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第2章 1ー 45
男と女は、見つめ合う。今までの人生の心情や体験や生き様にあるものさえ全てを忘れて、産まれたまんまの裸の顔になって見つめ合う。街の真ん中にある二人の息は、おとぎの森に隠された。世界のあらゆる万象はメリーゴーランドとなって、お辞儀をしながら旋回し、眠っていた葉のさざ波も、二人の愛の飛沫によって、黄金の息を吹き返して目を覚まし、いまだかつてない祝福のハーモニーを奏でた。それらが一体となった聲とメロディーが、二人の頭上にある根源の門で、花環の冠となり、とこしえまで守護した。その時に天上から神の涙が一粒落ちて、この地上にある錆びついたスプーンや夢幻も潤い、悦楽の嵐が巻き起こり、その嵐に触れた諸々は、とこしえの稔実を想起して、いっそうに生を、その命の精彩を豊かにしていった。
男は女を、一歩また一歩と見つめたまま、遂に、あの沈黙を破り、抱きしめる愛を声にした。
「カサ…!私、ルタンとカサは、これからもっと出逢えることでしょう」
「ハイ…、心の暮らしのもっと深いところで、もっともっとわたしとあなたと出逢いたいです」
男と女は肌と肌の命の陽だまりを感じ合い、恋と愛の至福の温もりを、あの歌の高鳴りを、燦光の翼のダンスを。
※続く




