act10 怖い話をしちゃうぞ
act10 怖い話をしちゃうぞ
寝て泣いて、少し冷静になった。
自分が利己的で嫌な奴だと自覚して泣いただけだ。
体は今日も元気に主張する。出して食えと。
認めれば、自己嫌悪以外で思うのは、非道に対する恐怖だ。悲しみよりも恐怖だ。
至る道程を考えると、おぞましい。
若い娘をあのように。
それと、私たちの前に置いた意図。
行動を予想されていたこと。
多分、私とその周辺、戸田と接触のあった人間を把握している。
考えるのを止めた。
考えて、どうするのか?
窓の外、今日は晴れていた。
ご飯を食べて、薬を飲もう。
調子を崩しそうだ。
起きて、食事を食べ物にありつく算段を頭に描く。
食堂、やってるかな?
岡田も鈴木さんも、そして鳥越のおっちゃんも、既に出勤している時間だ。私は自主休業。
モソモソと起き出し、廊下に出て気がつく。
二つ折りのメモ書きがドアに貼られていた。
(今日はゆっくり休むお
おいちぃモノ買って帰るね
それからそれから、生き残りと連絡とれたでしゅ
皆には、ひみつ(^з^)-☆
ちょっとお友だちになってきゅるねー
そしたら明後日、一緒に帰りまちょ
行ってくるね、ママー( ´∀`)/~~)
色々ひどい伝言だった。
しっかりしろよ、と言う事なんだろうが。そうだよな?
スマホが無いのでタブレットでメールを飛ばすが、返信がない。
心配半分、怒り半分で帰りを待つ。
そして、早めの夕飯を食べていると岡田が帰ってきた。
「お土産お土産ー、ママーただいまー」
差し出されたのは最中と、どら焼きだった。
可愛い動物の最中に、バターとアンコのどら焼きだ。
何処に突っ込むべきか。
突っ込みどころばかりで面倒臭くなった。
どーでもいいや、と黙って土産を受け取った。
今夜は海老天丼だ。
喜ぶ岡田を見ながら、私はお茶をいれた。
今日は券売機のある大食堂である。
戸田の件で、本格的に人員が行き来するようになる。なので宿泊施設を本稼働。今は施設全体がバタバタしている。そして、大食堂も稼働を始めたので、その端っこのテーブルで食べていた。
「俺的情報網を駆使して、内緒話っす」
何も言わない私に、お茶を受けとると岡田は言った。
「伊豆で動画を撮る理由は、こっちにリーダーが勤めているからなんす」
「リーダー?」
「五人組のリーダー、今、行方不明の奴っすね。んで、そのリーダーの現地友達に渡りをつけました」
「警察に言ったよな」
「お土産買いに行っただけっすよぅ」
「アウトだろ、つーかどうやった?」
「俺の従兄、会社の下請け」
「やだ、聞きたくない」
「もともと地元枠の素行調査をしてたんすよ」
「下請けって」
「調査会社っすね、だから、裏事情も他人よりは知っている。だからどうしても、俺は戸田が嫌いだった。生憎、憐れだとは思いますが、悲しくないんですよ」
「私もだよ、ショックだが悲しくない」
私の自嘲に、岡田は箸を置いた。
「でも、後悔してる。もっと何かできなかったかって。俺からすれば、戸田はね、ゲスの一人ですよ。当然の末路」
「悪かった、私が悪かったよ」
「俺はイイ人ではないんで」
「いい奴だよ、わかったグジグジすんの止める、ごめん」
「ママが優しいのはボクちんだけでいいのー」
「黙って食え」
再び岡田は食べ始めた。
「多分、今夜にもリーダーの奴は警察が見つけますよ。奴は現地友達のところに転がり込んでましたから」
「無事だったのか?」
「犯人かもですよ」
「無理だ」
「なぜです?」
「衝動的な犯行の、これが事件か?」
それに岡田は笑った。
「まぁバカでゴミクズには無理ですね、社会のゴミ」
「そういう事を言うな、思っても言って欲しくない」
「ごめんなさいママー。でもね、奴等、胸くその悪くなるような犯罪行為をしてたんだよー。ハイハイ、わかりましたよ梅さん。
