の世界からまた有の世界が生まれる。
それは、あたかもテレビゲームのテレビの電源をいきなり引っこ抜くような感じであった。
すべては、その瞬間、一瞬で消える。
その瞬間、その世界は消えて、その世界を生きていた、、、という記憶だけが、物質世界を超えた魂たちに残るのみ となる。
その ワールドエンド の力 は、恐ろしいもの と、、、発見された当初は思われていた。
だが、それは、後に、どんな悲惨な世界でも、一瞬で消滅させることができる必要な力であると、皆に思われるようになった。
中途半端に戦争したり、憎しみあったりして多くの魂が苦しみ続けるより、その力を発動させて、その苦しみの継続を終わらせるほうが、はるかに良い場合があることに、魂の多くが気がついたのだ。
誰もが苦しむ間もなく、一瞬で、その世界の物質すべてが消える。
親に死なれて、取り残されて泣く子供もいない。
子に死なれて、嘆く親もいない。
その、すべてが消えるのだから。
支配する側も、される側も、そこに生まれる憎悪も、すべてが一瞬で終わる。
世界中のあらゆるいじめも拷問も、その瞬間にすべて終わる。
ワールドエンド は、中途半端な戦争や迫害のように、ずるずると苦しみを、発生させない。
だから、その力が、必要な力であると思う魂が次第に増えた。
ワールドエンド は、あらゆる世界の束縛や拷問などの残酷行為を、絶対確実に、無効化する。
ある者は、それなら、残酷行為を受けている人たちだけが、死んで苦しみから解放されればいいだけだ と主張した。
だが、世界の中には、いくら死んでも、また輪廻転生して その世界に生まれねばならないような 仕組み の世界も多数あったのだ。
だから、死んだら必ずしも残酷な世界から自由になれるわけでもなかったのだ。
このことに気がついた魂の多くが、ワールドエンド の有用性を認めた。
世界の愛情深い治療者たちは、体験を自由に操作する能力を持ちながら、ありとあらゆる体験を自由に楽しみ、万が一、体験操作能力が悪用されて、どうしようもなくなれば、世界消滅システム ワールドエンド」を起動させて、その悪用を終わらせることで、世界が悪意に侵略されるのを阻止した、、、
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未来の新世界歴史書には、そのような内容が書かれてあった。