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最強の運営者、クソ勇者を社会的に抹殺する  作者: 葉山 乃愛


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第11話 歪められた評価と、白銀の剣姫

王都の機能が『迷宮ダンジョン』として再構築されてから数時間後。



冒険者ギルドのロビーは、かつてないほどの混乱に包まれていた。


無理もない。昨日までふんぞり返っていたギルド長や上層部の人間が、悪徳貴族たちと共に突如として姿を消し、床にぽっかりと開いた大穴に飲み込まれたという噂が広まっていたからだ。



「おい、これから俺たちの依頼クエストはどうなるんだ!」


「ギルド長が消えたってマジかよ! 報酬の支払いは誰がするんだ!」



荒くれ者の冒険者たちが怒号を上げ、受付嬢たちが涙目で震えている。


その時、ギルドの入り口の扉が勢いよく蹴り開けられた。



「騒ぐな、馬鹿共。みっともない真似を晒すんじゃないわよ」



凛とした声と共に現れたのは、身の丈ほどもある大剣を背負った美しい女性だった。


プラチナブロンドの髪をポニーテールに束ね、鋭い眼光を放つ彼女は、王都で最年少にしてAランクに登り詰めた実力者、『白銀の剣姫』セレス。



彼女が一睨みすると、騒いでいた男たちはヒッと息を呑み、一瞬で静まり返った。



「上層部が消えたなら、新しいルールに従うまでよ。……私が直接、その『ダンジョンマスター』とやらに話をつけてきてあげるわ」



セレスは呆然とする冒険者たちを背に、一人で迷宮の中心部ーーかつての王城へと足を踏み入れた。



一方その頃。


俺は玉座の間で、特大モニターに映るセレスの姿を眺めていた。



「マスター。Aランク冒険者の単独侵入を確認しました。いかがなさいますか?」



俺の背後の影から、音もなくリーシャが姿を現す。


昨夜命を救われた彼女は、完全に俺の『影』として暗躍する隠密部隊の長となっていた。その忠誠心は、すでにアリアやギルバートにも引けを取らない。



「通してやれ、リーシャ。彼女には昔、世話になったからな」



「……畏まりました。マスターの御心のままに」



リーシャが影へと溶け込むのとほぼ同時に、玉座の間の重厚な扉が開いた。


警戒度を最大まで高め、大剣の柄に手をかけて入ってきたセレスだったがーー玉座に座る俺の顔を見た瞬間、その目が限界まで見開かれた。



「……嘘、でしょ? レオン……なの? 死んだって聞いてたのに……」



「久しぶりだな、セレス。俺がここを仕切ることになった」



セレスは俺が底辺の荷物持ちとして扱われていた頃、唯一、俺を対等な人間として扱ってくれた恩人だ。


他の冒険者が俺の食事を奪った時、彼女だけは自分の干し肉を無言で分けてくれた。その恩を、俺は忘れていない。



「ちょっと待って、どういうこと? あんたの【鑑定】は、教会から『最弱のゴミスキル』って判定されてたはずじゃない!」



混乱するセレスに、俺はモニターの操作パネルを弾きながら答えた。



「あの教会の『ステータス測定器』は、国王が裏で作らせた魔道具だ。自分の王位を脅かすような『規格外のスキル』を持つ人間を、意図的に『無能』と判定して社会の底辺に落とすためのな」