でも、聞いてください。奴等はね、例のストーカーの偽証みたいな胸糞やってたんすよ。
だから、そっちの犯罪がバレそうで警察に保護を求められなかった。で、これは俺と従兄弟の推測ですが」
構図が浮かぶ。
岡田の言わんとすること。
犯罪のリンクだ。
彼ら被害者は、加害者であり、事件の遠因でもある。
まぁ岡田の情報が確かならばであるが。
「聞かない、今は止めとけ」
「えぇーせっかく仕入れてきたんですからぁ」
「今は止しとけ」
「ちょー面白いのにぃ」
「岡田よ、ともかく、黙れ今な」
「まぁまぁそう言わんと、ごちそうさまでしたー、続きは俺の部屋でじっくりと」
「じっくりと、何だ?オメェ、ちょうしくれてんじゃねぇぞオラ」
岡田の後ろにおっちゃんと、柄の悪そうな男がいた。
私は背後を壁にして座っていたので、入り口が見えていた。岡田は対面なので背後が見えず、又、食堂もざわざわとしていたので接近に気がつかなかったのだ。
「おう、助平根性出るくれぇ元気そうじゃねえか、コウイチよぉ」
悪そうじゃない、柄の悪い男だ。
久しぶりのパンチパーマを見て、私は挨拶するタイミングを逃した。
「おう、日動警備の合田だ。えらい目に遭ったな、体の事もある。一旦撤収で。後日、色々聞かれることになるが、警察にしろなんにしろ会社から弁護士が行くから。それまでは自粛でな」
パンチの小柄なおっさんは、私に向けてにこやかに告げた。
チンピラ臭漂う外見に反して、愛想がいい。もちろん、両手で顔を覆う岡田をずっと蹴りあげているが。
「助けて梅さん、売られちゃう」
「相馬が喜んでたぞーおらぁ」
「はじめまして、本部研修宿泊施設長の西原です。岡田のサブメンターをしております。お帰りなさい、室長」
一応、サブメンターという言い訳をするようにと労災書類発行時に仕込みをされていた。なので名乗っておく。
「おぉ、よろしくな。まぁこんな美人が指導役なら、ワシらの方には来たかねぇかコウイチよぅ」
「おう、大丈夫か西原ちゃん。おぉ天丼だな、作ちゃん飯にしようぜ。それからセクハラっぽい言動は止めて、あっちと違うんだから」
ちなみに合田作治は警備会社の人事部長で、おっちゃんと同期。
そして、岡田は出荷が決定したようだ。
※※
安定した精神構造の人間は、周囲の人間をも安定させる。
それが合田作治の印象だ。
この人は怖いタイプだ。
冷静沈着、そして頭の切れる、外見とは真逆だと感じた。
もちろん、言動と外見通りのおっさんかもしれない。
だが少なくとも、本社の人間が惨殺されても客観視して、どう動くべきかを考えられる大人だ。
つまり、私としては安心感を覚える。
あとは任せただ。
そんな合田さんは天丼のトレーを岡田の隣に並べると、にやっと笑った。
「まぁ三ヶ月ほど揉んで、殻がとれたら近くに配属してやるよ。オメェの頑張り次第で、おっちゃんが口を利いてやろう」
「ほんとっすか?」
「相馬が納得すればぁなぁ」
と、岡田としゃべっている。
「理由もわかったぜぇヒヒヒ」
「クッソ腹立つぅ」
「こう言う時は感謝の言葉と賄賂な」
「恭二に言っとくっす」
「ボトルでなぁ」
「賄賂を公然と要求するってどうよ」
「別に関西か東北でも、俺は構わないんだぜぇ?家族もちより一人もんの若者の需要は大きいからなぁ。アジア方面の企業とも提携してるし、ちょっくらフィリピンで研修するかぁキヒヒヒ」
お茶をいれるとおっちゃんとおっちゃん2号?に渡す。
「仲良いですねぇ」
「ありがとうねぇ、こいつね。こいつの家族から言われてんの。サボらないように時々締めてくれってねぇ。こいつのね、ジイサンと呑み友」
「んで、相馬の先輩だから兄弟子な、笑えるよな。ガキの頃からの悪さ全部知られてるから逆らえねぇんだわ」
