第2章1ー33
フェルマエ城は、白を基調とし、ところどころに金や銀なども散りばめられた玲瓏たる造りとなっていた。その華々しさは、見る者を、あの美しい桃源郷へと、いざなってくれるようであった。ルタンはフェルマエの国王に赤いマントを宙に遊ばせて、どこか巍然としながらも、膝をついて、恭しく言った。
「我が偉大なる国王様、大国フェルマエの雄偉なる国王様。是非とも、お話したいことがございます。わたしはこの度、ワラコへの遠征をして参りましたが、思わぬことが御座いまして、このフェルマエに帰ってくることにしました。また、これ以上ワラコに近づけば、犠牲者を多く出し兼ねないと、判断したからです」
国王は、ガイアのふところのような深みのある声を、玉座や王の間全体に響かせて言った。
「我が愛すべきルタンよ。おぬしのことじゃ、よっぽどのことがあったのじゃろう。それで、思わぬこととはなんじゃ」
「はい。ワラコの近くで陣を待機させていた時に、わたし宛てに、一文届きました。その内容は、このようなものでした。
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あなた方は、ワラコの街に、一歩足りとも近付けなくなるだろう。何故ならば、天から雷があなた方に、落ちるからだ。わたし達は、大いなる神と共にある。もしもここで撤退しなければ、その時は、あなた方の命の保証は出来ない、と。
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わたしもはじめのうちは半信半疑でしたが、この一文から伝わってくる得体の知れない大きなパワーを感じさせて頂きました。そこで、先ずは、偵察を四人送り様子を伺うことにしたのですが、案の定帰ってきた者は、一人だけでした。そして、その者に話を聞きましたところ、何やら空から荘厳な声が聞こえてきまして、そこで、このように言われたようです。
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聞く耳を持つ者は、聞きなさい。聞く耳を持つ者は、聞きなさい。これより先に行けば、先ずは、あなた方のうちの一人が、突然、眠りに就く。それでも先に行けば、一人が獅子に襲われ、さらに行けば、一人が、犬のようにこの平原を駆け回ることになるだろう。それでも、先に行くのであるならば、その最後の一人には、雷が落ちる。
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それから生還者が何やら光をまとっているように見えて、言動にも力があり、いつもよりも明らかに、異なるものを感じたのです。わたしは、メッセージ性を強く感じましたので、私自身みずから行かなければ、神に誠意は伝わらないと感じたため、陣にはその場で待機させて、私一人で、ワラコの街に向かいました」
やはり大国フェルマエを統治する王だけあって、勘が鋭く、機微を読み取る力も長けているため、いつもと様子が異なるルタンを目の当たりにし、驚いて、玉座から身を乗り出し言った。
「そのようじゃなルタンよ。わしにも儼として、伝わってくるぞ。それからどうなったんじゃ」
「それから、わたしはアミという男に出逢いました。その男を一目見た時に、この男の頭上には、光彩の花が咲いているように、見えました。それから全身には、光の羽衣のようなものを羽織られており、ここかしこや世界をまるで包み込んでいるような力を感じました。わたしは、感動し、わたしのような愚昧な者でも確かに神の御臨在を感じられました。それから、その日は、その男と長らく語り合い、ワラコに一泊することにしました。日が明けてからは、この男の不可思議な力を持っていることの確信に到り、このフェルマエに連れていくことを決意しました。是非、このアミという男に会って頂けませんか、国王様」
国王は、ルタンの普段とは逸する意気軒昂たる雰囲気に、重い腰を上げた。言わずもがな。
※続く




