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最強の運営者、クソ勇者を社会的に抹殺する  作者: 葉山 乃愛


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第5話 作られた勇者の真実と、反逆の狼煙

五十体の紅蓮のミノタウロスが一斉に足を踏み鳴らす。


第100階層の巨大な闘技場は、まるで大地震が起きたかのように激しく揺れていた。



「ひっ、あ、あああ……!」



アルヴィンは、その場にへたり込んだまま後ずさる。


先ほどまで誇示していた『勇者の力』はすっかり底を突き、干からびた肉体はまともに剣を振るうことすらできない。



「レ、レオン! 頼む、助けてくれ! 悪かった、俺が全部悪かった! 借金も俺が払う! だから、この魔獣たちを止めてくれえっ!」



涙と鼻水を撒き散らしながら、土下座をして命乞いを始める勇者。


さっきまで自分を「最強」だと喚き、仲間を犠牲にして笑っていた男の無様な末路だ。



俺は玉座で足を組み、冷たい目で見下ろした。



「助ける? どうして俺が、自分を殺そうとした奴を助けなきゃならないんだ?」



「お、俺たちは仲間だろ!? 何度も一緒に死線を潜り抜けてきたじゃないか!」



「その死線を作っていたのはお前だろ。俺はそれを裏で必死に片付けていただけだ。……やれ」



俺が指を弾いた瞬間、先頭のミノタウロスがアルヴィンに向かって巨大な戦斧を振り下ろした。



「ぎゃああああああああっ!!」



鈍い音と共に、アルヴィンの両足が完全に砕かれる。


さらに別の個体が突進し、彼の腕を踏み躙った。



闘技場に響き渡るのは、かつての英雄の絶望に満ちた絶叫だけ。


だが、俺は彼を簡単には殺さない。


致命傷を負う寸前で、闘技場の床に仕掛けた『微弱な回復陣』を起動させ、痛覚を保ったまま死の淵から引き戻す。



生かさず、殺さず。永遠に続く恐怖と苦痛のループ。



『うわぁ……エグい。でも自業自得すぎる』

『仲間の命を吸い取って生き延びたんだから、これくらい当然の報いだろ』

『ざまぁみろクソ勇者! そのままミンチになっちまえ!』



配信のコメント欄は、同情など一切なく、冷酷な喝采で埋め尽くされている。


国民の熱狂は頂点に達し、俺の手元のダンジョンポイント(DP)は、ついに表示限界カンストを突破した。



「さて、アルヴィンへの教育はこの辺にしておくか。……出てこい、アリア」



俺が莫大なDPを消費して呼びかけると、玉座の隣に光の粒子が集まり、一人の少女が姿を現した。



漆黒のメイド服に身を包み、透き通るような銀髪と紅い瞳を持った美しい少女。


彼女は迷宮の意思コアそのものを、俺のDPによって受肉させた『ダンジョン・ナビゲーター』のアリアだ。



「お呼びでしょうか、マスター。極上の紅茶を淹れましたが、いかがですか?」



アリアは凄惨な闘技場の光景など一切意に介さず、優雅な所作でティーカップを差し出してきた。


その感情の読めないクーデターな態度と圧倒的な美貌に、配信のコメント欄が瞬時に『かわいい』『俺もそのダンジョンに就職したい』と沸き立つ。



「ああ、もらうよ。それとアリア、下で転がってるあのゴミから『勇者の紋章』を剥がしてきてくれ」



「畏まりました。汚物は速やかに処理いたします」



アリアは闘技場へとフワリと飛び降りると、怯えるアルヴィンの胸ぐらを掴み、その胸に刻まれた紋章を物理的に、ベリィッ! と引き剥がした。



「あぎゃあああああっ!」



血の飛沫が舞う中、アリアは一切服を汚すことなく、奪い取った紋章を持って玉座へ戻ってくる。



俺はその血塗られた紋章をカメラに向け、再び【超鑑定】のスキルを発動させた。



「さて、王都の皆さん。ここからが今日一番の特ダネだ」



俺の言葉に、配信画面が水を打ったように静まり返る。



「この『勇者の紋章』。国から選ばれし者に与えられる聖なる力……と、皆さんは教えられてきたはずだ。だが、俺の鑑定結果は全く違う」



空中に表示された鑑定結果ステータスを、俺は読み上げた。



「名称:『隷属と搾取の呪印』。付与者:国王陛下。……効果は、周囲の人間の生命力を吸い上げ、最終的に宿主の命を削って起爆する、人間爆弾の呪い」



『……は?』

『呪印? 国王陛下が? どういうことだ!?』



混乱するコメント欄。


俺は紅茶を一口飲み、残酷な真実を突きつけた。



「つまり、アルヴィンは勇者でもなんでもない。国が邪魔になった実力者や、発言力を持つ冒険者を『事故死』に見せかけて始末するために用意された、ただの歩く処刑装置ピエロだ」



俺はアルヴィンを見下ろす。



「国はお前のような『プライドが高くて扱いやすい馬鹿』を選び、偽りの名声を与えて天狗にさせた。お前が仲間を吸い殺せば殺すほど、国の邪魔者が消えていくって寸法さ。お前は利用されていたんだよ、腐った国家の連中にな」



「う、嘘だ……俺は、俺は選ばれた存在で……」



真実を知り、心から信じていた国家にすら使い捨ての駒にされていたと悟ったアルヴィンは、完全に心が折れ、虚ろな目で床に這いつくばった。



『嘘だろ……国王が、冒険者を暗殺してたってのか!?』

『孤児院の金も横領されてたし、この国、上が完全に腐りきってるじゃねえか!』

『ふざけるな! 俺たちの税金をなんだと思ってる!』



怒りの矛先は、ついに『天上の凱歌』から、彼らを操っていた国家そのものへと向いた。


王都では暴動の一歩手前まで国民の怒りが膨れ上がっているはずだ。



「マスター。迷宮の上層部にて、多数の高レベルな魔力反応を検知しました」



アリアが静かに報告する。


モニターを切り替えると、迷宮の入り口に、全身をミスリル装備で固めた数百人規模の軍隊がなだれ込んでくる映像が映し出された。


国王直属の最強戦力、『近衛騎士団』だ。



国家の暗部を世界中に暴露された王城の上層部が、慌てて通信を物理的に遮断し、俺の口を塞ぐために実力行使に出たらしい。



「ふっ……来るのが遅えよ」



俺は立ち上がり、カメラに向かって不敵に笑いかけた。



「見ろ、図星を突かれた無能な国家が、俺を消しに軍隊を送り込んできたぞ。……いいだろう、受けて立ってやる」



俺は迷宮の全階層のトラップ制限を解除した。



「ここから先は、俺とこのダンジョンが、腐った国家そのものを公開処刑にしてやる。お前ら、絶対に見逃すなよ」



反逆の狼煙は上がった。


底辺の鑑定士による、国家を巻き込んだ規格外のダンジョン運営が、今、本格的に幕を開ける。

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