おっちゃん1号は、お茶を受けとると首を振った。
「まぁ今回は本当に悪かったね、西原ちゃん。本社にも連絡してあるから。仕事は少し休みなさい。不安があれば、私に連絡するように。私では無理なら、教育リーダーでも良いからね。」
真面目な言葉になおして、鳥越のおっちゃんが言った。
「んで、俺からの忠告」
合田も表情を改めると私の方へ顔を向けた。
「メールアドレスに電話番号の変更と、変更後の周知は近親者と警備のみに限定する。社内連絡は社内携帯のみにして、連絡手段は確か施設に居住だから施設固定で行うこと。外出に際しては、近所でも個人と社内携帯の両方を持ち、外出先は何処かをはっきりさせる」
黙る私に、彼は続けた。
「移動先を告げる相手がいない場合は、メールで、そうだなコウイチでいいや。こいつにメールを送る。コンビニに行くでもいい。それで帰宅したら帰宅でメール。本人かどうかの符丁も決めておけばいい。」
面食らう私に、彼はゆっくりと頷いた。
「一度施設の部屋も改める。このバカなら出入りしても目立たないつーか目立つが理由はつけられる。部屋と施設回りを改めて、部屋の鍵はうちの方から交換して」
「ちょっとまってください、それじゃまるで警護対象」
「落ち着いて」
おっちゃん1号が箸を置くと、困ったように言い食堂内に私達以外が側にいないことを確認すると言った。
「公式ではないが、怨恨の殺人じゃない可能性がある」
岡田が顔をしかめた。
「それ」
「そうだよ」
合田とだけわかりあえる会話をする二人を他所に、鳥越のおっちゃんは小声で言った。
「何処に飛び火するかわからない。西原ちゃんの携帯のアドレスは相手が把握してる。そして、選んで君のところへメッセージを送った。戸田ではない。そして、戸田の交遊関係を相手は知っている。」
「公式ではないが、腐乱死体の殆どが女だ。変質者のサイコ野郎の可能性がある」
「いや、私には関係ないでしょ」
「ナニ言ってんの、この子は」
「あーあざといとかじゃなくて、この人マジなんす。女子友少ないタイプなんす」
「ケンカ売ってんのか岡田」
「オタサーの姫とは属性が違うんすが。うーん、梅さんは女の子なんですよ」
「当たり前だろ」
「変質者に気を付けましょうね」
「そりゃ怖いからね。でも、あぁ‥」
性別が女ならいいのか。
多分、土偶のような表情になってると思う。
「あっ、梅さんが壊れた」
「一度に言い過ぎたか?」
「戸田の交遊関係の女には全部警戒させねぇと」
「特に彼女には伏せられないだろ」
「俺、研修パスして梅さんの側に」
「オメェがストーカーになりそうで怖いわ」
「だってこの人は、性別を忘れてるタイプで隙だらけなんですよー」
「忘れてないから」
「言い直します、なんでそう卑下すんのー自己評価が低すぎても、嫌味ですよ。だから女子友いないんすよーママ〰️」
「いるから、地元に女子友いるから。なんなのコイツ」
「岡田よ、素直に言えば通じると思うぞ。なんでそう変態なんだよ」
「昔からお前は巨乳好きだったな、婆さんはお前の将来を本気で心配してたぞ」
「サラット、セイヘキヲ、バラスナヨ、クソジジイドモ」
わいわい楽しそうだ。
うらやましい限りだ、こっちは嫌なことが多すぎる。
「岡田、お土産食べていいか?」
「食べて元気だして、ママ〰️」
「つっこまないからな」
※※
部屋に戻って暫くすると岡田が来た。
今後の予定、新たにアドレスを取得して番号を変更してからの符丁についてと、続きの話だ。
私が土偶になったのを見て、岡田がおっさんSの後をひきとった形だ。
就業中に社員が失踪殺害されたとあって、周辺女性への警戒の指示が出たそうだ。社命として。
