第1節 魔女が営む探偵事務所②
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PM4:20 探偵事務所 如月
刑事達による、情報提供に付き合わされ、笑顔で見送り椅子へと座る。厄介なのが来た事により、私の疲れが増してくる。
「お疲れ様。まさかいきなり、道警の刑事さんが来るなんてね」
「あぁ。全く、誰の伝手で来たのがさっぱりだが、面倒なのが来たよ」
受付をしていた私の妹、ラスティアは今日分の決済をしながら、私に言う。窓を開けて煙草に火をつけ、煙を吐く。ラスティアは、おかわりのコーヒーを私のマグカップに注ぐ。
「それで?明日行くの?」
「約束してしまった以上はね。捜査本部は中央警察署でしょ」
「あそこしかなさそうだしね。店番はどうするの?」
「君と明日香に任せるよ。それより、あっちから連絡は?」
「まだ来てないよ。多分、姉さんの方に直接来ると思う」
ラスティアは、自分の分の紅茶を飲み、資料をまとめる。煙草を吸ってると古い電話が鳴り響く。私はすぐ、受話器を取り応答する。
「もしもし」
『あら?アルじゃないの。てっきりラスティアが出ると思ってた』
「セシリアか。どうしたの?」
電話の相手は、知り合いであるセシリアだった。
どうやら、暇を持て余しているらしいが、話の口調からそうではない様だ。
『あなたが出たらなら丁度いいわね。実は、色々と話し合いたい事があったのよ』
「へぇそう。例の件なら、私も今追ってるよ」
『それなら、話が早いわね。今晩一緒にどうかしら?』
「別に構わないけど、やってるの?このご時世で」
『確かにそうね。この国はやってないだけで、人の流れはそれなりにあるものね。ロンドンなんて全滅よ』
「この国はロックダウンなんて無いさ。なら、うちに来なよ。探すよりもマシでしょ」
『えぇそうね。そうさせてもらうわ』
セシリアは、電話を切り、私も受話器を置く。
吸い足りないので、もう一本煙草を口にくわえ、火をつけようとしたが、ライターに火がつかない。
「オイル切れだったな。後で足しておくか」
ZIPPOのオイルが底を尽きたみたいなので、小杖で火をつけようとした。しかし、誰が指に火を灯してくれたみたいで、それに甘えて煙草に火をつける。
「明日香か。もう帰ってきたの」
「君が電話をしている間にね。気づくまでここで横にさせてもらったけど」
この屋敷に居候をしている、七森明日香が事務所に帰ってきたいた。
私がセシリアと電話していた時に、戻ってきたみたいで、通話が終わるまでの間そのソファで横に待っていたようだった。
「それで、外の様子は?」
「相変わらず殺風景だったよ。店はどこもやってないし周りはマスクしてる奴らでいっぱいさ」
「政府直々の規制要請だしね。まぁ、『魔術師』には打って付けの環境だ」
「まぁ、例の件も対して動いてないよ。奴らは昼間は好まないって君が言ってたしね」
「それもそうだな。昼間でやるやつなんて、イカれた奴らしかやらないさ。この街じゃ特にね」
調査をしてきた明日香は、私に報告をする。例の事件については、手付かずだったみたいだ。煙草の火を消し、事件の資料を纏めてるファイルを覗く。すると、ラスティアが事務所の扉を開けた。
「2人とも、ご飯が出来ましたよ」
「うん。今行く」
「そんな時間か。なら、食事にするとしよう」
ファイルを閉じ、明日香と共に食堂へと向かう。3人で暮らしには大きすぎる食堂で、私達は食事を始めるのだった。
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向かおうとするが、後ろから気配を感じて振り向く。
「いいのかしら?あんな警官の依頼を受けて」
漆黒のドレスに身を包んだ仮面の女が、ソファーに座る紅茶を嗜みながら話かける。アフタヌーンティーごと事務所に来た様だ。
「別に。邪魔になったら私だけでも肩を付けるさ」
「それだったら私的には助かるんだけど」
溜息を吐きながら、振り向く。私は、その隣に座る。
「あの警官、しっかり目を張りなさい。面倒な事が起きるわ」
「目を張る。どういう事だ?」
「あの警官の中に死人が出るわ。一緒に動くのはいいけど、十分気をつけなさい」
「……肝に免じておくよ。君が言う事は大体あってる訳だし」
「あなたも自分の身を知りなさいな。まぁ、知っているだろうけど」
彼女は、私に何かを渡す。亜空間から、タブレットを出し、それを私に渡す。私はそれを受け取ると、ボタンを押し起動させる。しかし、ラスティアの声が聞こえ、振り向く。私はドアを開けるが、また振り向くと彼女が消えていた。
テーブルに置き紙が置いてあり、取ってみるとパスワードが書かれていた。やれやれと思いながら、改めて私は食堂に向かうのだった。
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