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アミューの旅  作者: アミュースケール
第2章 輪廻転生
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第2章1ー8

ファーストコンタクトが超新星爆発であり、実際に仮死したほどのサンダーボルトであった為に、思っていたよりも庶民派の雰囲気をも、併せ持つアミに、ワラコの王は、安心した。しかも腰が今まであった誰よりも低く、この低さのなかには、いったい何が詰まっているのか、快感の(ひだ)が全身に走るぐらい、しっかりと、何かが低い。低い!そのへりくだっている力の中心にある未知の動力源は、なんなんであろうか…、無条件降伏?う~ん、ここまでへりくだられると、(いや)(おう)でも、生命を宿している存在であるならば、自己の内奥やその外郭のひとつひとつにスポットライトが集まり、またあまりにも天然に、眠っていた天禀(てんぴん)のよろこびが輝き出してしまい、産声を上げ、さらに肯定する働きかけの最上級である鳴り止まない讚美が、力強いまでの讃美歌の合唱が、心や体の大反響する神殿で歌われているようでもある。無条件に、また贔屓(ひいき)などせず、あらゆる存在に、素直にへりくだれる人というのは、世界の根底に流れている(ことわり)を深く感じており、世界の根底と繋がり、根底から一体となられていて、生命の尊厳やかけがえのなさを悟り、意味が分からないほど、本当に様々なことを大事にされているし、また、それを惜しみもなく周囲の人々に、バトンタッチしていける人なのだろう、と、王の感覚機能は瞬時に、また、時間差で(しゃべ)った。


先程までのいたたまりのない大きな不安や緊張感、震えるほどの怖れは、いったい、どこに行ってしまったのであろうか…。このように人類が時々抱いてしまったりする、マイナスエネルギー、極端にいわば魔が差すという、殺意や(うら)みや嫉妬、暴挙、猜疑心、空虚感、退廃や破滅的思考の(たぐ)いでさえも、一時的あるいは一過性のものであって、そんな継続力のないものを(あるじ)とし、その奴隷となってしまい、人生を棒に振ってしまう人々は、悲しいかな、あまりにも多い。平家物語の冒頭ではないが、世には、諸行無常の響きがある。である為に、今抱いている悲しみや不安、胸中にある(わだかま)りというものでさえ、移ろいゆくものであるから、振り回され過ぎなくてもよいのに、ね、ねえ…。もちろん七転八倒し、振り回され過ぎながら、学んでいくものも雅趣(がしゅ)に富んだもので、良いものだけれども…、むむ…、もはや転んだ者、痛みや悲しみを知った者にならなければ、知恵というものや慈悲というものが、芽生えてこないのかも知れない。わたしたちの悲しみは無常であり、やがて、悲しみは慈悲へと変身(メタモルフォーゼ)していく。逆にいえば、悲しみや痛みが、慈悲や知恵に変わるまでは、転び続けてしまうもの…。つまるところ、わたしたちの愛や存在は常住坐臥(じょうじゅうざが)にあり、またそれは、不二であり、一乗であって、常である。


「ワラコの王様。こうやって、お会いする日を楽しみにしておりました。僭越(せんえつ)ながら、(あらかじ)め感じさせて頂いております…。すでに、この街も狙われているようですね」


王は、月並みの動きしか出来なかったが、心では大いに礼拝していた。


「そうです。そうなんてすよ…、はっはは。さて…さて、どうすればよいでしょうか…」


「先ずは、(ふみ)を贈るべきです。しかも、やや高圧的で大袈裟(おおげさ)なまでの文を…。また、このように書いて下さい。


あなた方は、ワラコの街に、一歩足りとも近付けなくなるだろう。何故ならば、天から雷があなた方に、落ちるからだ。わたし達は、大いなる神と共にある。もしもここで撤退しなければ、その時は、あなた方の命の保証は出来ない、と。」


近頃の王は、(わら)をもすがる想いで、鼻を垂らしながら、なんとか存在してきたが、このアミの話しやアミが撒き散らしている花粉に、不思議なほどの納得してしまう力があり、また咲いてしまうものがあった。アミの生命を慈しむ波動や雰囲気が、大気を電導しながら、伝わってきて、感化され、そのプラズマによって正気に戻り、心の海に沈んでいく真実の愛の(いかり)が降ろされていき、腹の海底に音を立てながらめり込み、定着し、安堵した。


(かしこ)まりました…。すぐに、そのように、致します。また、この件が終わったあとに、お話したいことがございますので、その時は、また宜しくお願い致します。わたしは、あなたの忠実な(しもべ)です」


アミは王に言った。


「わたしに(しもべ)などは、おりません。空、花、木々、鳥、土、太陽、月、人、皆が友であり、兄弟姉妹です。こちらこそ宜しくお願い致します」


それから王とほぼドレフ全軍は、宮殿に帰っていった。王は、アメオに来る前やアメオに来た時とは、まるで別人になってしまったかのようだった。なにやら王の生命体に一本の光と七色の柱が凛と立ったようで、七宝を授かり、姿勢も良くなり、足取りや立ち振舞いが軽やかになっていた。馬に乗るときも、仕えの者達の肩や手、情けに頼らず、自らの意志と力、また、それらの陰の存在となり、陰から支えて下さっている神の意志と力だけで、乗った。


これらのやりとりの一部始終を見ていた街の人々は、アミは、一体何者なのかと、騒ぎになっていた。


※続く

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