もちろん、あからさまなのは私と牧野さん、そして戸田と特に仲の良かった同期の数名。彼女のスマホに保存されていた女性だ。
特に私はメッセージを受け取っている。
会社施設で暮らしているので、何の対策もなく、何かが起きたら大問題。
牧野は言わずもなが、他は注意警戒を促すそうだ。
「どら焼き美味しかったぞー」
「でしょでしょう!あの店の餡は絶妙な甘さなんす〰️」
「油分糖分高カロリーを摂取して満足じゃ、して続きを話せ。ただし、詳細はいらん」
窓辺からは木々と水の流れが見える。
私はタブレットを弄りながら、岡田が座布団に落ち着くのを待ってから促した。
「タブレットに送った二つのアドレスを確認用に。両方に送信してください。1つは保険です。個人的な連絡は今までのアドレスでお願いします。」
「わかった、わるいな」
「いえいえ、二人は〰️仲良しぃ〰️」
「ありがたみが減った、保険てことはお前のアドレスじゃないんだな」
「俺が見れなかった時の保険ですよ」
「まぁそりゃそうだよな」
「符丁を決めますか、好きな食べ物?」
「それは絞り込めんな」
「好きな色とか?」
「あり得ないワードが良いんじゃ?」
発想力と知能が貧しいタイプ二人で首をひねる
「好きな歌とか、最近何聴いてます?」
側に置いてあった携帯型の音楽プレイヤー。それを指しての言葉に、機械ごと手渡した。
そして、耳にして岡田の顔が面白いことになった。
「どうした?」
「予想外のロック」
「オルタナティブメタルだ」
「洋楽オンリーとは、それもメタル」
「邦楽も好きだぞ」
「いや、回りの女子がアイドル好きで。メタルとかあんまり知らないっす」
「私も邦楽、最近のは知らないなぁ、有名なボーカルのしか」
「んじゃ一番好きなアーティスト」
「マ〇〇ン·マ〇ソン」
「誰っすか」
「Goo□□e先生に聞きなさい」
「うわーエグい」
「カッコいいだろうが、特にこれとこれな、つーかなんで知らんの」
「wikiがすごいですね、俺の親の年代じゃないっすか」
「まぁすでに伝説だからなぁ、映画音楽とか色々使われてるから、これとか。聴いたことはあるんじゃない」
「顔が怖い、いや、何これホラー映画」
「元々の歌詞がホラーなんだよ、元歌がこっち」
「元歌は美人なオネエサンすね、跡形もないっす」
「歌詞は同じだし、脳みそ溶ける内容だぞ」
「梅さんは物理現象しか怖くないんすね、これホラー映画っすよ、このPV」
「何の話だっけ」
「この芸名から符丁をとるのはあれなんで、マリリンで」
「そりゃ下は犯罪者ネームだしな、つーかお前がマリリンな」
「なんで俺、梅さんがマリリンでしょ」
「符丁だからな、そんで私が、どら焼き」
「うわ、何の割り符にもならん」
「だから予想もつかんで良いだろ、バター餡旨かったし」
「ジャイアンな思想」
「んじゃジャイアンで」
「俺がいやー」
「わがままだなぁ」
で、結局、会話とは何にも関係のないハンドルネームと符丁になった。
私が小梅でコーメイさんで、元気なら食べたいものの名前を添える。
岡田の登録はマリリン。
もう一つのアドレスは酒屋。
なんでって聞いたら、これで岡田と合田はわかるそうだ。
「面倒くさいなぁ」
「まぁまぁ女子の一人暮らしなんですから」
「大丈夫だと思うんだよね〰️基本、引きこもりだし」
「行動パターンが固定化されてるのが逆にヤバイんですよー」
「嫌な世の中だよ」
「さて、これで梅さんと俺はラブラブぅー」
「いいなぁその前向きな性格」
「で、真面目な話。個人的な交遊関係でメールアドレス変更を教えた場合、その他に教えないように対策をするか、設定を登録番号以外はブロックで。まぁ携帯その物を買い換えちゃいますから、その時に」
「まぁうん」
「そこまでするかって思ってるっしょ」
「うん、面倒だし」