「なっ……!?」



「アルヴィンのような見栄っ張りの馬鹿を勇者に仕立て上げ、俺のようなシステム干渉系のスキル持ちは荷物持ちに落とす。すべては王の保身のためさ」



その事実が配信を通じて王都中に流れると、視聴者たちは再び国王への罵倒を書き込み始めた。


セレスはワナワナと震え、信じられないという顔で俺を見る。



「じゃあ……私が迷宮で戦う時、いつもなぜかトラップが解除されてたり、魔物の弱点が不自然に露出してたのは……」



「ああ。俺が後ろからこっそり【超鑑定】で構造を書き換えて、お前をサポートしてたんだよ。干し肉のお礼にな」



セレスの顔が、一気に真っ赤に染まる。


自分が天才だと思っていた快進撃の裏に、ずっと俺の加護があったと知って恥ずかしさと感動が入り混じっているようだ。



「マスター。お話の途中ですが、緊急事態です」



空気を読まないアリアの冷静な声が、玉座の間に響いた。



「冒険者ギルドの地下。昨日廃棄した人工コアの残骸から、国王が仕込んでいた『死のフェーズ』が起動しました」



モニターの映像が切り替わる。


ギルドの地下深くから、夥しい数の魔物の死骸を継ぎ接ぎにしたような、悍ましい巨大なキメラが咆哮を上げて這い出してきたのだ。



国王が、自分が殺された時の腹いせとして王都に放つよう仕組んでいた、最悪の自律型兵器。



「ギルドが危ない……っ! 私が行くわ!」



大剣を抜き、駆け出そうとするセレス。


だが、俺は玉座に座ったまま彼女の背中に声をかけた。



「歩いて行くには遠すぎるぞ、セレス。それに、今のお前の剣じゃあのキメラの装甲は抜けねえ」



「でも、誰かが止めなきゃギルドの奴らが……!」



「安心しろ。今日から俺がルールだと言っただろ?」



俺はダンジョンポイント(DP)を消費し、マスター権限を起動した。



「セレス。お前を新生・王都ダンジョンの『ギルドマスター』に任命する。……俺の力を貸してやる、ぶっ飛ばしてこい!」



直後、セレスの身体が黄金の光に包まれる。


俺が【超鑑定】で彼女のステータスを最適化し、迷宮の魔力を直接大剣に付与したのだ。



「え……!? な、なにこれ、力が……無限に湧いてくる……!」



「アリア、セレスをギルド前へ強制転送ワープさせろ」



「イエス、マスター。いってらっしゃいませ、新ギルドマスター」



アリアが指を鳴らすと、セレスの姿が玉座の間から掻き消えーー次の瞬間、配信モニターの中、暴れ狂うキメラの頭上に転送された。



黄金のオーラを纏ったセレスが、重力に従って大剣を振り下ろす。



「消し飛びなさいっ!!」



閃光。


轟音と共に、王都を脅かすはずだったキメラは、ただの一撃でチリ一つ残さず完全に消滅した。



ギルド前で震えていた冒険者たちも、配信を見ていた視聴者たちも、その圧倒的な光景に言葉を失い、直後に割れんばかりの大歓声を上げた。



『一撃!? あのバケモノを一撃かよ!』

『レオンのバフ、エグすぎるだろ!』

『セレス姐さんカッコよすぎ! ついていきます!』



ギルドの冒険者たちは、空から舞い降りたセレスに向かって、次々と膝をつき頭を下げ始めた。


こうして、冒険者ギルドも完全に俺の支配下システムへと組み込まれたのだ。



だが、モニター越しにキメラの消滅跡を見ていた俺の【超鑑定】が、ある小さな『遺物』を見逃さなかった。



「……アリア。キメラの灰の中に落ちているあの黒い結晶を、ここに転送しろ」



俺の手元に現れた、手のひらサイズの歪な結晶。


鑑定結果を見た俺は、思わず目を細めた。



「……なるほどな。あの豚王、人工コアを自分一人で作ったわけじゃなかったのか」



名称:寄生魔石の欠片。


製造元:北方領土・ガルドス公爵領。



「マスター。ガルドス公爵といえば、王都に匹敵する私兵を持つ、国内最大の武闘派貴族です。王の死に乗じて、この迷宮(王都)を奪いに来るやもしれません」



アリアが冷たい声で警告する。



「上等だ。向こうから来てくれるなら、わざわざ出向く手間が省ける」



俺は黒い結晶を握りつぶし、不敵に笑った。


王都を平定した俺たちの次なる獲物は、北の軍事公爵。


ダンジョンの防衛網をさらに強化する、最高のエンターテインメントの幕開けだ。

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