「しょうがないなーここから怖い話をしちゃうぞ」
※※
岡田達は蓋を開こうと苦心した。
しかし、開かない。
どうしようかと言う所で、クラクション。
増援と救急、そして、現場の確保と共に重機が投入された。
下に、人間がいると思われたからだ。
平行して付近の探索も始まり、祭りの様相だ。
私は診察後、鈴木さんと一緒に現場から離された。
ショック状態の私を現場に残す意味がないからだ。
おっちゃんと若いのは会社への対応。
そして、同道者で残ったのは岡田だ。
元々の発端を知り会社の人間であるから、残されたわけであるが。
本来、ここから先は警察オンリーのはずなのに、下から発見された人間の面通しをさせられた。
戸田に関連があるか知りたかったのようである。
「もちろん、引き上げられたのを見ただけで地下には降りませんでしたよ」
担架に乗せられた者を確認した。
一人は生きていた。
応急処置をし、鎮静剤鎮痛剤を打たれたのか静かだった。
頭部まですっぽりと布がかけられており、回りから中身が見えないようになっていた。
それを素早く救急車両にのせると作業する隊員と医者の間から岡田に見せた。
「目元ぐらいしかわからんかったですが、一応思い当たるメンバーの名前を出しました。こっちも戸田の交遊関係を事件後調べたことも含めてね」
で、それから作業する鑑識から回されてきたポラ写真を見せられての証言。ついでに流れるように昨日からの行動の尋問までが行われた。軽く供述書にもサインしてきたそうだ。
「怖い話を梅さんに、誰も言いたくない。俺も言いたくない。けれど、怖くないから用心しない」
藪で見えなかった戸田の膝から下はなかった。
地下で見つかった生きてる方の男には、目元から下と頭部の皮膚がなかった。
残骸になった男には、あるべき臓物がみつからない。
「腐乱死体も体の一部が無い」
戦利品を持ち帰っている可能性、拷問の形跡。
「どのタイプかはわからんですが、シリアルキラーって考えてもいいと思いませんか?
まぁ、どのタイプでもよくないですけどね。
ただし、獲物に選んでいる基準が、何であるかはわからない。
女ならいいのか?
男も殺しているから顔見知りなのか。
それとも社会的道義だと信じて拷問しているのか?
単にすれ違ったから?
挨拶をされたから?
ねぇ、もしも相手が俺のような大きな男だったら、梅さんなんて片手で拉致できますよ?
もちろん萎縮して暮らせって訳じゃありません。
ちょっと不便だけれど、ひと手間かければ安全度が上がるってことです。そして、ちょっと五分ぐらいとか一瞬外出るからいーやーとかは無しですよ。いま、俺は電波を受信しました。
梅さんは、そーしてホイホイ出歩くんですよ」
「その現場の話、オフレコで言ったらダメな奴じゃないの」
「だーかーらー」
「わかった」
「ほんとに?」
まぁ、戸田とは会社内での関係だ。そしてスマホは多分事件解決まで帰ってこないかもだし。アドレスデータはタブレットにもあるし。大丈夫だと思うんだよな。
犯人は、私の送った所在確認に反応しただけだと思う。
私個人には興味は無い、はず。
もし、あるとすれば、もっと近い牧野さん辺りの方が色んな意味で心配?
シリアルキラーの定義って、何かで読んだよな。
異常者と日頃からわかるようなタイプは稀だったっけ?
あれ?つまり犯人は社会生活を円滑に送っている場合もある?
だから、社内女子に警戒を?
中の人間もか。
岡田の顔を見上げて、私はフリーズした。
繰り返し注意しろと言うのは、戸田の周辺の人間にジョーカーがいるからだ。
可能性は、彼女の交遊範囲だけではない。
行動範囲だ。
それは私も含まれるのか?
「‥とっといた最中も食べるかな」
「あっ、また、考えるの放棄したっしょ」
顔が土偶になっていたようだ。